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恐竜の歩き方

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「大物の風格ありますね…、さっちゃーん!」比鐘蒼空は叫んだ。
「綺麗で可愛いわ」御輿咲希が言った。
「ね、可愛いのに、キレ~なお顔してるわよね。乃木坂よもう!」宮間兎亜はにんまり、と笑った。

 4期生――という文字が浮かぶ。
 賀喜遥香がセンターの『アイシー』が始まった――。『声に追わせてペンライト、振ってくださーい! まだまだ足りませ~ん! 神宮そんなもんじゃねえだろ、行くぞ~!』と賀喜遥香の全力の煽りで、会場中のオーディエンスがサイリュウムを振った。
 筒井あやめのセンター曲『ジャンピングジョーカーフラッシュ』が始まった――。可愛すぎる大天使達のダンスパフォーマンスは、万人を魅了するだろう。

「アイシーからジャンピングジョーカーまでの流れがヤバすぎるっ‼」風秋夕は大興奮する。
「いやダンスも可愛すぎんだろうがっ‼」磯野波平は驚いている。
「いやー、見とれてしまうところだね、本来なら」稲見瓶はサイリュウムを振る。「あやめーーん‼」
「あやめちゃん凄いでござる可愛すぎるセンターでござるうぅーっ‼」姫野あたるは興奮を隠せずにいた。
「あやめちゃーーん!」比鐘蒼空は必死に叫んだ。
「あやめーーーんっ‼」来栖栗鼠は豪快に叫んだ。「伝われ僕の愛情――っ‼」
「あやめちゃんも、みんなも、やっべえなこりゃ!」天野川雅樂は、おどけてにやけた。
「あやめーーん‼」宮間兎亜は叫ぶ。
「あやめちゃーーん!」御輿咲希も大きく叫んだ。

 3期生――という文字が浮かぶ。
 岩本蓮加がセンターの『思い出ファースト』が始まる――。かつて、その楽曲は、12人で歌っていた。しかし、今は事新たに、これを11人で歌い上げる。歴史とはそうして造られていく思い出だ。それは振り向いた時に思い出せる奇跡の時間……。
 久保史緒里のセンター曲『僕が手を叩く方へ』が開始する――。しっとりと、着実に盛り上がっていく堅実な旋律は、サビの歌唱で炸裂する。君は一人じゃない、がんばれ……。
 涙しているメンバーもいた。その曲は、感動の結晶であった。

「泣くなっつうのが無理な話だぜ、だろぉ? お前ら」磯野波平は片腕で顔を隠しながら隣をチラ見する。
「泣くよそりゃ。普通に……」風秋夕は笑顔で涙をぬぐっていた。
「鼓舞してくれる、こんな時代にも、こんな歌があるなら、それはここにしかない」稲見瓶は親指で瞼の涙を払いながら言った。
「小生はその音を聞き逃さぬでござるっ、それは心に響く音色でござろう‼ っく」姫野あたるは泣き始める。
「なんか、姉弟か親友が一人増えたような、凄い曲だねえ雅樂さぁん!」来栖栗鼠は興奮していた。
「道に迷いそうなら…か」天野川雅樂は叫ぶ。「久保ちゃーーーっん‼」
「この曲、やっぱり、好きだな……」比鐘蒼空は呟いた。
「あーん久保ちゃーーんっ!」宮間兎亜は泣き出しそうに叫んだ。
「優しい歌ね……、本当に、辛い思いを持つ者にとって響きすぎますわ……」御輿咲希は、片手で眼を隠して泣いていた。

