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天空天河 二

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七 誉王



 梅長蘇の謀は、順調に進んでいた。

 金陵の勢力が、大いに変わった。

 梅長蘇の指示の元、江左盟が暗躍して、様々な朝廷の汚れを暴き出していった。

 例えば、誉王派軍部の要であった慶国公の失脚や、一見、中立に見えた寧国公 謝玉が、皇太子 簫景宣の派閥であった事の露見は、朝臣達も金陵の人々も、思いもかけない事柄であり、朝廷を震えさせた。
 これらは皆、梅長蘇が、江佐盟の配下の一部に指示をして、騒ぎを起こさせ、公に晒させた事だった。


 誉王は、『麒麟之才子』梅長蘇を、廊州から金陵に招いたのだ、、。

 誉王は、慶国公の事案の際、何とか握り潰して事なきを得ようと、梅長蘇に相談をしたのだが。
 梅長蘇は、「事、ここに至っては、火の粉を被る前に、慶国公を切り捨てるように」と進言をしたのだ。「そうすれば、陛下の信頼を得られ、慶国公を守るよりも収穫は大きい」と。

 誉王は、梅長蘇の進言に従って動き、皇帝の信頼を得た。

 その他の事案に対しても、梅長蘇の進言は的確で、誉王は、更に皇帝の信望を得たのだ、、。

 どの件も、皇帝に喜んでは貰えたが、結果的には、十年という歳月をかけて、取り込んできた朝臣が、力を失う事となり、誉王にとっては、大きな痛手となった。
 だが、梅長蘇の進言は的を得ていて、全て梅長蘇が言った通りになる。

 梅長蘇は正しい。

 だが近頃、誉王は、梅長蘇に対して、釈然と出来ない痼(しこり)を、覚える様になった。



 とある日、誉王は絶好の機会を掴んだ。
 皇太子が闇炮坊を営んでいて、資金を稼いでいるらしいのだ。

 誉王は息巻いて、直ぐに蘇宅を訪れた。
 「今すぐに、刑部に乗り込ませて、朝臣達に上奏させ、大々的に暴き、この機に皇太子を抹殺してしまおう。」
 という、誉王の意見に、梅長蘇は乗り気では無く、逆に、『急ぎ過ぎてはいけない』と、梅長蘇に窘められる。
「まだ、証拠も固まらぬ内に、派手に糾弾したら、向こうは、こちらの動きを察して、撤収しかねません。そうなったら、誉王殿下が、皇太子を陥れた事になりますよ。
 皇太子が逃れられぬ様、証拠を固めてから、上奏すべきです。」
 梅長蘇に窘められても、誉王は納得がいかなかった。
「どれ程、こんな大きな機会を待っていた事か。奪うならば、一気に奪い、再起出来ぬ様に潰してしまいたい」と誉王。
 だが、、
「私が証拠を固めて、上奏の用意をします。誉王派の朝臣に言わせては、万が一の際、殿下の関与を疑われます。
 良いですか、誉王殿下は動かぬ様に。」
と、梅長蘇に、そう、念を押された。
「放っておいても、あの皇太子の性格では、早晩、自滅する。今、誉王殿下が動いてはなりません。」
と、梅長蘇は言い放った。


 蘇宅を去り、誉王府への帰途。
 痼が確かなものに変わった、と誉王は思った。

 皇太子の権勢を削ぎ、誉王が、皇太子に取って代わろうと、長年画策をしていたのだ。
 これ以上は無い、絶好の機会なのだ。
 なのに梅長蘇はその時では無いと。どう考えても、好機は今しか無いのに。
 これを逃したら、皇太子の座など、生涯巡っては来ない、そう思って、誉王は歯軋りをした。

