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ワクワクドキドキときどきプンプン 2日目

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「こっちも手伝い増えて助かったから、あんまり叱んねぇでやれよ。あいつ、男湯と女湯があること知らなかったみたいだからさ。間違えてもしかたねぇよ。それより、ぎゆさん? って人は大丈夫なのかよ。一緒に休憩所に行ったらいなかったもんだから、なんか禰豆子がすげぇ心配しててさ」
 その声が聞こえたのか、禰豆子が「ぎゆさん!」と飛び上がった。
「お兄ちゃん、ぎゆさんは大丈夫? あのね、玄弥くんに借りたタオル持っていったら、ぎゆさんいなかったの。ぎゆさんの髪、ビッショリしてたのに……風邪ひいちゃう!」
 泣き出しそうな声で言われて、炭治郎が顔色を変えた。真菰も心配そうに錆兎に顔を向けてくる。錆兎だって、当然心配なわけで。
「なんか大変そうだな。俺たちも探すの手伝ってやりたいけど、母ちゃんの手伝いしなきゃいけないから……」
 すまなそうに玄弥と呼ばれたモヒカン少年が言う。見た目は強面《こわもて》だけれど、面倒見のいい性格なんだろう。息を詰めてこちらを見ている子たちは、みな弟妹なようだから、炭治郎と同じく『お兄ちゃん』らしいと言うべきか。
「いや、これ以上迷惑はかけられないからな。禰豆子を保護してくれてただけで十分だ。本当に助かった」
「……なんかおまえ、チビのくせに大人みたいな喋り方だなぁ。禰豆子と同じ一年生なんだろ?」
「チビはよけいだ。身長が男の価値を決めるわけじゃないっ」
 宇髄のような押しも押されもせぬ大男にチビと言われるならともかく、自分より少しばかり大きいだけの玄弥に言われるのは、甚だ不本意で、錆兎は思わず目を怒らせた。
 こういうところがまだまだ未熟で子供なんだろうと、自分でも思いはするのだが、腹が立つものはしかたがない。が、真菰のあきれた視線に気づいてしまえば、バツが悪くもなる。
 ごまかすように錆兎が咳払いすると、小柄な女の人がクスクスと笑いながら近づいてきた。
「玄弥、こっちの手伝いはいいから一緒に探してやれば? ついでに実弥を呼んできてよ」
「わかった。じゃあ、行こうぜ。これ以上迷子にならねぇよう、俺が道案内してやるよ」
 一瞬カチンときたけれど、炭治郎と禰豆子は気にした様子もなくありがとうと笑うので。真菰に苦笑されつつ、一言多い奴だなという言葉を飲み込んだ錆兎だった。


「さてと、どこから探す? 救護室にでも行ってみるか?」
 玄弥の言葉に炭治郎たちがそろって錆兎を見た。みんな錆兎の判断を待っている。禰豆子を探しているときには炭治郎がリーダーになっていたけれど、義勇に関してならリーダーは錆兎と、炭治郎も思っているのかもしれない。炭治郎の表情には引け目や嫉妬などどこにも見当たらなかった。
「……とりあえず、四十五分になったら一度座敷の休憩所に集合することになってる」
「んじゃ、まずは休憩所だな」
 とくに疑問を持った様子もなくうなずいた玄弥に引き連れられ、ぞろぞろと休憩所に戻ると、宇髄が待っていた。
「お、禰豆子見つかったか。よかったな」
「はい! ありがとうございます! 煉獄さんは?」
「あいつは冨岡を探しに行った。禰豆子を探すのは俺とおまえらで十分だしな。で、そっちのは?」
 玄弥に向ける宇髄の視線に警戒心は見られない。だからといって宇髄の本心など錆兎にはわかりようもないのだが。
 禰豆子が玄弥をやたらと褒めつつ宇髄に紹介するのを聞きながら、錆兎は先ほどの宇髄の言葉を思い出した。宇髄ほどには外面を取り繕えない錆兎の眉は、われ知らず寄せられ、落ち込みが少しばかり顔に表れる。宇髄の目には、義勇が焦って見えるらしい。宇髄の観察眼はきっと、悔しいが自分や真菰以上だ。だから宇髄の印象はおそらく正しいのだろう。
 炭治郎のヒーローであるために義勇が頑張っていることは、錆兎だって承知している。自分の体力や食事量に焦っているなら、いっそ微笑ましく思いもするし応援したい。
 でも、宇髄の言葉には自分たちのことも含まれていたはずだ。義勇は嫌がっているわけではないと宇髄は言ったが、本当のところはどうなのだろう。生まれた不安は消えてくれそうになかった。
 今の義勇は自己評価がとても低く、なにごとも自分の非だと思い込みやすい。錆兎や真菰が大人びていくのに対して、罪悪感を覚えてもしょうがないところではあるのだ。少し前までは、自分たちを不安がらせないようにするだけで精一杯だったろう。だが、感情が戻ってくるにつれ、考えることが増えてきたに違いない。今の義勇にしてみれば、もういい俺にかまうなと、本当は言いたいのかもしれなかった。

