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ワクワクドキドキときどきプンプン 3日目

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 言いながら、錆兎はまだタンポポを一所懸命編んでいる。眉根が寄った顔は真剣そのものだ。禰豆子や真菰の花冠と違いちょっと不格好なタンポポの花冠に、悪戦苦闘の跡が見えた。
 禰豆子と顔を見合わせクスっと笑いあう。錆兎の反対隣りに回り込んだ禰豆子と一緒に、真菰は笑いながら錆兎の頬をつついた。
「錆兎、笑って?」
「ニコニコして作ると、花冠もニコニコマークの冠になるんだよ?」
 きょとんと目を丸くした錆兎が、ふはっと笑い声を洩らした。苦笑しながらも、タンポポも編み終えたらしい。
「ごめん、俺のが一番下手くそだ」
「ううんっ、タンポポの花冠うれしい! ありがとう、錆兎くん! ニコニコマークの花冠だね」
 ご機嫌に笑う禰豆子に照れくさげに笑い返した錆兎が、義勇に「だそうだぞ、義勇!」と楽しそうに声をかけるのに、真菰と禰豆子も笑ってうなずいた。
「義勇さん、こうですよ。にこ~って!」
 言いながら義勇に向かって明るい笑みを見せる炭治郎は、とても幸せそうだ。それを見る禰豆子の顔や、もちろん錆兎も。きっと自分もすごく幸せそうに笑っているんだろうと、真菰は思う。だって、こんなにもここは温かい。こんなにも幸せだ。
 みんなの笑顔を見回した義勇の目が、ふわりと細められて、やさしくたわんだ。唇がかすかな弧を描き、とてもきれいな微笑みとともに義勇の手が、タンポポの花冠を炭治郎の頭に被せる。
「……お日様みたいだな」
 ささやくような声がやさしい。炭治郎の頬がほわりと赤く染まった。
 もじもじとする炭治郎に向けて義勇が少し頭を下げた。炭治郎の手で編まれたシロツメクサの花冠が、義勇の頭にそっと乗せられて、真菰は思わずほぅっとため息をついた。
 なんだか映画のワンシーンみたいだ。いや、実際に映画のワンシーンを撮っているのだけれども。

「いいっ!! すっごくいいっ!! 清らかなのに萌えるって最強じゃないですかっ!? やっぱり主役いらないですよね、これ! 村田くん、君のことは忘れません、ちゃんとクレジットにはAD村田って載せますから出番無くしていいですかっ!? いいですよね!! 反論は聞きませんっ、この光景を余計なもので穢すなんて僕の美意識が許さないぃっ!」

 地面をドンドン叩きながら発作のように叫ぶ前田に、錆兎と義勇の顔がスンッと虚無感をたたえた。
 そろそろ誰かどうにかしてくれないかな、この眼鏡。自分でどうこうするのは嫌だ。近づきたくない。
 固まった笑顔のこめかみに青筋が浮かぶのを感じながら、真菰も遠い目で虚空を見た。
 背後で「なんでっ!?」と叫んでいる村田さんとやらには、本当に同情しかない。が、まぁ正直どうでもいい。映画のできがどうあれ、ストーリーがどうあれ、真菰にとっては義勇やみんなと一緒なこの時間を、きちんと映像に残してくれたならそれでオールオッケーだ。

「うわぁ、きれいっ! お姫様みた~い!」

 突然聞こえた声に、義勇のことかな? それとも禰豆子ちゃんかなぁ。うん、私もそう思うよぉ。と、思わずまた笑みくずれた真菰は、すぐに目をまばたかせた。

 え、誰?

 あわてて振り返り見れば、昨日見た顔ぶれが宇髄とともに並んでいた。