==『麒麟之才子』は本当に、自分を助ける気が有るのだろうか、、、==
 と。
 策士として迎え入れた以上、誉王が別の行動を起こし、梅長蘇の顔を潰しはいけない。

 だが、沸々と誉王の心に、梅長蘇に対する猜疑心が起こり、皇太子の地位への欲が湧いた。

 誉王は配下に、皇太子が隠れて商う闇炮坊を、暴発させるようにと、密かに命を下した。



 誉王の計画は成功し、闇炮坊は大爆発を起こし、闇炮坊の周辺に住まう、多くの民を犠牲にした。

==私の思った通りではないか。皇太子にこれ程早く、大きな打撃を与えられた。
 この件で、梅長蘇は私に、一目(いちもく)を置くに違いない。==
 皇太子の資金源を断ち、そして皇帝に皇太子の悪度さを、詳(つまび)らかに出来るのだ。
 誉王は直ぐに、皇太子の闇炮坊への関与を、刑部に暴露させた。

 事は上手く運び、誉王はほくそ笑み、梅長蘇の住まう蘇宅へと向かった。
==これ程の成果を上げられたのだ。
 策略に於いて、私は梅長蘇と対等になれる。==
そう思った。


 蘇宅の門の前に着き、案内を請うが、、、。
 蘇宅の者は、『主は病が重い為、誰にも合わない』と、そう、断られた。
 梅長蘇の従者に、無下に断られ、誉王は怒った。
「何っ!、私を誰だと!!。数日前までは、あんなに元気な様子だったではないか。
 、、、私を門前払いにすると?!!。」
==私の策が上手くいき、梅長蘇は跋(ばつ)が悪いのだ。策士として私の元に来たが、役目を果たせなかった。
 だから私に会いたくないのだ。==
 誉王はそう思った。
「どけ、梅長蘇の顔を見ねば、気が収まらん。」
 誉王は蘇宅の門番を押し退けて、中に入ろうとした。
「殿下、お戻り下さい。宗主は誰にも会いません。」
 蘇宅の者が、数人がかりで引き止めるが、誉王は止まろうとせず。
 誉王の配下が、わらわらと馬車の側から、蘇宅の門の中に押し入り、蘇宅の者を押さえ付けた。
 蘇宅の従者を地に這わせ、屋敷の奥へ、誉王は悠々と入る。
「誉王殿下、いけません──。」
 蘇宅の配下が、倒されたまま、誉王に向かって叫ぶ。


 誉王は無言で、ただ一人、どんどん奥へと押し進んだ。
 蘇宅には幾度も訪れ、大体の構造は頭に入っている。
 蘇宅の最も奥に、書房が有り、梅長蘇が常にそこ居る事は知っている。

 誉王が書房の扉を勢いよく開け、中へ踏み込むと、病どころか、元気そうに書を手にし、茶を飲む梅長蘇の姿があった。
「蘇先生!!、病だなとど、、。
 何故、私に会うのを拒むのだ!。」
 梅長蘇は書を片手に、ゆっくりと立ち上がり、誉王に拱手をした。
「これはこれは、誉王殿下。
 大変な剣幕で、、、いかがされました?。」
 何事も無かった様に、しかも片手間といった具合で、書をその手から離さないで、しれっと拱手する梅長蘇を、誉王は憎らしく思った。
「皇太子は失脚するぞ。
 私が、、、私が、勝ったのだ。」
「、、、、知っていますよ
 殿下がなさった事も、全て知っていますよ。」
 そう言うと、梅長蘇は庭に視線をやった。

「ふふふ、、知っているならば、話が早い。私に何か言うことは無いのか。」
「、、、、何も。」
「はははは、、、。何も無いと?!。
 私は、一人で見事に、景宣を蹴落としてやったのだぞ。
 何が『麒麟之才子』だ。ただの腰抜けでは無いか。」

 それを聞いて、梅長蘇の表情が変わる。
「左様、殿下は良くお分かりだ。私はただの腰抜けですよ。殿下に策を授けるなぞ烏滸(おこ)がましい。殿下は何でもお分かりで、出来ぬ事など何も無いのです。
 私の仕事なぞ、殿下の元にはございますまい。
 どうぞ、お引き取りを。」
 誉王に向かって、梅長蘇は冷たく、そう言い放った。
「開き直ったか!、梅長蘇!!。
 私がやり通した事が、面白くないのだろう。」
 誉王は、梅長蘇に指刺しして罵った。
「ええ、、全く笑えない。
作品名:天空天河 二 作家名:古槍ノ標