ここにしかないもの
下がってと、強靭(きょうじん)な力で、警察官が飛鳥に光葉慎弥を見せないように引き離そうとする。
その手に噛み付いて、飛鳥はその救急車まで走った……。
「慎弥ぁっ、どうしたのっ、何で起きないのっ‼‼」
救命処置をされている光葉慎弥は、血塗れで、身動き一つ見せずに、担架の上に横たわったままだった。
眼を離せずに、震えている飛鳥の肩に、警察官が強く優しく、手を置いた。
「50メートル先で、君達を乗せていた車が大破しててね……、運転してたのは、運転代行の運転手で、間違いないかな?」
「慎弥は……、え。ねえ慎弥は……」
「君を守るようにして、彼はがんばったんだよ……。激突の数秒前に、道路の植木に、君と一緒にふき飛ばされてね……。彼は、君の彼氏で、間違いは無いね?」
飛鳥の脳裏に、愛しい声が蘇(よみがえ)ってくる……。
――愛してるよ……。心配すんな、俺が絶対守ってやるから。
「君は運が良かった、さ、彼と一緒に乗ってあげて」
警察官の優しい声が、耳を打った。
「運じゃない……、慎弥が………」
飛鳥は激しく脈を打つ心臓に、これが車の事故である事を徐々に察知(さっち)していく。
車の中での一連の時間が、その間もない記憶に蘇る……。光葉慎弥の表情や、言葉や、震えていた、耳を塞いだ両手や、運転手の可笑しな言動や挙動……。
次の瞬間に、飛鳥は、全てを理解した。
光葉慎弥は、自分を守って……。
「嫌ぁぁ………」
「ん?」
警察官は、飛鳥の事を見下ろす。飛鳥は両腕で己を抱きしめるようにして、子供のように声を出して泣いていた。
光葉慎弥を運び終えた救急車が、その後部扉を閉めた。
「嫌ぁぁ……、こんなの嫌だよぉ慎弥ぁぁ……、ごめんなさい、ごめんなさぁい……、う、うああ、うぅっ、………お願い、……死なないでぇ、」
泣いてばかりだな、飛鳥はさ……。
慎弥……。
もう、泣くなってば……。
そばにいてぇ……。ずっと、私のそばにいてよ……。
大丈夫、いつも、そばにいる……。
ガガ、ピーガガ……。
ええ、明治通り・都道305号で起きたスピード違反事故、ええ運転手重体、途中車外に放り出された男女は、男性即死、女性軽傷、ええ、繰り返します。明治通り・都道305号で起きたスピード違反事後、運転手、重体、ええ途中車外に吹き飛ばされた男女、男性、強く頭部を打って即死、女性、脚の擦り傷で軽傷……。
ガガ、ピーガガ……。
齋藤飛鳥・乃木坂46卒業SP企画『ここにしかないもの』
二部構成作・第二部~完~2023・1・9
あとがき
作 タンポポ
【二部構成作品の為、この作品のあとがきには第一部のネタバレが含まれています。第一部の『ここにはないもの』をお読み頂いてから、この作品、または、この作品のあとがきをお読み頂く事を強く推薦致します】
齋藤飛鳥さんの乃木坂46卒業、そして、これからの齋藤飛鳥さんの未来を祝して、この愛の物語を捧げたいと思います。タンポポは、この物語を愛の物語であり、それ以外の何物でもないと思っております。
この物語をお読み下さったクリエイターの皆様、どうか主題歌を作ってあげて下さい。二人の愛の為に。
何処かで必ず見つけてみせます。ギャラは発生致しませんが(笑)
愛より強い感情は無いと思うんですよね。私自身が、愛する事で人生を救われてきたましたので、確信しているんです。愛とは、本当に、数えきれないほどに様々な形があって、どれもが同じではないでしょう。何と言うか、口でうまく伝えられないからこそ、和あたしは物語を書くのですが、愛のある人生を生きていきたいですね。
私は様々な人々に支えられて生きています。おそらく、私の知らないところでも、私を支えてくれている敬愛しなくてはならぬ優しいそんな人達が沢山、大勢いるでしょう。
私はそういったように、生きているだけで、愛に包まれていると実感しています。そうして養った心や、傷ついた感情や、日々学び取る様々な感情を基礎にして、これからも物語を書き続けていくでしょう。
それは乃木坂46に感謝して、乃木坂46のOG達に感謝して、秋元康先生に感謝して、今野義雄様に感謝して、乃木坂46に携わる全てのスタッフ様達に感謝して、乃木坂46合同会社に感謝して、ここではあえて語れぬ愛するプロデューサー様に感謝して、多くの素晴らしきアーティスト達に感謝をして、私は書き続けていきます。
齋藤飛鳥さん、卒業おめでとうございます。心より、ありがとう、と、大好きです、の言葉を贈ります。先日、乃木坂46二代目キャプテンであり、最後の乃木坂46一期生である秋元真夏さんが卒業を発表されました。も、ダメ……。
でも生きていくのです。だからこそ、その活動に感謝して、賛美して、敬愛して、また一つと、物語を増やしていきたいと思います。
次の乃木坂短編作品は、構想が幾つかあり、どれからいこうか、検討中ですので、ここではタイトルの紹介を控えさせて頂きますね。
読者の皆様、心より、感謝致します。タンポポをきっかけに、乃木坂46のメンバー達に興味を持ってくれる人もいるかもしれない。そう信じ、これからも、精進してまいります。
それでは、また次の作品でお会い致しましょう。タンポポでした。
2023・1・9~完~