 ちょっと前までは、義勇が考えていることならちゃんとわかったのに。

 義勇がなにを考えなにを思っているのか、錆兎や真菰でさえわからないことが増えた。それが不安を呼ぶのだ。
 思い出すのは、それまでやさしげに笑ってくれていた人たちの、心ない言葉たち。表立っては義勇や鱗滝を心配し、気遣う言葉を言っていたくせに、陰で笑う顔は醜かった。幼い錆兎たちならわからないだろうとたかをくくっていたんだろう。意味を調べた錆兎たちが青ざめるほど薄汚い言葉で、二人を馬鹿にしていた奴らの、偽善の笑み。
 もちろん、そんな人たちばかりじゃなかった。本心から義勇のことを案じてくれていた人だってたくさんいる。鱗滝や錆兎たちのことも気遣って、今もお裾分けだのをしてくれるやさしい人たちは確かにいるのだ。
 それでも、そういう人たちだって、義勇を案じてかわいそうにと泣いてはくれても、義勇を引き取ろうとは一度として思わなかっただろう。義勇を受け入れすべて面倒をみようと言ったのは、鱗滝ただ一人だ。
 しかたのないことだと錆兎にだって理解できる。わかるようになった。語彙が増えるに従って、大人の事情をも鑑みるようになったから。それが子供らしくないというのなら、子供でなんていたくない。

 義勇の姉の事故が、すべてを変えてしまった。義勇も、錆兎と真菰のやさしいものばかりであふれた小さな世界も。すべてがいっぺんに色を変えた。
 親切だと思っていた人たちの本心や薄汚い笑み。大人の事情。笑うどころか悲しむことすらできなくなった、義勇。
 錆兎や真菰の友達にも、錆兎たちへの見る目を変えた者がいる。きっと家で親がなんやかんやと勝手なことを言っているのだろう。頭がおかしい奴と住んでるって本当かと不安そうに聞いてきた子を、錆兎は殴ってしまったことがある。鱗滝がそいつの親に謝り倒す羽目になったので、それからはなにを言われても手を出すのは我慢しているけれど、腸《はらわた》が煮えくり返るのは抑えられない。

 あのころの義勇が、まだなにも考えられない状態でよかった。錆兎が暴力を振るった理由と自分を結び付けて考えられるようになっていたら、義勇の心はもっと迷子になってしまっていたかもしれないから。

「おい、なに呆けてんだ。冨岡探しに行くぞ」
「すぐに見つかるといいな。じゃあな、炭治郎、禰豆子。また学校でな」
 物思いに耽っているうちに、玄弥はここで別れ自分の兄を探しに行くことになったらしい。宇髄に声をかけられハッと顔を上げれば、玄弥が手を振って立ち去るところだった。