今モ誰カガ教エテル
「こんな夜景が、明日には朝に変わって、また一日が始まる。一日って、何だか儚いな」
「私達みたいに、いきなりそれを聞いてさあ、戸惑ってる人もいるんだろうね。あはは、なんか面白い」
「蓮加」
急に名前を呼ぶから、気付いてから、逆に返事をできなくなった。
岩本って呼んでた癖に……。
「教えたのが俺で……、後悔、してるか?」
「ううん。全然、してない。むしろ後悔なんてしてない。って言うか、するわけないよ」
何かいっぱい言っちゃって、何か変になった。
「そうか」
「うん……」
また、義巳は、夜景の方を見た。
私も夜景を見る……。――凄く、綺麗だった。
「何も知らない、純粋な奴らが、この夜景の中に居るんだ」
囁くように、実感しているように、義巳が言った。
私は、声に出して、頷いた。
「今も誰かが教えてる……」
義巳はそう言って、私の事を見た。
私はもうすでに、義巳の事を見ていた。
「俺達しか知らない、この反則を、まだ純粋な奴らが、怖がって聞いてるんだな」
義巳は面白がって、小さく笑っていた。
私はずっと義巳の笑顔を独り占めしていたい。
できれば、ずっと。
これからも、ずっと。
「蓮加、反則をしよう」
義巳は急にそう言って、私の耳元で、それを、囁いた……――。
「んふ。わかった」
「やるぞ」
「うん!」
私は、義巳と一緒に、これからも変わらない世界で生きていく。
きっと、一緒に生きていく。
何も変わらない、ちょっとだけ、反則ができる、そんな世界線の中で……。
「はっはっは」
「うわあぁ~!」
夜の夜景は、とけあった私達の思いで、美しい反則をした。
「蓮加に説明する時、心臓が止まるかと思ったんだよ」
「えぇ?」
「だって、岩本蓮加だろう……、へたしたら、学校中を、敵に回しかねないからな」
「ん?」
「それに……、やっぱ、俺もぉ……」
「わあ、すっごいきれ~……。見てぇ」
「いや……ふん。ま、いっか」
「すご~い……」
だんだんに、ポツポツと、夜景のイルミネーションが増えていく。
ポツポツと、夜に光ったイルミネーションが、街の中に灯っていく……。
道路も、車も、みんな光っていく……。
世界中の夜が、最高のイルミネーションで満たされていく――。
私達は手を繋ぎ合った。何も変わらない、この広い世界の中で。
手を繋ぎ合って、ずっと義巳と一緒にいるの。この広い、美しい、反則の、イルミネーションの世界の中で、私達は、私達だけの夜景を眺める。
これから、こんな世界の中で、私達の恋愛が、きっと――始まる。
二千二十二年四月十七日~完~
あとがき
作タンポポ
岩本蓮加さんを主人公に迎えた物語でした。タンポポ的にとても気に入った作品になりました。この物語を閃いた瞬間があります。それはフッサールの現象学を学んだ時でした。世界というものは、全て細かな情報の一つ一つで成り立っているのだと学び、フッサールの『超越論的主観性』には大変に深い感銘と影響を受けました。物語にもフッサールの名前が登場していますね。
物語とは、どうやって生まれてくるのでしょう。私の場合は、学問的な要素が多い気がします。後は、やはり乃木坂46の影響力、魅力でしょうね。
皆さんは二十歳を迎えましたか? もしくは、迎えたいと思いますか? これまでの世界観を変えてしまう事実の存在。それは恐怖でもあり、辿り着いた真実でもあります。あなたならばどう考えますか。もし選択肢があるならば、二十歳を選ぶか、未成年を選ぶか。
そんな興味心から、今回この物語を完成させました。岩本蓮加ちゃんの幼少から大人へと順調に成長し続けている魅力に惚れ込んで、今回の主人公となって頂きました。
皆さんはタンポポのどんな物語がお望みですか? 笑えるの? 泣けるの? 怖いの?
今後も色々と試行錯誤して、乃木坂46の物語をクリエイトしていきたいと思っております。また次回作でお会い致しましょう、タンポポでした。
二千二十二年四月十七日~完~