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「ん、というか…なんで俺の出生日なんて知ってるんですか?訊かれたことありました?」

「いや、ないよ」

悪びれもなく、即答。

「……」

「うん?」

まあ、お抱えの忍軍団もいるようだし、そこは問い詰めたところでのらりくらりと躱されるだけだろう。
農民の出ならともかく、曲がりなりにも武家の出身なので探せば記録くらい残されている可能性は高い。

そんなこちらの胸中など構わず、宗矩はご機嫌な様子で訊ねてくる。

「今の反応を見るに、祝いの言葉は拙者が一番かな?」

「そうですけど……嬉しそうですね」

「だって島殿、人気者じゃない。お宅の一番とるのって、どんな分野だろうと大変なんだよ?」

苦労を知らないのは当人だけなんだからなどと嘆息混じりにぼやきつつも、やはり宗矩は普段よりも機嫌がいい。
まるで童のような楽しそうな表情に、左近も苦笑してしまう。

「で?飯でも奢ってくれるんですか?」

「うん。何がいい?」

「そうですねー…いつ死ぬともわかりませんし、身体に悪いものにしましょうか」

「はっはっは、お宅のそういう考え方、好きだなァ」

豪快に笑いながら自然な動きでこちらの肩にまわされる腕を、ぺしりとはたいた。

「往来です」

「ケチなんだから…」

減るものでもなし、と拗ねたように唇を尖らせ、払われた手を後頭部で組み合わせる宗矩。

遠路はるばるやってきて袖にされたのでは、さすがに可哀想だろうか…
少し考え、左近は口をひらいた。

「じゃあ甘味にしましょう。特製のあんみつなんてどうです?」

「いいねェ、拙者も食べよっと」

「そのあとは煎餅でお願いします」

「喜んで」

城下の人混みを縫い歩きながら、穏やかな応酬を交わす。

来年生きているかも怪しいが、きっとその前に敵対することになる。
そうなればこんな風に顔を合わせることもできなくなるし、これが最後のひと時となるかもしれない。

そんな詮無いことを思ったからだろうか。
頭で考えるより先に、口が動いていた。


「柳生さんの誕生日は?」

「ーー……、」


意外そうに、垂れ目がちな双眸がこちらを見下ろしてくる。
我ながら似合わないことを訊いてしまったとはっとするが、出てしまったものは引っ込めようもない。

口角を上げ、強引に進めた。

「俺だけ知らないのは不公平でしょう?」

「うーん……内緒」

「え?」

予想に反した切り返しに、思わず長身の相手を見上げる。
柔らかな眼差しに、視線が絡め取られた。

「だって、忘れられたら悲しいでしょ?島殿も興味持って探ってよ、宗矩さんのこと」

「ーー……。」

不覚にも、ちょっとだけときめいてしまった。
決して表には出さないが。

なんだか悔しい気がして、強気に笑ってみせる。

「…いいんですか?余計なことまで調べるかもしれませんよ?」

「お宅になら何を知られても構わないさ」

……おかしい。
柳生さんが落ち着いた魅力的な男として隣にいる。

どんな反応をしたらいいのかわからず、左近は口を噤んで視線を落とした。
ここで茶化すように下世話な話をしてきたり、腹の虫を鳴らしてみたりするのが彼だというのに……どうにも居心地が悪い。

自分たちの関係には、線が引かれている。
その線の先に幸せな未来なんてものが存在しないことは、互いに承知済みだ。

足を止め、左近はぽつりと呟いた。

「……らしくないですね、柳生さん。」

「うん?」

一歩先で同じく立ち止まり、宗矩が振り返る。
目を合わせないまま、口をひらいた。


「距離を……見誤ってますよ」


そう言った刹那、影が降りてきて唇を塞がれた。
触れるだけの、優しい口付け。

「本当だね。」

ふわりと彼の匂いだけを残して、身体はすぐに離れていく。

「ねェ島殿、歳を重ねていくと、距離感って狂うらしいよ。島殿はどう?」

にこりと人好きのする微笑を浮かべる宗矩。

流されてしまうことができれば、どんなに楽だろう。
胸中で自嘲し、左近は顔を上げて小さく笑い返した。

「…失礼な御仁だ。どれほど歳をとっても、適切な距離は心得ていますよ」

「ーーそれは重畳」

鷹揚に頷き返す宗矩の表情はわからないが、左近は構わず歩みを進めた。

「向こうの通りに甘味処があるんです。行きましょう」

相変わらず、靡かないねェ。
後方から、そんなぼやきが微かに聞こえたような気がした。

fin.
作品名: 作家名:緋鴉