トキトキメキメキ
「銃口から出せるサイズのね! 光の速さで発射しよう~って念じてたら、ほんとにそうなった、あはは、運よ」
――●▲■蓮加君、もしかしたら、君はもう一度……。いや、今はいい、何でもない。記憶はこちらが回収するから、今のうちに聞きたい事とうあれば、聞いておくといいよ。R18以外の質問には答えよう■▲●――
蓮加は肌寒い北風に一瞬だけ身震いをみせてから、とぼとぼと濡れたアスファルトを歩き始める。
「二時間経ったら、どうなんの?」
――●▲■ヒーローになる契約の瞬間から始まる、悪と闘った真実の記憶が、全て消えるよ。あの世界で起こった事も、この今の出来事も、全ては救いの主、神や仏といった大いなる存在だけのものへと変わる■▲●――
「記憶は神様のものってこと? あま、いいやどうでも。みんな、どうなった?」
――●▲■うん。無事にそれぞれの時代に帰還できたみたいだ。みんな、泣いたり笑ったりしてるよ■▲●――
「ふうん、あっそ……。ねえ、蓮加さあ……。プリキュアみたいだった? は? え……、いやいや、プリキュアって……、はあ?」
雲中の水蒸気が昇華してできた氷の結晶が集まって、ぼたん雪は粉雪やみぞれに変化しては地上に降雪していく。それらが地面に堆積(たいせき)していき、地上には白い景色が積雪していく。
――●▲■二時間の間に、君の頭脳と記憶は元の小学二年生のモノへと戻っていく……。もうそろそろ、本当のお別れのようだ、蓮加君■▲●――
「みんなとは本当にまた何処かで出逢えるの!? 早く、蓮加が蓮加でいられるうちに答えて!!」
蓮加は険しい表情で降雪する路上に佇み、雪の交差する頭上を見上げた。
――●▲■いつの日か、きっと、出逢えるとも■▲●――
「………、さみ」
蓮加は歩き始めた。スカートのポケットに手を突っ込み、脚元の積雪を引きずるようにして遊んで歩いた。
「ダンス、めんど……」
――●▲■ありがとう、蓮加君……。夢見るヒーロー……。君はね、将来の夢の為に、驚異的な悪と闘ってみせた、立派なヒーローだ。例え記憶には残らずとも、僕らの記録には残るし、夢にも反映される。君が勝ち取った未来が待ってるよ。じゃあね、蓮加君。ありがとう、マイヒーロー■▲●――
岩本蓮加は雪景色の中、自宅の門の前で己の帰宅を待ち構えていた母親の姿を発見すると、すぐに白い景色の中、純白の靄を幾つも吹き上げながら、元気いっぱいに走り出した。
胸をはれ、僕のヒーローたち……――。
走りながら、息を切らしながら、蓮加は、後ろを振り返る――。
蓮加の背後には、くっきりと、蓮加の創り出してきた足跡が残っていた。
「おかえり! 雪だね」
「うんちょーさみ‼」
「お腹すいた?」
「うん!」
「今日は残しちゃダメよ?」
「今日は残さない大丈夫。あでも残したらあ……、その残したやつ、明日ちゃんと食べる」
「明日は明日のご飯があります!」
「はーい。ただいま~~‼‼」
「おかえり~」
胸をはれ、僕のヒーローたち……――。
「ママなんか言った?」
「うん」
「何?」
「おかえりなさい、て言ったんだよ」
「ただいまあ‼‼」
降雪が堆積した地上には、明日には幾つもの雪だるまが作られるだろう。小さな雪だるま、大きな雪だるま、様々な形をしたものが生まれていく。子供も作るだろうし、大人だってそれを見て楽しむだろう。
初雪は、初めて夢を持った日の夜に似ている。それは、誰もが知っている期待が膨れ上がって仕方のない心の現象。子供も大人も夢を見る。いつだって――。
いつだって、この世界は子供達が守り、大人達が設計していく、夢という未来の結晶で出来ているのだから――。
蓮加は手洗いとうがいを済ませ、キッチンにて食事の支度を始めた母の背中を確認してから、ふと、リビングのベランダの景色を振り返った。
雪はゆっくりと舞い落ちていく。明日は、積もるかな――。そんな小さな期待を膨らませながら、蓮加は跳び込むようにして、ソファに腰を沈めた。
2023・5・19~END~
あとがき
作タンポポ
ヒーローという概念があります。その概念は、いつ頃から生み出された概念なのでしょうか。めんどいので調べません。しかし、一説によれば、ユング派深層心理学に置ける集合的無意識の顕在化であるとする説もありますね。神話の中に、すでにヒーローは存在しています。
もしかしたら、この物語の契約は実際のもので、本当に全人類は、幼少期の頃にヒーローとして未来の夢と引き換えに戦う戦士の時間を過ごしているのかもしれない。古代から受け継がれるヒーローという概念、それはDNAに刻み込まれた古からの記憶なのかもしれません。
タンポポです。はい、今回は乃木坂46三期生の物語、岩本蓮加さんを主人公に迎えた物語でした。これはシリーズですので、五期生ヴァージョンも早いうちに執筆致します。今年中には、おそらく乃木坂46五期生の夢の契約物語も誕生すると思いますので、そちらの方もご期待下さい。
岩本蓮加さん、超絶可愛く、美しく、そしてゲラで、クールですよね。そんな多種多様な魅力溢れる岩本蓮加さんに主人公を演じて頂きました。最高傑作……、間違いなし。
三期生の魅力がたっぷりと詰まった一作となってくれました。タンポポ自身も、心底気に入っております。タイトルが『トキトキメキメキ』に決定した理由がしっかりとある、あの最終章の方、好きですね。タンポポはとても好きです。フフフ。
色々とここでしゃべるとネタバレしそうですので、このシリーズ次回作の五期生の夢の契約の物語の話を、少しだけさせてもらいます。
主人公は小川彩さんと、井上和さんの二人です。タイトルは『絶望の一秒前』に今のところ仮決定させて頂いておりますが、変更も在り得ますので、容易に信じないで下さい(笑)
私のヒーローは言わずと知れたこの方々や、この方々の関係者様方ですが、あなたのヒーローは誰ですか? あなたには、ヒーローはいますか? いいえ、もしかしたら、あなたこそが、夢の為に戦ったヒーローなのかもしれません。
叶えたい夢は、ありますか? 私はとにかく、アイスコーヒーを飲みながら乃木坂46関係の動画を今すぐにでも観たいです。それも夢です。叶えていく夢。
小さな夢を繋げていき、大きな夢へと手を伸ばそうかな……。と、今し方考えているところですが、現在の私にとっての大きな夢とは、やはり乃木坂46の、いいえ、乃木坂46という一つの文化の、底の無い魅力を、乃木坂作家タンポポとして、これからも愛する読者の皆様へと伝えていく事だと確信しております。
秋元康先生、乃木坂46の皆様、OGの皆様、乃木坂46合同会社の皆様、ソニーミュージックエンタテイメントの皆様、キーホルダーの皆様、菊池友様、今野義雄様――。いつもいつも、至高であるエンタテイメントをありがとうございます。なるだけ邪魔をしないよう、お慕いしてまいりますので、どうか皆様の事を生涯好きでいさせて下さいませ。
クリエイターの皆様、いつも素敵な音楽をありがとうございます。