二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

天空天河 四

INDEX|9ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 

 長蘇が二人の間に、割って入った。
「ウルルルル、、、、、。」
 飛流は興奮し、長蘇の説得が、通じない状態になっている。
 飛流は臨戦態勢の構えで、藺晨に指先を向けていて、飛流の首と手元からは、黒い靄が漂い始めていた。
「飛流!、止めなさい。藺晨を傷つけてはならぬ。」
「、、、、。」
 飛流はその一言で、興奮した顔から、一気に悲しげな表情に変わり、ぷいと長蘇に背を向けて、蘇宅の中庭から、飛んで言ってしまった。
「あっ、、飛流!!。待ちなさい。飛流──!。」
 長蘇は、飛流だけを叱りつけるつもりは、無かったのだが。
「あははは、、、、。」
 飛流の悲しげな顔が、長蘇の目に焼き付いて、離れない。人の気も知らずに笑う藺晨を、恨めしく思った。
「大人気無い!。お前が、百年以上生きている人間とは思えぬ。
 飛流を相手に、まるで子供だ。
 藺晨!、恥ずかしくは無いのか!。」
「私など、飛流に比べたら、まだまだ。
 よく考えてみろ、あいつは私より年上だ。」
「そういう事では無く!!。
 、、、、私が何故、飛流を止めねばならなかったか、、、分からぬと、、、藺晨、、?。」
「は?。」
 暫しの沈黙の後に、長蘇がぽつりと言った。
「、、、、藺晨、、本気を出した飛流に、お前が勝てると?。」
「ぁッ、、!。」
 漸く、長蘇の言葉の意味を、察した藺晨。

「飛流は『魔』を吸収し、己の力に変えた。
 今の飛流は、あの石柱で、藺晨と共に過ごした飛流では、もう無いのだ。
 龍に変身したり。今の蝶でも分かるだろう?。
 新しい技を次々に、、、。
 そして、飛流は今まで得た『魔』の威力を、扱い切れてはいない。
 飛流が怒りに任せて力を出して、藺晨が無事でいられると?。」
「、、、、(汗ダラダラダラ、、、)。」
「飛流がお前を傷付けて、苦しまぬ様に、お前が痛めつけられぬ様に、、、そう思って、私は止めたというのに。、、オマエトキタラ、、、
 飛流は何故か、酷く、勝敗に拘る。
 藺晨、石柱で、何を教えたのだ。」
「私が教えた訳では無いぞ。飛流の元々のものだろう?。
『魔』だってな、癖や性格があるのだろうよ。ヨクハシラヌガ」
 しれっと藺晨が答えた。
「とにかく、余り飛流に喧嘩を売るな。今日は止められたが、この先私でも、飛流を静止できぬ時が、あるやも知れぬ。」

