未来卵
脚本・原作・執筆・タンポポ
各所でかんぱい――という盛大な声が飛び交った。
「俺もう食っちゃってたんだけど、え、今かんぱい? したよねえ? あしてねんだ?」
設楽修(したらおさむ)氏は悪戯(いたずら)っ子のように笑った。
「でもほんとにさー、なんか、みんな卒業していくねー……」
日村勇紀(ひむらゆうき)氏は儚(はかな)い眼で囁(ささや)いた。
「最初っからうちらなんだかんだ言って絡(から)ませてねえ? 仕事させてもらってるから、なんか、もうそれこそさあ、公式お兄ちゃん、じゃなくて、お父さん、に近い感覚だよね?」
乃木坂工事中プロデューサー陣の堀江隆久氏と佐野弘明氏と長尾真氏と小谷中真実氏が笑い、スタッフ・チームも小さく笑っていた。
設楽修氏はにやけて言う。
「日村さん、おばあちゃんになっちゃうよねえ、このままだと。どうする?」
「うんいやいつ性転換すんだよ俺! …俺だぶんこのままいくよ、俺たぶんおじいちゃんになるよ」
今野義雄氏は、秋元康先生の座るテーブルへと席に着いた。
秋元安井先生は、にやけ、横目で今野義雄氏を一瞥する。
「良かったよ、挨拶」
今野義雄氏は笑みを浮かべた。
「聞いてない事を、やらせるんですからね、僕に。あいつらは……」
和田まあやは一期生の秋元真夏と齋藤飛鳥と樋口日奈達OGと記念写真を撮る――。
「写真撮っていいですか? あのう、一緒に、写ってもらっても、いいですかぁ?」
池田瑛紗(いけだてれさ)は上目遣いで、和田まあやに言った。
「うん撮ろ撮ろ」
「あのぅ、私も、いい、ですか? 写真……」
井上和(いのうえなぎ)は照れ臭そうに言った。
和田まあやはにやける。
「にゃんにゃんにゃぎ、てやってくれたらいいよ。んふふ」
井上和はぎゅ、と眼を瞑(つぶ)って微笑んでから、「にゃんにゃんにゃぎぃ…」と声を震わせて、頭の上に逆にしたピースサインを猫の耳に見立ててさし、ポーズしてみせた。
「あのう…、私も、…何かやった方がいいです、か?」
池田瑛紗は上目遣いで和田まあやを見つめる。
和田まあやは、一期生と元一期生達の方を見つめて、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ああ、まだまだ乃木坂は大丈夫だ。なんか安心したわ」
樋口日奈は言う。
「写真、ほら、撮ってあげないと。待ってんじゃん」
「あそか、忘れてた」
和田まあやは笑う。
秋元真夏は顕在的な笑みを浮かべて言う。
「え一瞬で忘れる? そんな事ってある?」
齋藤飛鳥はそっぽを向いて、小さなあくびをした。
「あっは、じゃあ……、何、うちが撮るの? え? 何誰が誰を撮るの?」
和田まあやはきょとん、と後輩に問いかけた後で、また抜群に明るい笑みを浮かべて大きく笑った。
「はーい撮るよーみんなーー、だ~~い好き‼‼」
二千二十二年十二月九日~完~