Without strength
(ノイトラ、さ、ま)
そうだ、立たなくては。自分で歩かないと。ノイトラ様のお手を煩わせる訳にはいかないのだから。
(ノイトラ、様)
動け、動け、動け!指一本で良い、今度こそ彼に差し出せる手を!
鮮血が咲いている。見慣れた姿が倒れ伏している。
ノイトラ様は動かない。吐息一つ、この耳には届かない。
(ノイトラ、様……すみませ、ん)
今、幸せですか? 戦いの中の死に、貴方は満足できましたか? 何処か痛くは無いですか?
僕は、こんな僕は最期まで貴方の従属官で居られましたか?
(ですが、あの時手を差し伸べた、のは……慈悲などでは、ありません……僕は、)
あの時対等になる道を選んでいれば、或いはこの結末を変えられただろうか。貴方は僕にほんの一時でも背中を預けてくれただろうか。
(せめて助け起こして差し上げたい、のに。指一本、さえ……無力で、申し訳ありま、せ……)
僕は貴方になりたかっただけ。足りないパーツだらけで、それでも同じスペックになりたかっただけ。
『逃げろテスラ!』
ありがとう。貴方は確かに、こんな僕を側に居させてくれた。
力も無い、ちっぽけな破面を。
作品名:Without strength 作家名:月辺流琉