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鈴木蓮一郎
鈴木蓮一郎
novelistID. 68389
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永遠につづくきせき (v1.1)

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 男は鉄男を見る。
男(服を汚しおって)
 ヒュガッ 男(鬼)の腕が触手のように変化して伸びる。その先端には刃が形成され、仁太郎を襲う。
仁「!?」
 仁太郎は芽衣子を抱えて回避する。
 仁太郎は鬼のいた廊下を見る。鬼はいなくなっている。
仁(今はそれよりも医者だ…!!)

〇海家・外観(夜)
 芽衣子をおんぶした仁太郎が裸足のまま飛び出す。

〇路上(夜)
仁「芽衣子」
仁「死ぬなよ」
仁「死ぬな」
仁「絶対助けてやるからな」
 疾走する仁太郎の背で次第に芽衣子が冷たくなっていく。
仁「死なせてたまるか」
仁「俺が絶対助けてやるからな!!」

〇診療所(夜)
 医者は首を横に振る。
仁「な、なんだよ…」
医「手の施しようがない」
医「この子の体からは かなりの量の血液が失われている」
仁「俺の血を全部使ってくれたって構わないんだ」
仁「芽衣子を」
仁「芽衣子を助けてくれ!!」
仁「先生!!」
仁「頼む!!」
 医者は困りはてる。

〇空き地(夕方)
 ドサッ 仁太郎が地面に倒れる。
 番長は拳を強く握り締める。
番「何だ、そのざまは!!」
番「今のお前なんざ、殴る価値もねえ!!」
 番長は去って行った。
仁(こんなんじゃ足りねえ)
仁(芽衣子や隈川が受けた痛みや苦しみは)
仁(こんなんじゃ全然足りねえんだ)
 仰向けになった仁太郎は無気力に夕焼けの空を見ている。
 しばらくして、宏が現れる。なぜかお面を着けている。
宏「仁太郎さん」
仁「その声は…宏か」
 仁太郎は起き上がる。背伸びをする。
仁「いい天気だったもんだから寝ちまったぜ…」
宏「ごめんなさい」
仁「?」
宏「俺達も鬼を滅殺したかったから」
仁「!?」
宏「『鍵』を開発したんですが」
仁「おまえ本当に宏か?」
宏「俺の名前は小鉄です」
小(宏)「どうか俺の話を聞いてください──」

〇路上(夜)
 仁太郎が歩いている。
 突然、
女「キャーッ!!」
 女性の悲鳴が聞こえる。
 仁太郎は悲鳴の聞こえた路地裏へ走る。

〇空き地(夕方)
小「──という訳なので、宏君の肉体を借りているだけなんです」
 地面には数式が書かれている。鍵継承者支援員規定17条に基づく“特殊な交渉術”で使ったものだ。
仁「今、お前が披露してくれた数学や物理学の知識は大学以上の水準だった。宏には知り得ないことだ。」
仁「だが、にわかには信じられないな。お前が別の世界の未来の人間だなんて」
小「仁太郎さんなら信じられるはずですよ。だって仁太郎さんには説明のつかない特別な力があるでしょう?」

〇路地裏(夜)
 鬼(雑魚鬼)は気を失っている女性を食べようと近付く。鬼は明らかに人間とは異なる姿をしている。
 仁太郎は2つの鉄塊(約600gx2)を取り出す。2つの鉄塊を合わせる。
 バチッ パリ… 錬成機能により、2つの鉄塊は融合する。一振りの日本刀に変化する。刃は漆黒。
鬼「なんだ、お前、それ。血鬼術みたいだな。人間なのに」

〇空き地(夕方)
小「仁太郎さんが武器を独力で作り出せるのは生まれつき『鍵』を継承しているからなんです」
仁「継承? 親父かおふくろからか?」
小「いいえ。別の世界のいつかの時代に生きていた人からです」
小「そこで役割を終えて解放された『鍵』を仁太郎さんは継承しました」
仁「鍵なんて持ってないぞ」
小「ええと、この時代の方には分かりにくいと思いますが、仁太郎さんの固有記憶にですね、データとして付帯していて目に見えるものではないんです」
仁(固有記憶が何か分からないが後で訊こう)
仁「(未来の専門用語は)よく分からんが、どうして俺が継承したんだ?」
小「仁太郎さんが適性のある固有記憶、肉体、頭脳の持ち主であることが理由の一つです」
小「俺達の『鍵』は ちゃんとした人にしか渡したくないですから」