 1・2期生――という文字が浮かび上がる。
 齋藤飛鳥のセンターの『海流の島よ』が歌われる――。それは齋藤飛鳥、樋口日奈、和田まあやと、三人の歌声から始まり、秋元真夏と鈴木絢音を、宙に浮いた魚を操るパフォーマーに加え、勢いを増していく。最後には五人での歌唱であった。
 1・2期の威勢の良い『みんなのとこに~~、行っくよ~~!』から始まったのは『会いたかったかもしれない』である――。会場中に手を振るメンバー達。クジラのフロートカーに乗り込み、オーディエンスに向けてホースからの水を放出していく。
 『ロマンスのスタート』が始まった――。クジラやイルカのフロートカーに乗り込んだメンバー達。ステージでダンスパフォーマンスを披露するメンバー達。これをこの瞬間に初めて垣間見る者は、胸が張り裂けそうに熱く疼くだろう。それこそが、ロマンスのスタートである。『ここでみんなに飛鳥ちゃんからのプレゼントがありま~す! 君のハートにぃ?』齋藤飛鳥は顔をしかめ『えぇ! ……ずっきゅん!』と恋のピストルを撃ち抜いた。

「うあ‼ 撃たれた!」風秋夕は笑みを浮かべてはしゃぐ。
「胸にハート形の穴が開くね」稲見瓶は無表情で、左胸を押さえながら言った。
「撃ち返しちゃうぞ~、どっきゅん‼」磯野波平は奇妙な笑みで、誰もいない前列の客席に撃ち返した。
「飛鳥ちゃんやべえっすなー」天野川雅樂は照れていた。
「うん、やっぱり最強だよねー」来栖栗鼠は笑顔で言った。
「あーんあーん飛鳥ちゃ~ん可愛いわ~ん‼」宮間兎亜はにんまりと笑う。
「ファイナルだけあって、凄いのね、今日もまた」御輿咲希は深呼吸を繰り返した。
「ロマンスがスタートするでござるふう~~!」姫野あたるは大喜びで叫んだ。
「………」比鐘蒼空は、巨大スクリーンの乃木坂46に釘付けであった。

 期別コーナーの紹介を、樋口日奈が担当する。
 川﨑桜は、昨日と一昨日が雨だったので、今日晴れてるのが、逆に緊張しています。と初々しく語った。続けて、川﨑桜は、笑顔を浮かべて、樋口日奈との『設定温度』が一番嬉しかったと語った。
 林瑠奈は、このツアーを通して、日奈さんと同じ曲がかぶったりとか、他にも真夏さんとか、先輩方と距離が縮まったんじゃないかと、嬉しそうに語った。
 向井葉月は、思い出ファーストについて、一番の思い出を思い浮かべながら歌おうよと、皆で話し合い、一番の思い出は今じゃないかという話になったと語り、今の自分があるのは、ここにいる五人の先輩のおかげであると、涙ながらに語った。
 樋口日奈は、後輩ちゃんは本当に頼もしいと語った。後輩ちゃんの事も、これからもずっと、応援してほしいと思いますと笑顔で語った。
 秋元真夏のセンターの『君の名は希望』が始まった――。それは1・2期生達が声を揃えて合唱する。10周年バースデイライブを行った事。そしてその最初の一歩が、この真夏の全国ツアー2022である事。話し合った結果、3期生4期生、5期生をもっと世に知ってほしい――。これからの乃木坂46を担う3期生、4期生、5期生をもっと沢山の方に知ってもらいたい――。
 まずは、秋元真夏が言う。『先日、私達は日産スタジアムで10周年のバースデイ・ライブをしました。そして今、11年目のスタートを切りました』
樋口日奈が言う。『乃木坂46は、これからも未来に向かって歩いていきます。10周年ライブを経て、メンバー全員で臨(のぞ)む最初の一歩が、この真夏の全国ツアー、2022でした』
鈴木絢音が言う。『今回、どんなツアーにするか、スタッフさんと話し合いました』
和田まあやが言う。『その中で、私達が出した答えは、これからの乃木坂46を担(にな)う、3期生4期生、そして5期生を、もっと沢山の方に知ってもらいたい。そう思いました』
作品名:恐竜の歩き方 作家名:タンポポ