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【一時間SS】涼と夢子の「伊豆の踊子」

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「そうだね。こういう曲に親しんでない僕にも聞きやすく感じる。」
「映像でも、なんだか随分と初々しい感じの主役とヒロインね。」
「ヒロインは、伝説のアイドルさんのデビュー間もない頃らしいよ。今見ても、輝いてる感じだね。」
 もちろん作品的にはかなり古くて、セリフやストーリーに違和感を感じたけど、それをなんだかんだと言いながらも、僕たちはだんだんと引き込まれて行った。
「アイドル映画って、こういうものなのね…。」
 夢子ちゃんの言葉も、最初の批評的なものから感嘆に近いものに変わって行った。
「そうだね。主人公もヒロインも、まるで内側から輝いているような、そんな感じ。」
 僕も、素直に感じたままを言葉にした。
「私たちに、出来るかしらね。」
「うん…。やってみようよ。」

 僕たちは映画のセリフを練習してみることにした。
『書生さん、活動に連れて行って下さいましね。』
 夢子ちゃんが演じることになるヒロインの名セリフ、なんだけど…。
「夢子ちゃん、ちょっと、その感じはどうかな…。」
 夢子ちゃんの演じたセリフに少し怖さを感じた僕は、少し迷ったけれどこう言うことにした。
「なによ。どう感じるって言うの?」
「なんとなく、キョウハクされてるみたいな…。」
「なんですって?」
 夢子ちゃんは拳を握って僕を睨み付ける。
「だだ、だから、そんな相手をねじ伏せるような感じじゃなくて、もっとこう、可愛くお願いするような…。」
「可愛くお願いしてるじゃないの。」
「そこを、もうちょっと…。」
「もうちょっとじゃわかんないっての。そんなに言うなら、涼、あなたがやってみなさいよ。」
「え、ええ? 僕がヒロインのセリフを?」
「なによ、自分で出来ないのに私にケチつけてたの?」
「わ、わかったよ。やってみる。」
 僕は、スー、ハー、と一息深く息をして、そしてセリフを演じてみた。
「書生さん、活動に連れて行って下さいましね。」
 夢子ちゃんの目を、すがるように見つめ、できるだけキモチをこめながら。
「……。」
「? どうしたの、夢子ちゃん?」
「……反則よ。」
 夢子ちゃんは顔を背け、真っ赤になっている。えええ? 僕、なにか間違ったのかな?
「ど、どこか変だった?」
「変よ、涼は。どうして男のくせにそんなにいじらしいの? え? なんなの? チンチン付いてるの?」