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天藍ノ都  ───天藍ノ金陵───

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 玉の房飾りの上質な物を、先日入手したんですよ。これ迄の宗主の衣だと、どうしても合わなくて、、この紗ならば、ピッタリです〜。
 あぁ良かった。無駄にならなかった。」
「黎綱!!!、いつの間にそんな物を!!!。」
「おぅ!、いい仕事してるな、優秀だぞ黎綱!。」
「あはははハハハハハハハハハハ、、、。」
 藺晨の言葉に喜びながら、装飾品を取りに行く黎綱。

「おぃっ!!!、お前ら!!。」
「うるさいな、動くな長蘇!、いかにも無害で賢そうな、この引っ詰めの髪型が良くない!。大体そんな、大人しいタマじゃ無いだろ!、長蘇は。
 私と同じ髪型にしてやろうか?。」
 藺晨は、長蘇の顔や姿を、見定めている。
 どんな出で立ちにしてやろうかと、わくわくとして、堪らない様子だ。
「そんなボサボサ髪、嫌だ止めろ!、ぁぁああ、、。」
「あーはいはいはいはい。」
 長蘇が止める間も無く、簪は抜かれ、白玉の冠を外されてしまった。
 外された途端に、しっとりとした絹糸の様な黒髪が、癖もなくさらさらと流れ落ち、背中や肩にかかる。

「若閣主〜〜!!、冠です〜〜。」
 黎綱が、木地の盆に、十点程の玉やら銀の冠を乗せて持ってきた。
 殆どが、長蘇が見た事もないものだった。
「黎綱?、何だそれは、今までそんな冠は、見たことが無い。一体、何処から、、。」
「都は良い職人がおりますね〜。ちょっと見かけて、購入しておいた物ですが。
 やっぱり、いつもの宗主の格好では、これは付けられなくて、、、。」
「だよなぁ、、。長蘇は、廊州に居た頃より、更にダサくなったんじゃないか?。」

「喧しい!、藺晨も黎綱も!、勝手な事ばかり!。
 私が派手な格好をして、金陵で目立ってどうするのだ。」
 長蘇が藺晨と黎綱を、代わる代わるに睨みつけるが、さしたる効き目は無い。
 それよりも、長蘇の着せ替えを楽しむ気、満々の様子だ。
「まぁまぁまぁまぁ、、。
 こんな事で怒るな怒るな。
 取り敢えず座れ。私達が、御粧(おめか)しして、ダサい印象を、一新してやる。
 、、、ほらほら、座れ座れ座れ。」
「そうですよ〜、たまには良いじゃないですか〜。
 小帥だった頃は本当に格好良くて、惚れ惚れしましたよ。皆の憧れの的でした。
 颯爽とした身のこなし、そして身に纏う白い衣。皮の胸当てを着けて、衣を翻して槍を振るう小帥の、何と麗しかった事か。、、、ぁぁ、鼻血が出そうです。
 私は格好が良い宗主が、ただ見たいだけなんですよ〜。分かってくださいよ〜〜。」

 話が通じない二人を相手に、わなわなと震える長蘇だったが、最後には、涙ぐんで抵抗を諦めた。

「、、、好きにしろ、、。」 
『勝った』と言わんばかり、藺晨と黎綱は、握った拳の親指を立てて、片目を瞑って、合図し合う。

「長蘇、泣く事は無いだろ。超絶一流の審美眼のある私が、お前を美しくしてやる。」

 藺晨と黎綱は大喜びで、長蘇の装身具を掻き集め、『ああでもないこうでもない』と、何度も着替えさせ、それはそれは楽し気に、艶(あで)やかな長蘇の姿を作っていった。

 薄墨色の濃淡のある、薄地の衣の中は、暖かみのある白の、綾織風の新素材の衣。そして衣の下に覗く緋色の襟が、印象を際立たせていた。
 翡翠玉にも、深紅の房飾りが下がり、殺風景な墨色の衣の、雰囲気を締めていた。
 髪は、『結う結わぬ』で、藺晨黎綱は揉めたが、結局、一部だけ髷を結い、他は流した。

「あまりきっちりとした髪型ではいかん!。少し抜け感をださないとな。
 完璧さを求めると、人が近寄り難くなってしまう。」
 そう言うと、顬(こめかみ)の辺りから、後れ毛を少し引き出して垂らした。

