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残念ながら手遅れです、覚悟はいいですか

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 義勇さんが口ごもりながら言うことには、しのぶさんの見立てでは義勇さんはどうやら深刻な病を患っているらしい。それを聞いた瞬間、俺の顔はきっと真っ青になっていただろう。
「薬! 薬は貰いましたか!? どうすれば治るんですか!?」
 泣き出しそうに取りすがった俺に、義勇さんは薬はないが対処法は聞いてきたと言って、ぽつりぽつりと話してくれたのだ。
 俺が出かけているあいだ、どれだけ義勇さんが寂しい思いをしているかとか。俺がほかの人と楽しそうにしているとき、どれだけ嫉妬しているかとか。
 聞いている内に、青かっただろう俺の顔は、今度は真っ赤に染まっていたはずだ。だって、こんなに熱烈に思ってくれていただなんて、ちっとも知らなかった。
 義勇さんは感情が顔に出ないし、とっても無口で、滅多に好きだとか言ってくれない。だから、義勇さんが想ってくれるよりもずっと、俺のほうが義勇さんを好きなのだと思っていたんだ。
 恥ずかしくなって俯いた俺に、少し緊張してるような声で義勇さんが、お前はどんな風に俺のことを想ってくれているのかと、聞いてきたのは三十分前。

 羞恥に耐えながら話し終えた今、俺は、義勇さんの腕のなかにいる。ちょっと苦しいぐらいに強く抱き締められている。
 うれしいんだけどそれよりも、病気のほうが心配で。

「義勇さん、病気は大丈夫なんですか? 今の話が対処法ってやつなんですか?」
「ああ……もう大丈夫だ。もう、わかったから」

 話をしただけで? という疑問は、言葉にはならなかった。できなかったと言うべきかも。
 口を吸われて夢中になって、眩暈がするぐらいの情欲の匂いに包まれたら、もう駄目だ。疑問も不安も全部吹っ飛んで、頭のなかは義勇さんが好きって言葉でいっぱいになってしまう。
 でも、きっと心配することはないんだろう。だって義勇さんは大丈夫って言ったから。

 義勇さんの言うとおりにしていたら、万事、上手くいくんだから。