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あーあー、テステス。本日は晴天ナリ、本日は晴天ナリ。
本日の報告を致します。
朝7時起床。寝覚めの悪いまーちゃんを起こすのが本日最初のお仕事。布団とシーツの真ん中で程よく水分が抜けたトマトとかハムみたいにぐんにゃりしてるまーちゃんを引っ張る。
骨ばってごつごつした腕を掴んでずるずると。
布団から落っこちる一歩手前まできても起きない場合はずり落ちた上体を持ち上げて座らせてやって、そんで両脇を抱え持つのがベスト。
「ほらまーちゃん起きようよ、学校遅刻するでしょ」
まーちゃんは赤ちゃんみたいだなあという感想を脳の右隅に追いやりながらんにゅーとか猫みたいな声でなくまーちゃんをなんとか起こすことに成功。
「みーくんおはよー」
「はいおはよう」
半強制的なお目覚めでもボクがいるからスッキリ爽快さ!なんて嘘は口が裂けても言えっこない。
むしろ逆だというのは自覚してる。
「さー顔洗って、そしたら朝ごはんだよ」
「今日はみーきゅんにまーちゃん特製ラブラブめだまやきを食べさせるのだーじゅわー」
「わー嬉しい、流石まーちゃんだにゃー」
「そんなわけでみーくんはテーブルで待ってなきゃなんですからね!」
生後数カ月の赤ん坊みたいに頭の座らない動きをしながらマユさんはとてとて洗面所へ。
ぼくはといえば言われた通りにテーブルへ。勿論着替えは済ませてある。
椅子とテーブル以外使われた形跡のない埃の溜まったダイニングにてほったらかしだった新聞を手にとって大仰に開く。うぉっほんだとかえっへんだとか偉そうでわざとらしい咳払いをしたら完璧だ。
日付は数週間前を指している。
現実世界はかくも時間の流れが速いのだなあなんて感心した振りをしてみた。
そうこうしているうちに素敵な匂いが台所から漂ってくる。
「みーくんみーくんおまたせなのだ!まーちゃん特製めだまやきー」
るんたるんたと上機嫌でスキップでもしそうな顔をしてまーちゃんがやってきた。
「うわあ、これは美味しそうな」
炭としか形容できそうにない物体だった。
三百六十度どうやったらこんなに黒くなるんだろうといっそ不思議がる余裕まで出てきてしまう程だ。
「・・・まーちゃんはきっと素敵なお嫁さんになれるね」
姑をいびるという才能にかけては天下一品なんじゃないのかな、みーくん以外と結婚するのかどうかは置いておいて。
にへへーと相変わらず上機嫌で顔を緩ませるまーちゃんは「さささ、ご賞味あれ」ずずいっと炭を押し出した。
こういうのを笑顔で食べてやるのが全国の男子の義務ならば、今この瞬間ぼくは女でありたい。そんなどうしようもない嘘を飲み込んで「美味しいよまーちゃん。でもぼくとしてはまーちゃんを食べちゃいたいな!」誤魔化した。
「んもー、みーきゅんったら欲張りさんなんだからー」
作戦成功。どう足掻いても食べられそうにない物体からとりあえずの興味は外れたようで「お着替えしてこようね」の言葉に「あーい」と元気よく答えて姿を引っ込ませてしまった。
その隙に真っ黒なあのあれがメタルあれへ進化しても嫌いそうな物体は生ゴミ入れへ。
すまない卵さん、キミの働きは無駄になってしまった。
しかしマユは料理が上手かった筈なんだがな。今日に限って失敗した訳はあれか、気分か。
嘘だけど。心の中でしっかりとオチをつけながらひよこさんの冥福をお祈りする。無精卵だという事実は虚構にしておこう。
「みーきゅんお支度終わったー?」
