【一時間SS】涼と夢子の「伊豆の踊子」
【一時間SS】涼と夢子の「伊豆の踊子」
ピンポーン。
ドアベルが鳴るやいなや、僕は胸の鼓動を抑えながら玄関を開いた。
「やぁ、いらっしゃい、夢子ちゃん。」
「お邪魔するわね、涼。」
夢子ちゃんは、なんでもないことのように僕の家に上がり、リビングに足を踏み入れた。
「涼、おうちの人はいないの?」
「うん。今日は僕だけ。お茶入れてくるからちょっと待っててね。」
「紅茶ね。レモンも添えて。」
はいはいっ、と。僕は台所でお湯を沸かし、昨日焼いておいたクッキーをお皿に並べた。
僕が男であることを「オールド・ホイッスル」で公表してからも、意外なことに、僕の仕事は特に減りはしなかった。
いや、逆に仕事の幅も広がり、とんでもなく僕の回りが動きだすようになってきた。
特に今回はとんでもなく大きな仕事がやってきた。僕と夢子ちゃんがメインの役を演じる「伊豆の踊子」の映画を作るという話だ。
今や伝説となったアイドルが最後に演じてから、もう随分と映画化されていない作品らしい。
そんなわけで、最後に映画化された作品もなかなか手に入らなくなっている。
今日は、たまたま僕が借りることができたその最後に映画化されたDVDを、僕の家で夢子ちゃんも一緒に見る約束をしたんだ。
いくら普段から律子ねえちゃんが出入りしているとはいえ、親戚でもない人気現役アイドルが家に来るとなると話は別。
騒ぎにならないようにと両親にも話をしておいたところ、「じゃ、じゃあ私達も映画にでも行きましょうね、ほらお父さん、邪魔しちゃなんですし。」と言って、お母さんはお父さんを連れて行ってしまった。
ちゃんとカミングアウトしたというのに、まだ息子のセクシャリティーに危機感を覚えているらしい。そんなにショックだったのかなぁ、僕が女装してアイドルしてたこと…。やっぱりショックか。親不孝でごめんよ…。
そんなことを考えながら、紅茶のポットにお湯を注いで、お茶の準備は出来上がった。
「はい、お待たせ。」
「待ちくたびれたわ。早く再生してよ。」
「はいはい。」
DVDの再生ボタンを押し、演歌調の音楽とともに映像が流れ始める。
「随分と古くさい映画ね。」
「もう30年以上前のものだからねぇ。」
僕はお茶を注ぎながら答える。
「でも不思議ね。曲調は古いけど歌声はフレッシュな感じで。」
ピンポーン。
ドアベルが鳴るやいなや、僕は胸の鼓動を抑えながら玄関を開いた。
「やぁ、いらっしゃい、夢子ちゃん。」
「お邪魔するわね、涼。」
夢子ちゃんは、なんでもないことのように僕の家に上がり、リビングに足を踏み入れた。
「涼、おうちの人はいないの?」
「うん。今日は僕だけ。お茶入れてくるからちょっと待っててね。」
「紅茶ね。レモンも添えて。」
はいはいっ、と。僕は台所でお湯を沸かし、昨日焼いておいたクッキーをお皿に並べた。
僕が男であることを「オールド・ホイッスル」で公表してからも、意外なことに、僕の仕事は特に減りはしなかった。
いや、逆に仕事の幅も広がり、とんでもなく僕の回りが動きだすようになってきた。
特に今回はとんでもなく大きな仕事がやってきた。僕と夢子ちゃんがメインの役を演じる「伊豆の踊子」の映画を作るという話だ。
今や伝説となったアイドルが最後に演じてから、もう随分と映画化されていない作品らしい。
そんなわけで、最後に映画化された作品もなかなか手に入らなくなっている。
今日は、たまたま僕が借りることができたその最後に映画化されたDVDを、僕の家で夢子ちゃんも一緒に見る約束をしたんだ。
いくら普段から律子ねえちゃんが出入りしているとはいえ、親戚でもない人気現役アイドルが家に来るとなると話は別。
騒ぎにならないようにと両親にも話をしておいたところ、「じゃ、じゃあ私達も映画にでも行きましょうね、ほらお父さん、邪魔しちゃなんですし。」と言って、お母さんはお父さんを連れて行ってしまった。
ちゃんとカミングアウトしたというのに、まだ息子のセクシャリティーに危機感を覚えているらしい。そんなにショックだったのかなぁ、僕が女装してアイドルしてたこと…。やっぱりショックか。親不孝でごめんよ…。
そんなことを考えながら、紅茶のポットにお湯を注いで、お茶の準備は出来上がった。
「はい、お待たせ。」
「待ちくたびれたわ。早く再生してよ。」
「はいはい。」
DVDの再生ボタンを押し、演歌調の音楽とともに映像が流れ始める。
「随分と古くさい映画ね。」
「もう30年以上前のものだからねぇ。」
僕はお茶を注ぎながら答える。
「でも不思議ね。曲調は古いけど歌声はフレッシュな感じで。」
作品名:【一時間SS】涼と夢子の「伊豆の踊子」 作家名:みにもみ。