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君に叱られた

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君に叱られた
~理想の悪夢~
             作 タンポポ



  プロローグ

「おおお………。凄いよ……、世界が広がってくる」
「俺はそんな事言わねえよ、お前、ちゃんと俺になれよな」
「わかってる………ああ、でも……ああ、感動だぜ」

「タイムを計ってるから、三十分の夢を楽しんで下さいよ」
「うん、村瀬の街ってよく出来てるよ。うまくトリップできれば、緊張感を持つのも夢じゃないと思う」

「おおお……」
「だから、俺はそんな声ださねえんだよ」

「村瀬、お前もフトルになりきれてないぞ。掟(おきて) を忘れるな? それがあって、初めてこの異世界の臨場感は成立するんだから」

「あ~あぁ~……、私って、また最後なのね。三十分だからぁ…、計、一時間も待って、インスタントのパートナーでしょう?」
「いつも文句だね。仕方ないでしょ、君は最後に呼ばれた人なんだから」
「メガキンとが終わったら、今日も僕がパートナーするから。今はまだそれでいいね?」
「また部長ね……、はいはい。基本的に男になれ、っていうのが気に食わないけど、ま、他のどん臭い人達よりは」
「きついな~……君は」
「はは……、うんでも、そろそろ…、サリの他にも女子部員を」

「おおお!」
「きたっ‼」

「部長!」
「きたかっ‼」
「また……、始まったのね」

「おおおお~っ!」
「………」

「村瀬? 村瀬? ――村瀬が行った。メガキン、タイムは?」
「五分……、いや、四分だよ。……早くなってる」

「………」

「フトルも行けたみたいだな……。はっは! やったぞみんな、これ…、やっぱり凄いぞ!」
「僕は前から部長の神秘的な部分を信じてたから」
「それにしても凄いわよ……。はぁ~ん、私なんで最後なのよ~」

「………あ」
「………」

「部長、フトルが」
「あ…え。早いな」
「フトル、ねえ話せる?」
「ダメだよ、フトル、答えなくていい、三十分はお前の時間だ。――サリ、始まってからは部員に話しかけるな、こいつらは今僕達の声を聞いちゃいけないんだよ」
「すみません……」
「どうします? こんな秘密、本当に僕達だけで独占してていいんですか?」
「そうよ……。あの、部長?」
「ん?」
「私以外の女子部員を…、部活から引き抜いて欲しいんですけど」
「う~~ん……。そうだなぁ……」
「あ、村瀬が気づきましたね」

「おお、やっとお目覚めかよ、フトル君」
「おお~…びっくりしたぁ…、カロリー減っちゃったよほほ~」
「俺はそんなに太ってないよぅ!」

「一分弱……。村瀬はこの前と大差ないです」
「そう、わかった。新しい仲間か……」
「うん。私だけパートナーがいないんですよ? このままじゃ完全に楽しめないんです」
「どっちにしろぉ…、僕もそれは考えていたからなぁ……。う~~ん」

「いやっほう! 腹が減ったからぁ~、この女でもつまみ食いしちゃおっかな~?」」
「おい、そんな下品な事言わねえよデブ‼」
「俺だってそんな言葉遣いしないよ。それに、デブってぇ…、今は」
「うるせえ、十五分は俺の世界なんだから、黙って俺の世界を楽しめデブ」

「村瀬にフトル、終わる時までにそのまま掟(おきて)を無視してたら、お前達にはもう触らせないぞ」
「まあさ、サリ、ゆっくり見つけようよ、大事な仲間なんだし」
「うん……。女なら、この際、誰でも構わないわ」

「ダメだサリ」
「え、」
「これは僕らだけの時間。僕たちの繋がりはわかるね?」
「はい……」
「そうだよ、それが大事なんですねえ」
「僕らと同じ人じゃなきゃ、この時間には誘えない。これは、僕達がやっと手にした、夢の実現なんだから」

       1


嘉喜遥香(かきはるか)が部室に到着したのは、午後の授業を終了としてから十分後の事であった。
 校舎の中は右も左もわからない。というには大袈裟であるが、遥香はまだ己が通うこの学校の事を半分も把握していなかった。生まれ育った大阪ならば、そんな事はないのであろうが、つい一年前に引っ越してきたこの東京では、学校に至っても、街に至っても、実に面識がない。親の都合で大阪の次に住み移った栃木県に別れを告げた後も尚、遥香は東京で地味な生活を送ってきていた。それが一年間滞在しても尚、この東京という土地に馴染めない説明になるだろう。
 一年前の夏、遥香は高校一年生の過程を続行中のまま、この東京の地に構える高校に転入してきた。そして、それから一年が経ち、この八月に、嘉喜遥香は十七歳の誕生日を迎えたのである。
 そして――いつものように訪れたこの科学室にて、今この瞬間を迎えているのである。
「あのぅ……、何でしょうか?」
 遥香が開いたドアは『科学室』のドアである。普段は授業などが行われている為、確かにそこは科学室で説明は足りているのであるが、この放課後の時間からは、そこは科学室ではなく、『科学部』の『部室』へと早変わりする。

 それは遥香が転校初日に間違えて入部した部である。科学部の勧誘に『かがく』と『かやく』の響きを取り間違え、『花火だ?』とわけのわからない事を口走りながら、遥香は入部している。
 しかし、今はそれどころではない。遥香が部室のドアを開いた時、遥香の眼の前に、この五人が並んで立っていたのだから。
 それは意外な人物達であった。
 一人はこの『科学部』の部長を務めている、部室で唯一の三年生、輝川星弘(てるかわほしゆき)であった。彼は部員達から慕われる性格で、実に三年生の鏡と評価できる落ち着いた秀才であった。部員達からは信頼の意を込めて『部長』と呼ばれている。
 そして、後の四人は簡単に説明する事が叶う。後の四人はこの『科学部』での実力者。つまり、寡黙(かもく)な部員達で占めるこの科学部で、実に発言回数の多い、態度の大きな四人なのである。
 氏名の紹介も実に簡単にいく。
「あ、驚かなくてもいいよぅ…あのう~、うん」
 まず、この男。遥香と同じ二年生部員である。園田(そのだ)とおる。別にこれといって名前に脂肪感はないが、彼は巨漢である。つまり、実に太っているのである。彼はいつも禁止されている食べ物を部室に持ち込んでおり、気がつけば大きな声で騒いでいる。その太い見た目から、彼は部員達から『フトル』と呼ばれていた。
「ぐふ。あのお~……、遥香君…、だったよね?」
「遥香君って…、お前変態かよデブ。タメ年なんだから嘉喜って言え」
 会話に割り込んできたこの男は、同じく二年生部員の、村瀬勝也(むらせかつや)。彼はやせ型のつり目で、いつもフトルと行動を共にしている。性格は強気であるが、それはこの『科学部』の中でだけである。彼はこの科学部では『村瀬』と呼ばれている。
「ああ、そんなに、別に驚かなくていいよ」
作品名:君に叱られた 作家名:タンポポ