ちゃらりん、と効果音付きで現れたまーちゃんとエンカウント。考えるより先に口が動くのは最早条件反射と考えてもいいだろうか。
「今日も綺麗だねまーたん」
「きゃーみーきゅんったらお上手ー」
ひとしきりバカップルを満喫したところで赤い糸を結ぶ。物理的に。小指が引っ張られる感覚にも慣れてきたな。

二人並んでご登校。赤い糸に対する周囲の視線はない。
結構他人には無関心なのだ、人間というやつは。もしくはただ慣れただけなのか。
多分前者だろうな、嘘だけど。最初はかなりじろじろ見られた。視線が痛いとはまさにあの事なのだろう。
普段通りにまーちゃんの手すり代わりにお手を拝借されて普段通りに教室に入る。
机に全身を突っ伏したまーちゃんを眺めてぼーっとすることで退屈な授業をやり過ごして、退屈な授業時間を終了させた。
あーお空が青い。

授業終了の鐘が鳴る五分前に教壇から人がいなくなった。
ざわつく教室内の喧騒をバックミュージックに鳴り響いた合成音のチャイムを合図に、席を立つ。
「まーちゃんお帰りの時間ですよ」
んむーとかんにゃーとかの間延びした声がねこっぽい。
「はいはい起きましょうね」
時々自分はまーちゃんのお母さんみたいだなあ、なんて思うことがある。お父さんでも可。
そうなると最終的にはまーちゃんに刺し殺される結末を辿るわけだけど、それもいいかもなあと思う自分がいることは否定できない。
妄想なので嘘だけど。
ぱちりと目を開けたまーちゃんは学校専用の優等生面を被って「帰る」立ち上がった。
クラスメイトの誰にも関心を持たれないまま教室を出る。本日の部活動はお休みなので伏見と顔を合わせることはない、はずだと思っていた。
『いま』『帰り』「はてな」
いつも通りの伏見が何故か教室の外で待ち構えていた。
すみません隣人が見ているのでまた今度にしていただけませんか。
見えない角度で抓られている腕が痛い。こりゃ帰ったら不機嫌まっしぐらだな、確定。
「うん、今日は部活ないだろ?」
先手必勝。何に勝つのかはいまひとつ判らないけれど柚々の目的は恐らく部活なので相手の出目を早めに潰しておく手段に出る。
予想通りその一言で打つ手を無くしたらしい柚々はおろおろした後『明日』『部活』『来る』「はてな!」
「うん、判ってるって。伏見ももう帰るんだろ、気を付けなよ」
爽やか青年風にその場を通り過ぎた。
一件落着。マユの機嫌もそこまで損ねていないようで腕を抓る攻撃もとっくに止んで、「みーくん早く帰ろう」顔を前に向けたまま無表情でそうのたまった。
怒ってはいないけれど拗ねているらしい。
昔はこれだけでも怒り狂ったものだ、とみーくん依存からの脱却の兆候を肌で感じながら咽び泣くということをしなかった。
さあさっさと帰ってしまおう。これ以上のトラブルは御免こうむる。
「とーおーるー」
あーあーあー聞こえない。
「とーる、とーるってば!」
これは幻聴です幻覚です悪霊よ消え去れ。
横に並ぶまーちゃんが立ち止った僕を不思議そうに見て「どうしたの?」と訊くので「なんでもないよ」と返す。
背後から聞こえる足音も無視して下駄箱に一直線!する前にそいつはやって来た。
「とーる!無視すんなっス」
タックルと称したいような威力のある抱きつきをなんとか踏みとどまって体勢を整える。
いろいろあったなあ、今日。まーちゃんの朝ご飯が珍しく失敗して授業が早く終了して伏見柚々が待ち構えていて。そんでお次は長瀬ですか。よりにもよってまーちゃんがお隣の時に。なんだ、今日は厄日なのか。
「どうした長瀬、すまないが用件は後日」
「だめっス今っス今すぐっス」
首、首締まってるから。
作品名:無題 作家名:nini