本日はお日柄も良く、絶好のお葬式日和で
本当は、ずっとあんな顔で寄り添いあいながら、生きていってほしかった。輝利哉だけでなく、後藤も、妹たちも、心の底からそれを願っていただろう。けれども死は必ず訪れる。義勇や実弥に訪れたそれは、残酷なほどに早かったけれど、それでも当人たちの胸に未練や後悔はなかったのだろうと、その穏やかな死に顔に思った。
自分たちも、そうありたい。いつか訪れる終焉を後悔のない笑顔で迎えられるよう、いつかふたたび出逢う遠い未来が平和なものであるよう、精一杯生きていかなければならないのだ。
「……学校を、いつかつくりたいんだ。そこではね、みんな笑っているんだよ。勉強して、体をきたえて、もしかしたら恋もして。そうやって笑ってすごす学校で、生まれ変わったみんなが出逢うんだ。僕にできるかな。そういう場所を、つくれるかな」
自然と口をついて語った夢は、実弥にも言ったことがない。なんとなく恥ずかしくて、言えなかった。けれども、誰かに聞いてほしかったのかもしれない。
うれしそうに破顔して、そりゃあいいと、後藤は夢見るように言ってくれた。
「お館様の恩返しは、みんなが笑ってすごす未来での居場所を作ることなんですねぇ。できますよ。お館様なら絶対に、いい学校をつくれますって」
「兄さまの夢、私もお手伝いします」
「絶対に、いい学校を作りましょう」
妹たちの張り切る声に、少し照れつつ、けれども強く輝利哉はうなずいた。
「うん……ここで眠る子供たちに誓うよ。僕は必ず、みながまた出逢う未来の居場所をつくる」
その日まで安心してみなが眠れるように守ってやっておくれと、後藤に笑いかければ、後藤はぱちぱちとまばたきし、ぐっと引きしめた顔で、はいと力強く答えてくれた。
おーいと、炭治郎が明るく手を振るのに、みんなで手を振りかえし笑う。
晩秋の墓所に夕日が差した。鬼の出ない夜がくる。いつかの未来のその先も、もう夜におびえることはない。
ここで静かに眠る輝利哉の子供たちが、命懸けでつかみとってくれたおびえぬ夜を、平和な世の中を、守り続けることこそが生き残った自分の使命だ。
繋いで、守って、生きていく。だからどうか、いつかまた……遠い未来で、いつかまた出逢い、ともに笑っておくれと、輝利哉は一番星が輝く空を見上げた。
風が吹き、輝利哉の髪をゆらす。その風は、昼間頭をなでてくれた炭治郎の手のように、やさしかった。
待っているよと笑う、大勢のなつかしい声が聞こえた気がした。
作品名:本日はお日柄も良く、絶好のお葬式日和で 作家名:オバ/OBA