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にゃんこなキミと、ワンコなおまえ3

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「義勇、下がっていてくれ」
「おい、義勇。おまえも強いだろ。杏寿郎の影に隠れているだけのなよっちい奴かと思いきや、おもしろい。おまえもやろう。杏寿郎と二人がかりだっていい。楽しもう!」
「いいかげんにしろっ、猗窩座! 一緒に行くのが嫌なら帰ろう! 他人に迷惑をかけるな!」
「貴様が軽々しく義勇と呼ぶな! だいたいなぜ義勇の名を知っている!」
「おまえが言ったせいだろうが。それより、予約の時間に間に合わなくなるぞ、いいのか? 俺は喧嘩なんかしない。せっかく来たのに帰ることはないだろう? それを放置されても困るが」
「すまん! それはともかく、一緒くたに返事するのはやめてくれ! 混乱するんだがっ!?」

 一斉に湧き上がった喧騒には似つかわしくない義勇のどこかおっとりとした返答で、なんだか緊迫感が薄れた気がする。というか、気が抜ける。こういうところだって大好きだけれども、この場では正直勘弁してほしい。

 だが、膠着状態から抜け出せたのは確かだ。猗窩座の空気が変わった。
 不意に力が抜けたのに気づき、杏寿郎も慎重に手をゆるめる。
「ふん。やる気が失せた。邪魔が入らないときに改めてやろう、杏寿郎、義勇」
 腕の調子を確かめてでもいるのか手をブラブラと振る猗窩座に、ダメージは見えない。ニヤリと笑う顔も変わらず不敵そのもので、不穏な言葉を言い放つなり振り返りもせずさっさと歩いていく。
「義勇と呼ぶな!」
「おまえもいいかげんにしろ、バカ犬」
 ゴツンと頭に落とされたゲンコツに、うぐっと杏寿郎が首をすくめる横を、狛治と恋雪があわただしく駆けていった。
「あの、すみませんでしたっ。猗窩座さん、待ってっ」
「今日はバイクじゃないんだから一人じゃ帰れないだろうが! 勝手に行動するな!」
 バタバタと駆けていく二人をなんとはなし無言で見送り、杏寿郎は、小さく喉を鳴らすとそろりと義勇をうかがい見た。
「あの、義勇……」
「予約」
 このまま帰ると言い出されたらどうしようと、ちょっとばかりビクビクしつつ呼びかけた杏寿郎に、義勇が返してきたのは簡潔な一言だ。
 ん? と首をかしげれば、フゥっとため息をついた義勇は無表情のまま、それでもわずかに目元を和らげてくれた。
「早く行かないと予約の時間になるぞ」
「あ、うむ! 急ごう!」
 ホッとして思わず笑った杏寿郎の額を、ピンッとおまけのように指で弾いて、義勇の顔にようやく苦笑が浮かぶ。

 なんだかとんでもないことになりかけたけれども、義勇が帰ると言わずにいてくれてよかった。走り出すと同時に差し出した手を迷わずつかんでくれた義勇に、杏寿郎の安堵が深まる。
「変な奴だったなっ!」
「今日のところはしかたなかったとはいえ、万が一また出くわしても、相手をするなよ?」
 義勇に言い聞かされずとも、二度と逢いたくない。だが、もしも万が一が起きたら……うん、考えるのはやめておこう。なんだか嫌な予感しかしない。

 なにはともあれ。クリスマスイブは、これからが本番だ。夜はこれからなのだから。
 多少ケチはついたが、さぁ、ここからが勝負だ。春からの同棲生活のためにも、仕切り直しといくとしよう。
 義勇へと向ける杏寿郎の笑顔には、暗い陰りなどもうどこにもなかった。