新大陸の短文集
『『怪我の功名』の先』
「―ジルダ、この前はありがとう。君のお陰で良くなったよ。お礼に是非俺とお茶を……」
「……そういうのに付き合ってる時間はないんだけど」
「ま、待ってくれ!」
呆れ顔で立ち去ろうとするジルダを、ルベンスは引き留めた。
「受けた恩を返さないなんて商売人の名折れだ!だから、恩は返させて欲しい……!」
必死で頼み込んでくる姿に「そう」と短く呟くと、荷物から一枚の紙を取り出しながらジルダは笑って見せる。
「それなら、買い出しに付き合ってくれる?」
紙の端から端まで詰められた文字。載せられた品物と数字。目に入った内容に顔をひきつらせながらもルベンスは「もちろんだとも」と答えた。
作品名:新大陸の短文集 作家名: