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ワクワクドキドキときどきプンプン 一日目

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「ふーん、なるほどな」
「宇髄、いきなりなんなんだ? 冨岡が固まってるぞ」
 問う煉獄の声もどことなく戸惑い気味だ。いや、おまえだってこのあいだはいきなり義勇を撫でただろうと思いはするが、それはともかく。錆兎がフリーズから再起動するには、それで十分だった。
「天元! 義勇になにしてんだ!」
「骨格見てたんだよ、チビ剣士。心配すんな、冨岡は百七十五はいきそうな骨格してるぜ」
 そう言って笑う宇髄に、錆兎はぱちくりと目をしばたかせた。
「本当か?」
「おう。俺さまの目を信じろや」
 いや、どんな根拠なんだと思わず疑いの目を向けそうになったが、「宇髄は絵を描くからかそういった見定めが得意だったな」と煉獄が言ったので、一旦疑惑は置いておく。
「義勇さん、百七十五センチになるんですか? 凄い! おっきいなぁ、いいなぁ! 俺も義勇さんぐらいおっきくなりたいです!」
 まだ硬直が解けないのか、ギギギと音がしそうなぐらいにぎこちなく炭治郎へと顔を向ける義勇は、呆然として見える。義勇の前でぴょんぴょんと飛び跳ねて、凄いなぁ、いいなぁと、頬を赤く染めて興奮して言う炭治郎に、明らかに戸惑っているようだ。さもありなん。しかし、正直なところ錆兎だって飛び跳ねて喜びたい。炭治郎よく言った! って炭治郎の頭を撫でてやりたい。
「竈門少年は今何センチなんだ?」
「えっと、一年のときから三センチ伸びて、今は百十七センチです!」
「禰豆子はね、百十三センチだったの!」
「おーそっかそっか、いっぱい食って派手におっきくなれよ、チビッ子ども」
 言いながら宇髄は、さきほど錆兎にしたように、炭治郎と禰豆子の頭をいささか乱暴な手付きで撫でている。
 なんだかんだ言ってもいいやつだなと、錆兎は小さく苦笑しつつ思う。
「おまえもしっかり食わねぇと、炭治郎に追い越されるかもしれねぇぞ。見たところ百六十ぐらいだろ?」
 ガキの成長なんてあっという間だぜと、義勇に向かってニヤリと笑う顔に、そう思う。
 わかりやすい発破だ。わかりやすすぎてちょっぴり呆れるほど。けれどそれでも、義勇がちょっとだけきゅっと唇を噛んだのが見えれば、余計な茶々を入れる気にはならない。
 だって、錆兎たちを心配させないようになんていう他人本位の理由じゃなくて。義勇自身がもっと成長したい大きくなりたいと思ってくれないかぎり、おそらく改善は望めないのだ。

 もしかしたら今の宇髄の一言が、炭治郎の素直な憧れの眼差しが、義勇をまた少し変えてくれるかもしれない。

 炭治郎のヒーローでいたいなら、がんばれ、義勇。

 錆兎が心のなかでエールを送るのと、真菰がクスクス笑いながら錆兎を見たのは、同時だった。
 うん、同じこと考えてるな。錆兎も少し面映ゆく笑った。
 突然現れて義勇の感情を揺り動かした炭治郎。悔しくて寂しい気持ちはまだなくなりはしないけど、それでもやっぱりうれしいよなと、目線だけで真菰と笑いあう。

 うん、だからまぁ、はいアーンで食べさせてもらうぐらいは。うん。それで義勇がちゃんと食べてくれるなら。まぁ。

 いや! でもやっぱりそれはどうなんだ!? と、錆兎が宇髄と一緒にちょっと遠い目をするまで、あと十五分。