齋 藤 飛 鳥
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『ありがとうございました~』
「齋藤飛鳥さん一言お願いしま~す」
「はい、こんなに最高なしめくくりはないです本当に、見届けて下さってありがとうございました!」
そう微笑んでいた齋藤飛鳥は、魅力的な大人の姿をしていた。
いつか子供であった齋藤飛鳥は、もういない。その物語は、次の段階へと続くのだから。
風秋夕は、眼を閉じて、笑った。その頬から、ぽろっと涙がこぼれ落ちる……。
脚本・原作・執筆・タンポポ
稲見瓶は、風秋夕の肩に、腕を回した。
「不思議だね……、これで最後なんて…、きっと俺の脳はまだ、理解してないよ。夕は、できてそうだね」
風秋夕は、涙を指先でこすってにやける。
「『少女のみる夢』、憶えてるか?」
「……。飛鳥ちゃんと、みなみちゃん主演の……、うん。憶えてる」
「似たような体験した」
「え?」
風秋夕は心機一転、というふうに笑みを浮かべた。
「いい、また今度話すよ……。さあ、飛鳥ちゃんはしばらくここには来ないそうだ」
稲見瓶は、精一杯で、「そう」と頷いた。
磯野波平と姫野あたるは肩を組んで、『これから』を歌っている。
天野川雅樂と来栖栗鼠は、リクライニング・シートに座り込んだまま、まだ動けずにいた。
比鐘蒼空はリクライニング・シートから立ち上がり、ぺこり、と、紅白歌合戦の続く巨大スクリーンに、深い一礼をした。
駅前木葉は、御輿咲希と、齋藤飛鳥についての感謝の言葉を交わし合っている。
宮間兎亜は、震えるように、最初の寂しさを覚えた赤ん坊のように、嗚咽(おえつ)しながら、まだ泣いていた。
『あ、天野川雅樂(あまのがわがらく)です……。二十二歳、箱推しです……。あ………。磯野、てめえ……。乃木坂と一緒に何してやがる、殺すぞ……』
天野川雅樂は夢中で眼を瞑って、歯を食いしばって、涙と鼻水をを流していく。
『あ、来栖栗鼠(くるすりす)って言います。十九歳です。えっとぉ……基本箱推しですが、神推し、与田祐希さんと、筒井あやめさんです! うっわご本人達の前だよ!』
来栖栗鼠は、微笑みながら、泣いていた。
『宮間兎亜(みやまとあ)です。こう見えても二十歳、成人してます。うっわ……。箱推しだけど、神推しいます。齋藤飛鳥ちゃんでぇ~す!』
宮間兎亜は泣きじゃくる……。熱い感情が、次々に込み上げてきた。
『御輿咲希(みこしさき)と言います。年齢は二十一、基本的に乃木坂は箱推しですが、神推し、わたくしにもいます。神推し、美月ちゃん、まいやん、梅ちゃんです』
御輿咲希は、口元を押さえて、すすり泣く……。
『比鐘、蒼空です……。歳は、二十……。箱推し、です。……神推し、西野七瀬さん、と、松村沙友理さん、です……』
比鐘蒼空は、涙を浮かべながら、口をふんじばって、眼の前の景色を強く見つめる。
『飛鳥っちゃんじゃねえかあ~っ‼‼ うおぉ~いマジか嘘だろおいっ‼‼ お、俺波平ってんだ飛鳥ちゃん! けっ、結婚してくんねえかな!!』
『飛鳥ちゃん……、飛鳥ちゃん殿がっ、眼の前にいるでごぉ~ざぁぁ~るぅぅ~~‼‼ あ、あのう、しょ、小生は、姫野あたると申します、でござる。どうか、ダーリンと、そう呼んで下され! いや、そう言わずに! 呼んで下されぇ!!』
磯野波平と姫野あたるは、肩を組みながら情けない顔で号泣しながら、『これから』を大熱唱している。
『う、嘘では、ないのですね……。わ、私は、駅前と申します、初めまして、飛鳥ちゃんさん。駅前木葉です!』
駅前木葉は、浮かんだ涙をそのままに、耐えず「ありがとう」の言葉を繰り返す。
『稲見です……。イナッチと、呼ばれています。い、いやぁ、……。おほん、ずっと大ファンでした。…いや、これからも大ファンです。飛鳥ちゃん、本当に存在したんだね、多少だけどね、AIのCGなんじゃないかと疑いました。1回、ぶっていいですよ』
稲見瓶は唇を噛みしめる……。濡れたメガネを手に持って、稲見瓶は上を向いて、その眼を強く閉じた……。
『これが、乃木坂46ファン同盟……はは。俺の事は憶えてます? ……そう、風秋夕、夕でいい――。飛鳥ちゃん、ようこそ、リリィ・アースへ!』
風秋夕は、強く強く眼を閉じても、なおも溢れてくる涙をそのままに……、小さな、笑みを浮かべた。
地下二階の広大なエントランスフロアを見渡していた齋藤飛鳥は、乃木坂46ファン同盟と説明された五人を上目遣いで見つめる。
齋藤飛鳥は、そのつんとした表情を、弱く苦笑させた。
『ども………、齋藤飛鳥です』――。
2023・1・16~END~