D.C.III.R.E
「ありがとうございます、エリザベスさん」
「本当に恩に着る。世話になった」
「それは私の方ですよ。日本に行ってもお元気で」
「ああ」
「はい」
俺達はエリザベスと別れ、エレベーターに乗った。そして一路空港へ向かった。
◆ ◆ ◆
何日かかけて、様々な交通手段で乗り継いで初音島に辿り着いた。
最後に乗った船を降りた時、港で俺達を迎えたのはよく知る夫婦だった。
「久し振りリッカ、清隆」
「お久し振りです~」
「久し振りねユーリ。カレンも」
「お久し振りです」
清隆は今時と言った服装だが、リッカは和装に身を包んでいた。
趣味か何かだろうか?
「変わらず元気そうで何よりだ」
「貴方達が変わらなさ過ぎなんですよ……」
「そりゃ私はユーリさんと一生を過ごしたいって思ったわけだからね」
「カレンの考えも分かるわ。私も清隆がずっと生きてるなら、一緒に生きたいって思うし」
加齢を抑制する魔法を使ったカレンと、同じ魔法を止めたリッカ。対極的な二人は見た目以外変わらずだ。
「さて立ち話もなんだし、俺達の家に行こうか」
「あれ、もう決まってるんですか?」
「予定ではもうおうち建ってるはずだよ」
「そうなんですね」
「それじゃ、私が案内するわ。清隆、車出して」
「分かった。……って、リッカは知ってるの?」
「まあ、二人から聞いてたからね」
「……そうか」
不服そうな清隆。
まあ仕方ないか。
俺達は清隆の出す車に乗り込み、新しい住処へ向かった。
暫く車を走らせ、目的地に到着した。
「あの、リッカ」
「何かしら?」
「凄く見覚えある」
「奇遇ね、私も」
「うちの裏手じゃないか、ここ……」
「そうよ」
どうやら清隆は本当に聞いていなかったらしい。
そんなことを考えていると、カレンが裾を引っ張ってきた。
「ねえユーリさん。どう思う?」
「多分、リッカが何か仕組んだんだろ。大方俺達の連絡を敢えて端折ったとか」
「なるほど」
再び清隆達に目をやる。
「ここ暫く工事してるなあとは思ってたし、新築の家だから誰か引っ越して来るんだろうとは思ってたけど、まさかユーリさん達とは」
「ふふっ、これはドッキリ大成功ね」
「してやられたよ、本当に」
どうやら本当に何も聞かされていなかったらしい。
清隆も苦労していそうだ。
「さてユーリにカレン。改めてようこそ、初音島へ」
「これからご近所さんとしてよろしくお願いします」
夫をハメて笑顔のリッカと、一応立ち直った清隆が俺達に言う。
うん、ここを選んで良かった。
「ええ、これからよろしくお願いします」
「ああ。よろしく頼む」
こうして俺達夫婦の、日本での生活が始まるのだった。
作品名:D.C.III.R.E 作家名:無未河 大智/TTjr