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やきもちとヒーローがいっぱい

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 子供に好かれるようにはまったく見えないのに、遠目にも子供たちは楽しそうに見える。あいにくとこの距離では表情まではわからない。だが大変懐いているのは間違いないようだ。
「ほほう、やはり冨岡は剣道をしているようだな」
「あぁん? なんでだよ」
 突然の思いがけない発言に宇髄が問えば、煉獄は冨岡を指差し、あれは竹刀袋だろうと大きな目をキラキラと輝かせた。自分も剣道をしているからか、宇髄とは着目するところが違うようだ。
「ぼんやりしていることは多いが、隙のない身のこなしだったからな! なにか武術をやっているのではないかと思っていたんだ。なるほど、剣道ならばぜひ手合わせしてみたいものだ!」
「……あんな遠いのに、おまえ、目ぇいいな」
「うむ! 俺は両目とも二.○だ!」
 うんうんとうなずく煉獄に、いや、そうじゃなくてと呆れてしまう。しかしながら、宇髄も冨岡については内心同意するしかない。
 文武両道の教育方針からやらされていた合気道だが、武道自体は嫌いじゃない。むしろ無心で体を動かすのは悪くなかった。才能もそれなりにあったと自覚している。
 そんな宇髄の目で見ても、冨岡はたしかに武道をやっている者の動きをすることがあった。
 だが、それでは仲良くしてみようかということになるわけもなく。めずらしいものを見たなで済む話だったのだ。そこまでは。

「む? なにかあったのかな?」

 煉獄の声にわずかに緊張が滲む。突然犬とともに走り出した冨岡を、子供たちが追いかけているのが見えた。遠くから犬の悲痛な鳴き声も聞こえてくる。冨岡が向かったのは、その鳴き声がする場所なのだろう。
「よし! 俺たちも行ってみよう!」
「はぁ!? ……あー、もう、しょうがねぇなぁ。わかったよ!」

 ま、作品のインスピレーションを得られることがあるかもしれないし?
 おもしろけりゃ結果オーライだ。派手ならなおいいけどな。

 駆けだしながら、カメラを回して冨岡の姿を捉え続けたのは、単なる習慣だ。
 偽造工作で陥れられないためには、記録がなにより重要だ。口うるさく言われていた父親の言葉が耳によみがえり、ちょっとばかり眉をひそめたくなる。あいつの言葉になんてなに一つ従いたくはないが、今回ばかりは正しかったようだ。
 まぁ、いい。感謝する気はこれっぽっちもないけれど、馬鹿と鋏は使いよう。クソ親父の忠告も使い方次第で役に立つ。
 宇髄はカメラに映る冨岡の姿から視線を外すことなく、ニヤリと笑った。