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鈴木蓮一郎
鈴木蓮一郎
novelistID. 68389
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永遠につづくきせき (v1.1)

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小「はい。一部の個人情報を削除するためでもあります」
小「例えば、公衆浴場に行った際の視覚記憶からは自分や他人の性器などの記憶が削除されます(女性の場合は乳房やボディラインなどの記憶も削除される)」
小「俺の担当教授は“記憶を全世界の人達に見てもらったと仮定したとき、照れるだけなら良いが恥ずかしいのは駄目だ”とおっしゃっていました」
小「原則として固有記憶にアクセスできるのは本人だけですが、大昔に発生した個人情報流出事故の名残で防護策がとられた状態になっています」
小「固有記憶はコスモスの記憶領域に保存されます。各個体ごとに専用のスロットが割り当てられています」
小「鬼が脳を破壊されたとき、必要な記憶を保ったまま脳が復元されるのも固有記憶のためです」
仁「そんじゃ、固有記憶を複製すると同じ人間がたくさんできるのか?」
小「それは大昔の実験で不可能であることが確認されています。(必要最小限でなく)完全なデータからなる固有記憶でさえも複製すると2人目以降では廃人になることが実証されています」
小「もちろん、当時もそんなキモい実験は法律で禁止されていたので、その実験をした科学者は裁きを受けましたけどね」
仁「機能している固有記憶には魂が付帯しているのか」
小「その仮説を支持する哲学者もいますね。仮説というか、“不滅の魂は存在するか”という問いは紀元前から考え続けられていることですよね」
仁(ああ、そうか。小鉄は科学者だから魂みたいなものは研究対象にしにくいんだな)
小「他にご質問はありますか?」
仁「ない。大丈夫だ」
小「では、昨日の夕方の話の続きを話させていただきます」
小「コスモスが提供する機能は一般向けの固有記憶だけではありません。悪鬼滅殺・防衛用途の『鍵』もそうです。」
小「『鍵』にはいくつか種類があります」
小「鬼を滅殺する武器を錬成機能により作り出せるということは仁太郎さんは鍛冶の鍵を継承している可能性がまず考えられます」
小「あるいは、鍛冶の鍵ではなく、上位の星の鍵である可能性もありますけど」
仁「ほし? 恒星?」
小「そうです」
小「星の鍵は1つしか存在せず、戦闘特化型で、錬成機能以外にもバランス良く複数の機能が備わっています」
小「たとえば治癒機能は傷をふさいで止血したり骨折を短時間で治したりできます」
小「また、鳩尾を突き刺されるような攻撃を受けても、緊急機能によって短時間なら戦い続けられるようになっています」
仁「まさに戦闘特化型だな」
小「攻撃は最大の防御にもなりますんで」
仁「たしかに」
小「星の鍵の治癒機能の性能では手足がちぎれるような重症を負ってしまったら自分では治せませんので、支援型の鍵継承者に治してもらう必要があります」
仁「えっ!? その支援型の『鍵』の治癒機能の性能だと、ちぎれた手足も治せるのか?」
小「はい。死んでいない限りは治せます。その場にいれば…」
小「あと、もちろん、鳩尾を突き刺され、緊急機能が有効になってしまったときも、機能が有効なうちに治してもらう必要があります…が…」
仁(でないと死ぬな)
 小鉄は言いにくそうに話す。
小「でも…すみません!」
小「本当は戦闘特化型と支援型の『鍵』はセットで運用するはずだったんですけど」
小「運用が計画通りに進まず、今となっては戦闘特化型と支援型が同じ世界にそろうことが保証できなくなっています」
小「仁太郎さんは間違いなく鍵継承者として相応しい人なんですが、こんなに接触が遅くなってしまって、本当に申し訳ありませんでした。」
小「同調機能によって別の宇宙での行動ができるようになったのは今回のケースが初めてだったんです。」
仁「ああ。同調機能というのはさっき数式を書いてくれたときに話していた試験運用中の機能だな。」
仁「さっきの数式っていや、お前が10歳だってのが信じられないぜ。」
仁「大学で学んだんだよな?」
小「大学を卒業しています」
仁(天才なんだな。小鉄は)
仁(小鉄の時代の日本には飛び級制度があるのか外国育ちなのか)
小「コスモスの記憶領域の容量は、過去に実施された拡張によって、天文学的なスロット数を確保するに至っています」
小「コスモスの各サービスを実現するためのエネルギーである『資源』は本来は充足していたのですが、」
小「後から追加された『鍵』を運用するには不十分でした。」
小「本当は星の鍵を量産できれば一番良かったんですが、より燃費のいい量産型の鍵で代替せざるをえなかった」
小「わかりやすく例えるなら、ガンダムを元にジムを量産したようなものです」
仁「???」
 ※この時代にはまだガンダムが登場していない
仁(きっと未来の科学の専門用語なんだろうな。さすが小鉄さん)
小「量産型の鍵で代替してもなお『鍵』の総数は宇宙の総数と比べたら十分ではありません」
小「申し上げにくいのですが、仁太郎さんのいるこの世界には仁太郎さん以外に鍵継承者がいません。」
仁(支援は期待できねえな。)
小「星の鍵のときも同様でした。記念すべき最初の鍵継承者がある宇宙の戦国時代に現れた後は量産型の鍵継承者ですら一向に現れなくなりました」
小「ただ、星の鍵継承者は眷属を残しました」
仁「眷属?」
小「星の鍵の力を分け与えられた人達とその師弟達や子孫達のことです」
仁「へー」
小「星の鍵の機能の1つである錬成機能を独立して使えるようにしたのが鍛冶の鍵です」
小「鍛冶の鍵に備わった錬成機能と星の鍵に備わった錬成機能は全く同じ性能なので、仁太郎さんがどっちの『鍵』を継承しているかは分からないです」
仁「そんな低確率なんじゃ星の鍵ではなさそうだな」
仁(第一、俺は錬成機能しか使えないんだからな)
小「少なくとも仁太郎さんは眷属ではなく鍵継承者なので眷属を増やせます」
仁「どうやって増やすんだ?」
小「仁太郎さんは錬成機能を使うときには独特の呼吸をしていると思いますが」
小「その呼吸法を可能な限り教えてあげればいいです」
小「呼吸は戦いに役立つだけでなく、『鍵』の機能のトリガーにもなっています。」
小「但し、眷属だと必ずといっていいほど性能が落ちてしまうので仁太郎さんのようには錬成機能が機能しないでしょう。刀を打つときに刀に力を込められるようになるだけでしょうね」
仁(鍛冶職人でないと眷属にしても意味ねえか)
小「先日、宏君が“キャッチボールしようね”と言っていた日に仁太郎さんが出会したのが鬼の始祖です」
仁「! おまえ 近くで奴を見ていたのか?」
小「はい…」
小「すみません。何もできなくて」
仁「しかたねえだろ。小鉄は科学者なんだから」
仁「それに、その体が宏から借りてるだけだってんなら、宏を死なせるわけにもいかねえ」
小(俺が近くの医者を呼びに走っている時に、仁太郎さんに一瞬で追い抜かれてしまっていた)
小(役に立てなかった…)
小「鬼の始祖を滅殺しなければ、この先も多くの人の命が奪われることになる…」
 ポン 仁太郎は小鉄の頭に手を置く。
仁「俺に任せておけ」
小「えっ?」
仁「鬼の始祖だか何だか知らねえが」
仁「この宿海 仁太郎様の手にかかりゃぁ、一捻りだぜ」