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にゃんこなキミと、ワンコなおまえ4-1

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 大学生には敷居が高い借り物の車は、村田曰く、親父がおふくろに土下座して買った一世一代の買い物だそうで。傷一つつけるのも怖いとためらいつつも、ナンバーに背を押され思い切って借りたシロモノだ。杏寿郎の名を冠した車なら、事故からだって守ってくれそうだなんて、そんな言い訳を自分にしながら。

「……我慢なんか、しなくて、いい」

 だって、今宵はクリスマスだ。世間には、甘い夜に溺れる恋人たちがあふれかえっているに違いない。自分と杏寿郎だって恋人なんだから、こんな夜に我慢する必要なんて、ないはずだ。
 だってお互いにあるのは、単なる性欲なんかじゃない。恋なのだ。愛おしさだ。
 ゴクリと喉を鳴らす音に誘われて、思わず横目で視線を投げる。ドクンと鼓動が跳ねた。熱をはらんだ瞳が、射抜くように義勇を見つめていた。

 狭い四畳半の部屋でオレンジの光を背に見下ろしてくるときと同じ色と熱を瞳に浮かべ、杏寿郎が見つめている。それだけでずくりと腹の奥がうずき、義勇の足は萎えそうになった。ハンドルへと戻した手だって、隠しようなく震えてしまう。

 愛らしくて小柄な女の子なら、こんなやりとりもさまにもなるだろうが、自分はそれなりに体格もいい愛想なしの男だ。やわらかな胸や尻もないし、腕にすっぽりとおさまる華奢な体なんてしていない。甘えるように手を握られたところで誰だってうれしくもないだろうし、むしろ気持ち悪いからやめろと振り払われそうだと、頭の片隅でかすかに義勇は苦笑する。
 同性への性的指向がなくとも、性欲だけで同じ男に劣情をもよおす者が世の中にはいると、義勇は知っている。気に食わない。そんな身勝手な言葉一つで、屈辱と痛みを与えるためだけに同性相手に性的な暴力を加えることが、ある種の男たちにはできるのだということも。
 けれどもそんな奴らだって、こんなふうに男に甘えかかられれば、そろって嫌悪の色を浮かべるに違いない。今二人のあいだにある、つながりあっている想いなど、そこにはないから。杏寿郎とは、ぜんぜん違う。
 見つめてくる瞳の奥に浮かぶ燃えあがるような熱は、義勇のなかにあるものと同じだ。お互いの劣情は、肉欲よりも熱く深い恋情がもたらすものだと、義勇はもう知っている。
 世界でただ一人、義勇だけが知っている、杏寿郎のその熱。
 だから、強すぎる視線に震える足は、恐怖ではなく期待だ。
 
 部屋に入ったら、そうしたら……どうなるんだろう。
 時刻は十時半を過ぎた。チェックアウトまでは半日ほどもあるに違いない。それでも愛しあうにはきっと足りない。
 杏寿郎も絶対に、同じことを思っている。だから、怖くなんてない。つながっているから、想いは同じだけ高まってる。