甚だ遺憾ながら幸せです、それではまた
そろそろ夜道は息が白く染まる。こんな夜には人肌が恋しい。けれど恋人はなく、今夜の客は一組だけの閑古鳥。まったくもって残念な日だ。けれど、幸せだとたしかに感じられる夜だった。
ふふっと小さく笑い、村田は歌いながら歩く。
「今荒城のぉ夜半のぉ月ー変わらぬ光ぃ誰がたぁめぞー」
明日も、明後日も、次の日も。月はきっと綺麗だろう。
明日も、明後日も、次の日も。あの二人はきっと笑いあっているのだろう。
だから、見送る言葉は、じゃあまたな。いつでもそう言って、村田は二人を見送るのだ。
作品名:甚だ遺憾ながら幸せです、それではまた 作家名:オバ/OBA