二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【一時間SS】涼と夢子の「伊豆の踊子」

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 
【一時間SS】涼と夢子の「伊豆の踊子」

 ピンポーン。
 ドアベルが鳴るやいなや、僕は胸の鼓動を抑えながら玄関を開いた。
「やぁ、いらっしゃい、夢子ちゃん。」
「お邪魔するわね、涼。」
 夢子ちゃんは、なんでもないことのように僕の家に上がり、リビングに足を踏み入れた。

「涼、おうちの人はいないの?」
「うん。今日は僕だけ。お茶入れてくるからちょっと待っててね。」
「紅茶ね。レモンも添えて。」
 はいはいっ、と。僕は台所でお湯を沸かし、昨日焼いておいたクッキーをお皿に並べた。

 僕が男であることを「オールド・ホイッスル」で公表してからも、意外なことに、僕の仕事は特に減りはしなかった。
 いや、逆に仕事の幅も広がり、とんでもなく僕の回りが動きだすようになってきた。
 特に今回はとんでもなく大きな仕事がやってきた。僕と夢子ちゃんがメインの役を演じる「伊豆の踊子」の映画を作るという話だ。
 今や伝説となったアイドルが最後に演じてから、もう随分と映画化されていない作品らしい。
 そんなわけで、最後に映画化された作品もなかなか手に入らなくなっている。
 今日は、たまたま僕が借りることができたその最後に映画化されたDVDを、僕の家で夢子ちゃんも一緒に見る約束をしたんだ。

 いくら普段から律子ねえちゃんが出入りしているとはいえ、親戚でもない人気現役アイドルが家に来るとなると話は別。
 騒ぎにならないようにと両親にも話をしておいたところ、「じゃ、じゃあ私達も映画にでも行きましょうね、ほらお父さん、邪魔しちゃなんですし。」と言って、お母さんはお父さんを連れて行ってしまった。
 ちゃんとカミングアウトしたというのに、まだ息子のセクシャリティーに危機感を覚えているらしい。そんなにショックだったのかなぁ、僕が女装してアイドルしてたこと…。やっぱりショックか。親不孝でごめんよ…。
 そんなことを考えながら、紅茶のポットにお湯を注いで、お茶の準備は出来上がった。

「はい、お待たせ。」
「待ちくたびれたわ。早く再生してよ。」
「はいはい。」
 DVDの再生ボタンを押し、演歌調の音楽とともに映像が流れ始める。
「随分と古くさい映画ね。」
「もう30年以上前のものだからねぇ。」
 僕はお茶を注ぎながら答える。
「でも不思議ね。曲調は古いけど歌声はフレッシュな感じで。」