特別訓練
音屋敷の一室。
閉め切った部屋は、まだ昼間だというのに陽の光が一切入らず、薄暗がりに満ちている。
部屋の中央には布団がひと組だけ敷かれており、そこに向き合うように座り込んだ人影が確認できた。
停滞した空気に噛み殺すような息遣いと、衣擦れの音が染み込んでいく。
「ふ……ッ」
「…はぁ、」
どちらのものとも判別できない熱を孕んだ吐息を聴覚の表層で捉えながら、煉獄は視線の先の信じられない光景を未だ受け入れられずにいた。
足を投げ出して座る宇髄の大腿に己の足を乗せて、互いの逸物を宇髄の手がまとめて扱き擦り合わせている状況。
下腹部がひくつき、間断なく与えられる快感に身が震える。
……何故、こんなことに…
手の甲を口元に当てがい、零れ落ちそうになる声を懸命に抑えながら煉獄はぼんやりと考える。
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つい今朝方のことだ。
宇髄と恋仲にある、という噂は徐々にだが広まりつつある。
そんな中、宇髄とのやり取りを見た他の隊士から「やはりただの噂でしたか」といった発言があったのだ。
振る舞いや距離感に関しては、どうしても遠慮がでてしまう。
実際の恋人ではないのだから当然といえば当然だが、そこのところ宇髄はうまくやってくれている。
…問題は俺の方だった。
見かねた宇髄が、これでは意味がないから特訓しようと提案し、その後彼の屋敷に連れてこられたのだがーー
「よし、煉獄。ちょっと貸せ」
「うむ。何をだ?」
「お前の魔羅」
「魔羅!!」
突拍子もない単語に断固拒否の姿勢を見せたが、お前が出さないなら俺が出すなどと尚更突拍子もない申し出をしてくるものだから、渋々こちらが折れる羽目になった。
宇髄曰く、すべては慣れなのだという。
やることをやってしまえば克服できるのだと力説しつつ、こちらの雄を手に収めてくるので反射的に腹に拳を打ち込んでしまった。
それでも痛みを堪えて手を伸ばしてくるのでもう一度拳を握りこむと、わかった俺も出すから勘弁してくれと、誰も求めていないことを言って泣きついてきた。
…これは俺の為の特訓であり、わざわざ宇髄も時間を割いてそれに付き合ってくれるということもあって、彼の泣きの提案を呑んだのだった。