「ぁぁぁ、、!!!。若閣主!!!。
 完壁です!!。滴るような色気が!!!。
 、、、宗主のこんなお姿が見られるとは。」
 黎綱、長蘇の姿に咽(むせ)び泣き。
「ぅわ、、、自分でも才能にびっくり。
 長蘇みたいな、野暮ったいダサ男を、これ程、美しく変身させられるとは!!。」
「宗主をダサ男だなんて、酷いですよ。
 でも、若閣主〜〜!!、流石です〜〜!!!。」
 黎綱うっとり。

「鏡だ!、鏡を持って来い、黎綱!!。」
「あ、、、蘇宅に鏡は無いのですよ。」

「ぁぁ、、そう言えば。」
 藺晨は、長蘇が変貌した姿を見るのが辛くて、蘇宅には、鏡を置いていないのを思い出した。

「ならば、若君、こちらへ。」
 長蘇を若君と呼び、恭しく、手を差し伸べた。
「ぇ??、、何処へ?、、、何をしようと?。」
 長蘇は眉を顰めたが、暫く考えて、藺晨の手をとった。
 藺晨は長蘇を、部屋の外へと誘(いざな)った。

 藺晨に手を引かれ、一歩、外に踏み出せば、長蘇の袖は風を纏って、優雅に揺れた。
 藺晨が引き出した髪が、ふわりと揺れ、長蘇が指でそっと払う。

「ああああああ!!!。」

 黎綱の声に驚いて、二人が振り向く。
 長蘇が、ゆったりと振り向く姿も、また美しく。

「何だ!、黎綱!、驚くじゃないか!。」
 眉間に皺を寄せ、藺晨が渋い顔で言う。
「ああ、、、だって、、、宗主が、美しすぎて、、
、、、、、泣きそう。」
「あはははは、、、。」
「ふふふ、、、。」
 体の大きな黎綱が感動して、打ち震えている姿が滑稽で、藺晨と長蘇はは笑った。

「長蘇、『ふふふ』じゃないぞ。こっちに来て見てみろ。」
 藺晨は長蘇を、蘇宅の池まで連れ出して、池に掛かる橋の欄干に座らせ、その水面に映る長蘇の姿を見せた。

「どうだ!、これほど艶やかになれるのだ、たまには粧し込めっ!。
 若い侍女がいる訳じゃ無し、蘇宅ときたら、殺風景で仕方ない。」
「あははは、、、。」 

「うー、長蘇、、、、こんな水鏡じゃ、はっきり見えない。自分の姿が見れば、考えも変わるはずだ。
 後宮で使う様な、デカい鏡をお前に届けてやる。」
「止めろッ、要らぬ!!、絶対に寄こすな!。
 、、、私を着飾らせて、満足したのだろう??。
 思う通りに出来たのに、鏡なぞ無くとも、良いだろう?。」
「、、、いや、絶対に届けるッ!。」
「藺晨?、何故そこまでムキになる??。鏡なぞ、この水鏡で充分だ。藺晨も黎綱も、満足の出来たのだろう?。」
「、、、、お前にちゃんと見せたいのだ。」
「え?。、、見てるじゃないか。、、?。」

「、、、(わからんかな〜〜、、苛)、、、。」

「、?、、、、、、ハッ。
 (そういう事か、藺晨は褒めて欲しいのか)。」
 睨みつける藺晨の視線に、長蘇がハッとする。

「藺晨、、流石だな。私ではこうは着飾れん。
 まさに、当代一の風流者だ。」
 取って付けた様な、長蘇の褒め言葉に、少々苛つく藺晨だが、
「、、、少々、わざとらしいが、、まぁ、良いか。」
 
 梅長蘇は、自分の片腕には、絶対の信頼を置き、何も言わず全てを任せる、そういう人間なのだ。
 無言の信頼こそが、配下にとっては、最高の賛辞なのだが。
 江左盟の配下でも、武人でも無い藺晨には、そういった事に喜びを感じる感覚が、長蘇の周りの者達とは、少し違う。

 そんな藺晨と話すと、時折、心の中の澱んだ空気が、綺麗なものと入れ替わる様な、清々しさを覚える。