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手袋を買いに行ったら大好きな人ができました1

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「洋服屋さん、今日もお仕事を見ていていいですか?」
 霞を丸めた鞠を手にお仕事机に向かった洋服屋さんに、今日も炭治郎はたずねました。洋服屋さんはやっぱり今日も小さくうなずいて、鞠になった霞をほどくと、織機を取り出しそこに仕掛けました。
 シャッシャッと洋服屋さんが織機を動かすたびに、霞は布地へと織り上がっていきます。やがて織り上がった布は、淡い桃色をしていました。その布をスイスイと切ったり縫ったりして、仕上げにフッと息を吹きかけると、洋服屋さんはかわいいマントを作り上げました。
「禰豆子に着せてやれ」
「え? 私?」
 炭治郎と洋服屋さんの様子を気にしていたのでしょう。名前を呼ばれた禰豆子が、すぐに振り向きました。
「よかったなぁ、禰豆子!」
「いいの? 洋服屋さん」
 ととっと近づいてきた禰豆子に、洋服屋さんはうなずいて、ちょっとだけ困って見える顔をしました。
「……もっと、かわいい柄のほうがよかったか? 花とか……」
 女の子が好きなものはわからないと洋服屋さんが言うのに、禰豆子はちょっぴりおかしそうにウフフと笑います。マントを羽織って、禰豆子はくるりと回ってみせました。マントの裾が広がると、まるで桃色のお花のようです。
「これがいい! とってもかわいい桃色のマントをありがとう、洋服屋さん!」
「禰豆子ちゃん、すっごく似合うよ! お花みたいだねぇ。かわいい禰豆子ちゃんにぴったり!」
「あったかそうだな。よかったじゃねぇか、これで雪が降っても寒くねぇ」
 善逸や伊之助も喜んでくれて、炭治郎もとってもうれしくなりました。
「マントのお礼にお手伝いをします。洋服屋さん、次はなにをもらってくればいいですか?」
「……風柱の住まいにいる鳥の羽根を一本、もらってきてくれ」
「わかりました! でも洋服屋さん? なんでそんなに困ったような顔をしてるんですか?」
 いつもと違ってちょっと言いにくそうな洋服屋さんに、炭治郎は思わず首をかしげました。
「……俺は、よく風柱を怒らせる」
「なんだ、嫌われてんのか」
「俺は嫌われてない」
 伊之助の声に即答した洋服屋さんに、みんなは思わず笑ってしまいました。

 『災い』の首魁は怖いけれど、今の炭治郎にできることは、洋服屋さんのお手伝いだけです。みんなでこんなふうに笑っていられるように、明日も頑張ろうと炭治郎は思ったのでした。