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少しだけ戸惑いの混じる獅子の声は、それでもとびっきりやさしくて、魚の涙は止まりそうにありません。
けれども、魚は誓ったのです。最期のときに、強く願い、祈り、誓った想いを、魚は忘れてはいません。
「……初めまして。俺は、義勇。名前を、教えてくれ」
初めて発した声はぎこちなく、慣れぬことでちょっぴり裏返っておりました。
恥ずかしさに魚――義勇がうつむきかけると、やさしい手が涙を拭ってくれました。ちらりと上目遣いに見た獅子の顔には、世界中の幸せを集めたかのようなとろけんばかりの笑みがありました。
「あぁ! 挨拶を忘れて申し訳ない。俺は……」
大きな月は煌々と輝いています。星々は歌うようにキラキラとまたたいていました。二人を包む光はただやさしく、穏やかです。
星の命はいったいどれだけ続くのでしょう。きっと長い長い時間に違いありません。
もう水のなかにも、草原や密林にも戻れません。けれど寂しくはありませんでした。これから先の長い長い時をともに過ごせるかもしれないのです。これほど幸せなことがほかにあるでしょうか。
ここからはじまる物語は、もう、奇跡ではないのです。
義勇も、歓喜の涙に濡れた頬をゆるめ、じっと愛しい人を見つめ微笑み返しました。胸の内で、義勇はふたたび強く祈り、誓います。
今度こそ、一本の糸のように互いの想いを固く強く撚り合わせ、いついつまでもともにいるのだ。そう、永遠(とわ)に、と。