やきもちとヒーローがいっぱい
「宇髄さんや煉獄さんはみんなを助けてくれたヒーローだけど、俺の大好きなヒーローは、義勇さんだけですよ。絶対に覚えておいてくださいね」
どんなに格好良くたって。どんなにあっという間に敵を倒したって。ほかのヒーローじゃ駄目なのだ。
炭治郎のヒーローは一人きり。格好良くてやさしくて、心が迷子になってしまうほど悲しくても、大切な人を思いやれる強さを持ってるヒーロー。犬が怖くても、子猫みたいに怯えても、炭治郎にとっては義勇だけが、たった一人のヒーローだ。
ちょっぴり頬を染めて言った炭治郎に、義勇はさっきよりもっと驚いた顔をして、それから、うれしそうに笑ってくれた。
楽しそうにお喋りしながら歩くみんなは、きっと気づいていないだろう。だからこの微笑みは、炭治郎しか知らない。
炭治郎にだけ見せてくれた、花開くようにやさしい義勇の笑顔。
今だけは、炭治郎が独り占め。
作品名:やきもちとヒーローがいっぱい 作家名:オバ/OBA