自分じゃない感じ
「あれ猫の会議っていうんだよな? ついてったんだよ、昨日、お前の後。あんな遠くの空き地まで普段行ってるんだなー。猫の社会でも、人間関係が大事なのか? なあ、メス猫さんよー……。猫の社会って言っても、俺ら人間が勝手にお前らを猫って名前つけてるだけで、偉そうだよな。ごめんな。お前らの社会だって、たぶんちゃんとあって、もしかしたらその中では俺達が猫なのかもしんないしな? はっは」
メス猫は飛びあがってソファに乗り上がり、静かな動作で、上品に、得意の毛づくろいを始めた。煌めく毛並みがさらさらと、クーラーの風に美しく揺れた。
メス猫は、丁寧に、丁寧に、己の茶色で統一された毛並みを舐(な)めていく……。
朝樹もソファの前の床にあぐらをかき、座り込んだ。
朝樹は、メス猫に、ほとんど表情のないそのちんけな笑みを浮かべる。
「メス猫。こっちおいでぇ……ほら。ネス猫ちゃん、こっちおいでぇ~って………。んー。なんか、お前急に来なくなったな……。何でか知んねえけど、冷たくない? 今日のお前……」
朝樹は立ち上がり、ソファの正面で低く腰を落として、両手を開く。
「み~づ~き~~」
メス猫は、ソファをしなやかに飛び降りてから、ニャア――と、一回だけ朝樹を振り返ってから、大きなあくびをした後で、テーブルの下で丸くなった。
~完~
あとがき
作 タンポポ
(ネタバレが含まれています。先に本編の読書の方をお勧め致します)
山下美月さんが主人公の物語を書かせて頂きました。本来、超超短編小説を目指していますので、今回で一度原点回帰、という気持ちですね。小説を読むのが苦手だという方々にも、読みやすく最後まで楽しんで頂ける物語だと、私自身とても気に入っております。
このトリックを見破れた方はいらっやるでしょうか?見破れた方々はさすがです。書いていて、とても猫を触りたくなりました。私は犬派なのですが、次に猫が好きですね。鳥も同じぐらい好きです。うさぎも、金魚も、亀も好きですね。全て私が昔飼っていたペット達です。今でも愛していますとも。
今回の作品は、ペットとの愛情を、トリックとして制作した物語でした。
山下美月さんが、猫なんですよ? 向井葉月さんが、猫なんですよ? 超絶可愛すぎるじゃないですか。トリックを知った二度目からの読書では、それだけでも想像で楽しめる物語でした。
山下美月さんと向井葉月さんの物語は、また書きたいですね。今度は一体どんな物語になるか、楽しみにしていて下さい。実は、次の乃木坂短編小説の方も、もうすでに構想は終わっていて、後は文字に起こすのみとなっておりますので、お楽しみに。
また良き作品づくりをしていきたいと、心より思っております。では、また次の作品でお会い致しましょう。タンポポでした。
~完~