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天空天河 二

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 仮にも皇太子の地位を狙い、行く行くは皇帝に成らんとする者が、この事件を引き起こしたとは、信じられない。
 大爆発を起こした、闇炮坊の場所には行きましたか?。現場をご覧に?。
 私は、医師と配下を連れ、大爆発をした闇炮坊を見舞いました。
 あの場はまるで、、まるで戦場の様だった。
 罪の無い人々が、体を裂き、血を流し、焼け爛れた体で叫ぶのですよ。
 痛みと苦しみ、子や家族を失った嘆き。
 一体、何人が犠牲になったと?。
 あの地に渦巻いた民衆の絶叫は、誉王府には届きませんでしたか?。」
 きつい、梅長蘇の物言いだった。
 誉王は、梅長蘇の厳しい視線に、たじろいだ。
「、、、勿論!、勿論だとも!、、。
 現場は騒然としている。新たに多くの物資を届けても、混乱するばかりだ。
 、、、、現場が落ち着いたら、物資を贈ろうかと、今、誉王府の私財を、見繕っていたのだ。、、支援の物資は、今日中に届くだろう。」
「、、ふっ、、。
 ものは言い様だ。
 私は大爆発の音を聞き、すぐさま現場に向かったのです。
 私が最も早いと、思っていましたが。
 私より早く駆けつけた人物が、、。
 殿下、誰かお分かりに?。」
「刑部の者だろう?。」
 誉王の答えに、呆れた様に、梅長蘇が笑った。
「ふふふ、、、靖王殿下でしたよ。
 靖王殿下と幾らか話をしましたが、、、。
 これ程惨い現場は、戦場に匹敵する、と。
 戦場に慣れている靖王殿下ですら、この惨状は目を覆いたくなると、、。」
「、、梅長蘇!。やはりそうか!、、、。
 お前は景琰と、、。
 以前からおかしいと思っていたのだ。」
 誉王のその一言に、梅長蘇の眉は吊り上がった。
「誉王!!、たった三度、話しただけの靖王と私が、一体、何だと!!。
 呆れ果てて、掛ける言葉も見つかりません。
 どうぞ、誉王殿下、私との縁はこれきりに。
 殿下は賢い。私がお支えするまでも、無い様ですので。
 短いご縁でしたが。
 もう、お引き取り下さい。」
 そう言って拱手し、梅長蘇は誉王に背中を向けた。
 激しい拒絶。
 梅長蘇はそれきり一言も話さず、丸めた書を持ったまま、背中を向けて立った。梅長蘇は身動き一つしなかったが、誉王は、今まで見た事も無い程の、堅い、梅長蘇の拒絶の意志を、感じていた。
「梅長蘇!。
 私が何故、これ程責められる?!。
 大事を成すには、多少の犠牲は、付き物では無いか!、、、それを、、。
 機会を利用しようとしただけなのだ。何故、私ばかりを責めるのだ!。そもそも、闇炮坊を、あんな場所に開いたのは景宣だ。
 私が皇太子になったならば、犠牲になった者達には、必ず償いをしよう。それで良いではないか。それの何がいけない?。遺族は銭を手に出来て、良いばかりだ。
 たかが下々の民ではないか、景宣ならば、そこまではしない。
 私はこれ程、犠牲になった民を、気に掛けているというのに、、、。」

 ばん!!!

 梅長蘇が手に持っていた書を、床に叩きつけた。
 誉王はその音に驚き、びくりとした。

「誉王殿下、民衆を侮ってはいけない。
 民衆は見ているし、知っているのです。」

 背中を向けたまま、低い声で唸るように梅長蘇が言った。
 これ程の梅長蘇の怒りに驚き、慄き、誉王はこの場に居られなくなった。
「梅長蘇!!、私にこんな態度をとって、この先後悔するなよ!。」
 足音も荒く、誉王は書房を去っていった。

 誉王が去ると、直ぐに飛流が庭から入ってきた。
 真っ直ぐに立っていた長蘇だったか、崩れて倒れかけたのを、飛流が支えた。

 長蘇は大きく溜息をついた。
「、、、愚、、か者、が、、。」
 長蘇が酷く嘆いている。体は冷えていた。
「ごほ、、、、ゴホゴホッ、、、ぐぅッッ。」
 飛流に支えられたが、咳き込んで立って居られなくなり、その場に蹲った。口元を覆った手からは、鮮血が滴り落ちた。

「ぐッ、、、ケフッ、、。」
 更に吐血した。
「蘇哥哥!!。蘇哥哥ー!!!。」

 長蘇は、、、そのまま床に倒れ、、、。
「うわぁぁぁ、、、蘇哥哥ー!!。」

──、、飛流、、騒ぐな、、、
、、、少し、、休めば、、、、きっと、、──

 長蘇の意識は遠ざかるが、

 飛流が大騒ぎしているのが分かった。

 、、そして、飛流は、どこかへ消えていった。






  ( 天空天河 三  八章に続く。)



作品名:天空天河 二 作家名:古槍ノ標