いじめたい
しかしさぞかし怖かったのだろう、と雲雀は思う。どうして巻き込まれなくちゃならないんだ、ヒバリさんがいなければこんな目にはあわなかったのに、そんな声が聞こえてきそうだった。きっと嫌われているだろう。内心どんなに毒づかれているのかわからない。
「ごめんね。怖かった?」
彼の瞳がぐらりと揺れた。どこか傷ついたような顔をして、ばかじゃないですか、と彼は言った。
「いくら強いからって、こんな何十人もに立ち向かうなんて無謀です」
「うん」
「オレのことなんて気にしなければよかったのに。放っておけばよかったのに」
「できるわけないよ」
「……血が出てる。オレ、手当ての仕方なんてわかんない」
医者呼んでくる、と腰を上げたツナの腕を、雲雀は反射的に掴んだ。ツナは問いかけるようにそっとこちらを振り返る。
「いて。ここに。手当てはいいから。もう少しだけここにいて」
「なんでですか。ヒバリさん、怪我してるのに、なんでっ……なんでそんなにうれしそうなんですか」
だって、と笑い出してしまいそうな気分で言う。
「君がそこにいるから。僕を見てくれてる。僕に話しかけてくれている。 ……うれしいんだ」
「……」
「ねぇ綱吉。二度と君を殴らない。ひどいこともしないし、使い走りにもさせない。悪口だって、何も言わないから」
その言葉の真偽を、雲雀の気持ちを、確かめるように、ツナはじっと黙ったまま雲雀を見た。しばらくの時が経って、やがてツナは小さく俯いてぽつりと言う。
「ヒバリさんと初めて会った時、オレ、うれしかった。文句言いつつも、ちゃんとオレのこと助けてくれて。お兄ちゃんができたみたいで、うれしかったんです。他のどの子と遊ぶより、ヒバリさんといる方が楽しくて。オレ、わざと転んだ時もあった。ヒバリさんがすぐに手を伸ばしてくれるのが、うれしかったから」
「……」
「でもだんだんヒバリさん、ひどいことするようになって、寂しかった。なんでだろう、オレ嫌われちゃったのかな、って。オレ、ヒバリさんに嫌われてるのがすごく苦しかった。だって、だってオレはこんなに――」
ツナはそこで一度言葉を止めた。零れそうになるものをぐっとこらえるように口を引き結び、それからまっすぐに雲雀を見上げる。
「ヒバリさんは、オレのことが嫌いなんじゃないんですか?」
小学生の頃と同じように、ぐずついた声。雲雀はそっと息を吸う。
「僕は――」
答える言葉は、あの時と違う、本当の気持ち。