新大陸の短文集
『双つの思い出』
「なあブルーノ。……その靴、大分古くなってるんじゃないか?」
「そういえばけっこう履いてるかも……。見た目はそこまでじゃないと思うけど、よく分かったね」
「金具の音が怪しいと思ってさ。靴も装備だからな」
ちょっと見せてくれ、というルベンスの言葉にブルーノは片足を軽く前に出した。屈みこんで靴を見るその姿が、『彼ら』の姿に重なり―
「……!」
「……どうした?」
「い、いや。なんでもないよ」
下からの投げ掛けられた視線にブルーノが慌てて返すと、「そうか」と短く返事をしてからルベンスは再び視線を足元に戻す。
―今はもう見ることのない二人の姿が過った、ということは言わなかった。
作品名:新大陸の短文集 作家名: