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Sugar Addiction

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「ん……何一人で笑ろうてるん」
 おはよう、と呟く唇に、おはようのキスで答える。
「朝っぱらから元気やね」
 啄むだけのキスをどちらからともなく繰り返せば、こはくが喉を鳴らして笑う。
「甘い夢なんか見んでも、現実が十分すぎるほど甘いわ」
 首の後ろに腕を回され、ぐいっと引き寄せられる。ねっとりと舌を絡めて、唾液を吸って。唇が離れる頃には肩で息をしていたけれど、やっぱりまだまだ、足りない。
「私はまだ、足りませんけれど」
「我儘な兄はん」
 そう言うところが好きなんでしょう、と笑えば、シーツの波に転がされた。



7. chocolate

「忘れ物、無いですよね」
「それ、ここで言い出すこととちゃうやろ」
 深呼吸をすれば潮の香りを胸いっぱいに感じる船の甲板で、司は鞄の中を漁り始める。もうすっかり背に馴染んだ一~二泊分の荷物しか入らないリュックの中に、何を入れ忘れるというのだろう。
「そもそも持って行くもんなんて一つでええやろ」
 ええ天気やなあ、とベンチに座って空を仰いでいれば、腹立たしい位ににやにやと笑みを浮かべた司が目の前に立つ。
「それって、私のことですか」
「何やねんその顔、気色悪い」
 折角の景色が見えん、と手で追い払えば、その顔のまま隣に座った司が鞄の中から小さな箱を取り出した。
「chocolate,いかがですか」
「いつの間に買うてん……」
 まぁええわ、一つくれ。そう言って手を差し出せば、乗せられたのは司の掌。はぁ? と開きかけた唇に司のそれが重ねられ、口移しされるチョコレート。
「……っ、何しとんねん!」
 誰かに見られていたら、と言おうとしたところで唇に人差し指が当てられる。
「みんな海と空と、恋人に夢中ですから」
 そう言われてみれば、確かにみんな手すりから身を乗り出さんばかりに海や空を眺め、屈託のない笑顔で恋人と寄り添っている。わしらも同類、っちわけや。
「さて、どうしますか? このまま甲板で旅の始まりを楽しみます?」
 そう言う司の顔は、違うものを期待しているのが丸わかりで。
「そんなんこれからいくらでも味わえるやろ。それよりもチョコ一個で足りると思うてるん」
 そう言って重ねられたままだった掌を握り、自分たちに宛がわれた部屋へと向かった。

 甘い甘い、旅の始まり。


End.
作品名:Sugar Addiction 作家名:志㮈。