新大陸の短文集
『幸福を呼ぶ\\\"魔女の一撃\\\"』
―確かに『無茶をしている』という自覚はあった。けれども、あんなタイミングで事が起きるとは思っていなかった。
天井の木目を見ながらルベンスは反省していた。今日行う仕事を一つ減らしていれば、昨日もう少し腰を労っていれば、こうして運ばれることはなかっただろう。
(よりにもよってジルダに情けない姿を見せてしまうなんて……)
起きてしまった出来事に思わずため息をつく。本日最後の仕事。行き先にいた彼女。そこで腰の限界を向かえた自分。
(ジルダだって忙しいってのに……)
なんとか戻ろうとした自分を「無茶をしないで」と捕まえたのは彼女で、こうして横たわっているベッドに運んでくれたのも彼女だった。
魔女の杖の一振りがもたらした一連の出来事は、いくら後悔してもなくなるものではない。そうは思っていてもつい考えてしまう。彼女と行きたいのは気遣われながら行くベッドではない、共にフライドポテトをつまみながら語り合えるデートスポットなのだ。そう、何度断られようともそこは譲れない。今は口説き文句も流され、淡白にあしらわれる仲であろうとも、いずれは良い仲に―
そこまで思い至ったところで、ルベンスは気付いた。
「ジルダが、俺を看病してくれた……?」
作品名:新大陸の短文集 作家名: