影遊び
夕焼けに包まれだした往来に、並ぶ二人の影が伸びている。冨岡の手の影が、そっと煉獄の影に重なった。まるで手を繋いでいるかのように。
煉獄の手に冨岡の手は触れてはいない。影だけの手繋ぎだ。ちらりと横目でうかがった冨岡の顔は、見る者によっては冷徹だとさえ言われる目元が、ずいぶんとやわらいでいる。微笑みこそないものの、穏やかでやわらかな表情だ。
今はまだ、影だけの重なり合い。けれど、きっといつか。
「では、俺はあっちだ。お互い頑張ろう!」
さりげなく影を確認しながら、煉獄は少し冨岡に近づいた。
冨岡は気がついただろうか。煉獄の横顔の影が、冨岡の顔の影にわずかに重なったことに。
うなずいた冨岡の顔は、夕焼けに照らされ赤く染まっていた。