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謀り

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半年に一度の柱合会議が催される日、柱たちは鬼殺隊本部である産屋敷邸に部屋を借りて一晩の宿とする。
食事も大広間で顔を合わせて食べようというのは、産屋敷耀哉たっての希望でもあった。

二列に並べられた御膳に席順などはないが、自然と煉獄の左右は宇髄と伊黒となる。

やれどこの峠の茶屋が美味いだの、あそこの名物は絶品だの、伊黒の隣に座った甘露寺もあわせた四人で交わす食事中の話題は尽きなかったが、そのうちに柱合会議の前に鬼を連れているという件で連行されてきた、入隊間もない少年の話になった。


「そういやあのガキ、随分威勢が良かったよなぁ。不死川に食ってかかるような肝の据わった奴、久々に見たぜ」


宇髄が斜向かいーーちょうど俺の正面に座っている不死川を見遣り口角を上げて言うと、傷だらけの顔を不愉快そうに歪めて不死川は舌打ちを返す。


「肝が据わってるんじゃねェ。あれはただの向こう見ずな石頭だろ」

「しかし度胸があることには違いあるまい!あの様子だと、柱についてほとんど知識もなさそうだったな」


序列を軽んじているというより、鬼殺隊における上下関係の制度そのものを知らないのかもしれない。

顎をさすって煉獄が言うと、伊黒が小さくかぶりを振った。


「無知な輩ほど面倒なものはない。あんな小僧、俺は信用しない」

「だけどあんなに必死に妹を守ろうとするなんて、素敵な子だと思うわ」


頬を赤らめて遠い目をする甘露寺の発言を受けるや否や、「そういう部分もあると甘露寺が言うなら認めてやらんでもない」などと手のひらを返して素早く頷く伊黒。

隣のやりとりを微笑ましく思いながら、件の少年を思い出す。


下弦の伍と対峙し、逃げ出すことなく戦い抜いたと聞いている。
実力はまだまだ未熟で頸を落とすには至らなかったようだが、その気概は立派なものだ。
そういった覚悟のようなものは、経験を積んだところでものにできるとも限らない。

かの少年の本質を好ましく思っていると、胡座をかいた膝に肘をのせて頬杖をつく宇髄と目があった。


「…お前いま、継子にほしいって考えてただろ」

「何故わかる、宇髄!読心術の類か!」

「いや、顔に書いてあった」

「なんと顔に!」


それは不甲斐ない、と表情を引き締めると、おかしそうに宇髄に笑われた。

なんとなくその屈託のない笑顔を直視していられなくて。
手元の御膳に視線を落とすが、既に完食済みで手持ち無沙汰になってしまう。

どういうわけか隣からはにこにこと宇髄が微笑みをこちらに向け続けており、少々の気まずさから周囲を見渡すとちょうど箸を持ったまま船を漕ぐ時透が目に入った。
これぞ好機とばかりに煉獄は声をかける。


「時透!眠たそうだな、良ければ俺が部屋まで送っていこう」


そう言いながら腰を上げると、続け様に伊黒が腰を上げた。


「ひとりでは重いだろう、煉獄。二人で運んだほうがいい」

「大丈夫だ伊黒ォ。お前まだ食い終わってねーだろ。俺が行く」


伊黒を片手を挙げて制したのは不死川だった。
確かに彼の御膳はきれいになっており、食事中の伊黒に手伝ってもらうのは気が引けるというものだ。


「悪いな不死川。では一緒に…、」


来てくれるか、そう続けようとしたが、先程まで時透が座っていた席は無人となっている。

不死川と無言でその空間を見つめていると、広間を出た廊下からいつの間にそちらに抜けたのか宇髄が顔を出した。


「ほれ、行くぞ。煉獄」


見れば彼の肩には、完全に寝落ちした時透が担がれている。


「早ェ…」


若干引き気味に呟き、不死川は「譲ってやるよ、宇髄」と言ってしっしっと手を払う仕草をして座り直した。

さすがの煉獄も中腰のまま固まってしまう。
いつの間に、という驚きと共に生まれたのは、俺は不要なのではという疑問。
軽々と担がれた時透は、大柄な宇髄との体格差が際立ってより一層小さく見えてしまう。

状況把握と判断力は自負するところがあるが、これは誰がどう見ても俺は必要ないはず…


が、宇髄は完全にこちらを待っている。


いつまでも待たせるわけにもいかず、結局宇髄のもとに足を向ける。
先程笑顔を向けられたときも感じた、浮き足だったようなそわそわした感覚が胸中に広がっていく。

宇髄の笑顔から逃げたくて席を立ったのに、何故こうなるのか。


作品名:謀り 作家名:緋鴉