〇路地裏(夜)
仁「お前は何人喰った。」
鬼「そうさなぁ。この女を食えば、80人になるか」
鬼「あの方のために、もっともっと喰って、もっともっと強くならねば」
仁「余所見をするな」
鬼「ああん?」
仁「俺を見ろ」
 鬼は仁太郎を先に仕留めるために向き直る。
 ヒヒッ
鬼「そんならお前(仁太郎)から先に喰ってやる。」
 ゴトン 鬼の頭が地面に落ちる。
鬼「!??」
 ボロォ… 鬼の体が崩れていく。
鬼「く、頸を斬られた!?」
鬼(速すぎる!!)

〇空き地(夕方)
小「“鬼”は特殊な器官を体内に持ち、その器官によって“コスモス”と繋がった人間です」
仁(コスモス? 一般の意味(宇宙)とは違うようだな。)
小「鬼である限り弱点の器官は例外なく脳に隣接しています。通常は専用の武器で頸を切断されるとその鬼はコスモスと正常な繋がりを保てなくなり消滅します」
小「ただ、1つだけ念頭に置いておいていただきたいことは、頸を切断しても油断してはいけないということ」
小「鬼によっては、弱点の器官を分散したり分体に紛れて本体を隠したりしている場合があります」

〇路地裏(夜)
 仁太郎はまるで殺虫剤をかけたゴキブリがきちんと死ぬのを確認するかのように、冷たい目で頸の切断された鬼を観察する。
鬼「あ、兄ちゃん……」
仁(走馬灯を見ているのだろうか)
鬼「ごめんよ。おいらが悪かったよ……」
鬼「待って……」
 鬼は手を伸ばす。

〇路上
 芽衣子(7)が仁太郎(11)の後を追いかける。
芽「仁太くん!」
芽「待ってー」
 仁太郎は芽衣子と手を繋ぐ。

〇路地裏(夜)
 仁太郎は鬼の手を握っている。
 鬼は安堵した表情で消滅する。
仁「…………」

〇空き地(夕方)
小「仁太郎さんの扱う武器は日本刀ですか?」
仁「ああ」
小「刀の使用感はいかがでしょうか?」
仁「凄くいいと思うぞ」
小「どこか改善してほしい所はありませんか?」
仁「何も問題ないぞ。扱いやすい」
仁「俺 べつに刀に詳しくねえんだけどよ。見事な刀になるんだ」
仁「鬼を退治しようと思って(錬成機能で)刀を作り出すと、あの形に落ち着くんだよな」
小(“鬼を退治しようと思って”ですね。)
 と、興味深そうに事実確認している。
小(戦おうとすれば自然と呼吸法を使うという先人の予想は的を射ていたんだ。)
小「ちゃんと錬成機能が使えることに気づいていただけていて安心しました。」
小「昨日の夕方の話の続きをしたいんですが、その前に何かご質問はありますか?」
仁「コスモスって何だ?」
小「コスモスとは大規模な仕組みのことです。」
小「2つのコスモスがあります。“ルーシー”と“幻想のコスモス”です。」
小「俺はルーシーと繋がっていますけど、鬼は幻想のコスモスと繋がっています」
 仁太郎が少し首をかしげる。
小「仁太郎さんもルーシーと繋がっていますよ。」
仁「俺も繋がっているのか。」
仁「鬼が繋がっている幻想のコスモスは誰が作ったんだ?」
小「わかりません。ルーシーは幻想のコスモスを観測して得られたデータをもとにして俺達、未来人が構築したコスモスですけど」
仁「固有記憶って何だ?」
小「その個体をその個体たらしめる必要最小限の記憶データと遺伝子データです」
仁「完全なデータではないんだな」