「、、、ふふ、、、。
 ま、飛流に殺されるならば、それも良いか。」
「、、、、。」
 長蘇は言葉を失った。
 あの石柱で、出会った時にはもう既に、藺晨は不死の呪いが掛けられていた。藺晨は死を望んでいたのだ。
 百年の孤独と、不死、藺晨にはどれ程辛かった事か。
「もし飛流が、お前を傷つけたなら、飛流は苦しむ。
 飛流にそんな思いを、させたくは無いだろう。」
「、、、そうだな、、。
 私が死んだなら、飛流は泣いてくれるだろうか、、。
 、、、、ま、だが、殺るなら一息で、と、願いたいな。」
「まだ言うか!、いい加減にしろ!!。
 それに、常人ならば死に至る怪我でも、お前は死ねないのだから、痛いだけかも知れぬぞ。粉々になっても、苦しくて痛いだけで、死ねなかったらどうするのだ!。
 何せお前は死ねぬのだからな。藺晨が思ったように、都合よく物事が進むとは限らぬ。」
「うわッッッッッ!!!、なんて嫌な奴だ、お前ときたら!。肉片になっても、死ねぬだと!!。」
「藺晨、、もう諦めて、仙人になっては?。
 仙人としての要素は、全て揃っている。」
「、、、やだ。
 仙人なんかつまらん。」
 その時、ひらひらとまた紋白蝶が、長蘇の側に飛んで来た。
 そして紋白蝶は、長蘇の肩の上に止まった。
「あははは、、、。
 長蘇よ、今日は随分、蝶に好かれる日だな。」
 紋白蝶は、長蘇の肩の上で、羽を閉じたり開いたりしていた。
 藺晨が蝶に手を伸ばす。捕まえようとしたのだ。
「やめ、、。」
 蝶はひらひらと舞い上がり、藺晨には捕まらなかった。
 二度三度と、捕獲を試みたが、蝶はひらひらと羽を躱して、触れる事さえ出来ない。
「むー、、、。」
「蝶一匹に、どうかしてるぞ、藺晨。むきになるなよ。」
「絶対に捕まえてやる。」
「オイッ、、。」
 蝶は長蘇の胸元で、すっかり落ち着き、羽を閉じたり開いたりしていた。
 藺晨は蝶に向かって、聞いた事のない言葉を念じ始めた。
 藺晨が念じるのを止めると、蝶はぴたりと羽を閉じたまま、動かなくなった。
「フフフフ、、、思い知ったか!、動けまい!。
 私に逆らえばどうなるか、、思い知るがいい、、。」
 藺晨は蝶に言った。
 悪い顔をしていた。
 長蘇は眉を顰めて、藺晨と蝶の成り行きを見ていた。
 藺晨が、鼻歌混じりに、蝶の羽を摘もうと、指をのばす。
「ふふふふ、、、。」
 完全に藺晨は、蝶を捕まえた様に、見えたのだが。
 ふぃっ、、と、蝶は藺晨の指をすり抜け、ひらひらと飛んだ。
「は?、、、。」
 間違い無く、羽を捉えたと思ったのに、藺晨の指には何も無い。呆気にとられた藺晨だが、、、。
 藺晨は、その後直ぐに、長蘇の側を飛び回る蝶を、必死に追った。
 蝶は、捕まりそうになると、恐ろしく素早く動き、絶対に藺晨には捕まらない。
「術まで掛けて、動きを止めたのに、何で捕まらない?。」
 くすくすと笑う長蘇。
「?!!何が可笑しい??!、、ん??、、、。
 、、、お前ッッッ!、飛流か???!!!。」
 蝶は嘲笑うように、長蘇の髷に止まり、藺晨を見下ろしていた。
「かぁぁぁ───────!。飛流め!!。」
 藺晨は罵りたいが、言葉が見つからなかった。
「参ったな。飛流の気配が分からぬとは。」
 藺晨は、ぽつりと、吐き出すように言った。
 苦々しげに、藺晨は長蘇の髷の蝶を睨むが、ふと表情が穏やかになった。
「飛流は成長している、と言うことか。」
 そして、寂しげな表情に変わる。

「考えていても仕方がないな。主を得れば、飛流は成長するのだ。
 長蘇!、気晴らしをしよう!。
 天気も良い、外へ出かけよう。」

 突然の藺晨の提案に驚いていると、藺晨は長蘇の手を引いて、縁側に出る。
「ほら、気持ちの良い陽気だ。
 何も考えずに、外で体を動かせば、疲れて眠れるかも知れぬ。」
 蝶も肩に居場所を変えて、パタパタと嬉しそうに羽を動かしている。
 暖かで眩しい光に、目を細めた。
 顔に射した光は、長蘇の心を温める。
「、、、ん。」
「よしっ!、気が変わらぬ内に、出発するぞ!。」
「ぁぁぁッ、、、。」
 藺晨は長蘇の手を引いて、廊下を早足で歩いていく。
「、、、り、、藺晨、、、早い、、ゆっくり歩いてくれ。転ぶ、、、。」
「煩いっ、主治医の言う事、聞けッ。この位、大丈夫な筈だ。
 ほら、早く歩け、運動運動!。」
「あははは、、何て厳しい藺晨先生だ。」
 蝶は背中に止まり、長蘇を押すように羽ばたいている。
「どこに行く気だ?、、また妓楼で、どんちゃん騒ぎは嫌だぞ?。」
「煩い患者だな。主治医に任せろ。
 、、、あっ、、飛流、、つっかかってくるな、煩いっ!!。」
 蝶は、藺晨の顔の辺りを、煩く飛んで、藺晨は手で払っているが、蝶は煩く飛ぶのを止めない。
「ははは、、、。」
作品名:天空天河 四 作家名:古槍ノ標