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【Buddy Daddies】1.FOR YOUR SMIL

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ミリのクリスマス会を無事に終えた3人が保育園から出てきた。
 「アンナちゃん、バイバ~イ」
 「ミリちゃんおやすみなさい」
 
  一騎と手をつないだまま振り返ったミリは、アンナ先生に挨拶をする。
 
  一騎と零は保育園の門にたたずむ人影を見つけ、身を固くして立ち止まった。
 周りの友達にも手を振ったり挨拶をしたりしながら歩いていたミリは、急に立ち止まった二人を不思議そうに見上げた。

 「久ちゃん……」
 
 門のところに立っていたのは久太郎だった。
 「え?久ちゃん?…… 久ちゃ~~ん!」
 前を向き、久太郎の姿を見つけたミリは、一騎のとつないでいた手を放して久太郎に駆け寄る。
 二人は慌てて手を伸ばしてミリを止めようとするが、怪我のせいで動きが遅れてしまう。

 「ミリ、こんばんは」
 久太郎は足元に駆け寄ってきたミリと視線を合わせるように上半身をかがめた。
 「こんばんは」
 ミリは満面の笑みを浮かべて挨拶をする。
 
 「久ちゃん、どうして…」ようやく門のところに来た一騎が固い表情のまま言う
 「立ち話もなんだから、車の中で話そう。ほら、乗れ」

 一騎と零は顔を見合わせるが、逆らうわけにもいかずに促されたまま、久太郎の車の後部座席に乗り込んだ。


 「ミリ、クリスマス会は楽しかった?」
 「うん!ミリいっぱいいっぱいお歌うたったよ」
 
 「そうか、それはよかったな。今日はクリスマスだから、俺からもミリにクリスマスプレゼントをあげよう。これからドライブに行くぞ!」
 「え!ホント?! ミリ、ドライブ行く行く!!」
 「ド、ドライブって……」
  久太郎は何か言いたげな一騎を、バックミラー越しに目で制すると、 
 「ところでお腹すいてないか?ミリ。サンドイッチがあるけど食べるか?」
 久太郎は助手席から白い箱をミリの膝の上にのせる。ミリが箱を開けると、サンドイッチとフライドチキンが入っていた。
 「わぁ~。食べていいの?  いっただきまぁ~す!ミリ、タマゴのサンドイッチ大好き~!」
 ミリはもぐもぐとご機嫌でう~ん、おいしい~!と、サンドイッチを頬張った。


 
 「ほら、ミリ。ここに横になっていいから」
 お腹がいっぱいになり、車の揺れも手伝ってコックリコックリと舟をこぎだしたミリの頭を、一騎はそっと膝の上に載せて寝かしつけた。

 「ミリは寝たか?」
 バックミラー越しに久太郎が尋ねる。
 「ああ、今日はいろいろあったから疲れたんだろう」
 ミリの頭を優しく撫でながら一騎がいうと、
 「ドライブってどこに向かっているんだ?」
 硬い表情のまま零が訪ねた。

 「とりあえず病院に行くぞ」
 「病院?」
 「ああ。俺の古くから知り合いで、口は悪いが軍医上がりで腕がいいやつだ。
 安心しろ、組織とは無縁の男だ」
 信じてもいいのだろうかと一騎と零は顔を見合わせる。

 「それで、お前たちはしばらくそこに入院しろ!」
 「え?入院!!?」
 「当たり前だろ? お前ら少し腕が鈍ったんじゃないか?そんなに派手に怪我しやがって。
  その怪我じゃどんなに腕のいい医者にかかったとしても、しばらくは高熱がでるぞ!
  その間ミリはどうするんだ?まさかこんな小さな子に看病させるつもりか?」
 「そんなつもりは……」
 「悪いことは言わない、俺の言うとおりにしろ。病院の近くにホテルを抑えてあるから、ミリはお前たちが入院している間俺が面倒みてやる」
 「え?そんな迷惑かけられないよ」
 「いまさらだろそんなの。それとも、こんな小さな子に心配かけてでも意地を張るつもりか?
  ミリを育てていくって決めたんだろ?まだ先は長いんだ。お前ら二人だけで解決できなことだっていくらでも出てくるだろ?誰かに頼ることを覚えおいてもいいんじゃないか?」
 「久ちゃん、なにからなにまですまない」
 「そのかわり、入院している間にこれからのことを話し合って決めろ」
 「わかった」
 「ミリを預かってからお前ら変わったからな。お前たちのままごとにちょっと付き合ってみてもいいかなと思っただけだ、気にするな」
 車は市街地を離れて山の中を走りぬけて行った。



 かなり古びた建物の前で車が止まると、扉からクマのような風体の男が出てきた。
 「急に悪いな」
 「お前からの話で急じゃなかったことなんてないだろ!」
 「まあな」
  
 車から降りた一騎は、後部座席をのぞき込み。ミリの体をそっとゆすって起こした。
 「ミリ? ミ~リ。ついたぞ!」 
 「ん?カズパパ?」
  ミリは眠さに勝てないらしい。目をこすってようやく片目を薄くあけると目の前に、少し困ったような顔をした一騎が見えた。
 「ミリ……、ごめんな。あのな、ミリ、パパ達急に仕事に行かなくちゃいけなくなって……」
 「うん?パパ達お仕事に行くの? うん。わかった。いってらっしゃーい、早く帰ってきてね……zzzz」
 一騎は、眠くてゆらゆらしているミリを抱きしめる。
 「ミリ、行って来るな。いい子で待っててくれ」

 次に反対側から零がミリに声をかけた。
 「ミリ、行ってくる。すぐ帰ってくるから……」
 「うん。零パパいって…らっ…しゃい」ミリは目も開いていないのに、すっと手を伸ばして零の首に抱きつく。
 「チュッ」
  零は、ミリのほっぺたに軽くキスを落とした。
 「えへへ…」ミリは照れたようにキスをされたほうに軽く首をかしげたまま、幸せそうな笑顔で眠りに
  ついてしまった。零はそっとミリの体を後部座席に横たわらせて、コートを布団変わりにかけてやった。
 「「久ちゃん、よろしくお願いします」」
 「ああ、任せておけ。早く治して来い」




  翌朝、ミリは見たことのない部屋で目を覚ました。
 近くの椅子にはコーヒーを飲む久太郎の姿あった。
 「久ちゃん、おはざます(おはようございます のつもり)」
 「ミリ、おはよう」
 
 ミリは部屋の中をキョロキョロと見回す。
 「あれ?カズパパとレイパパは?」
 「覚えてないか?昨日急に仕事が入ったんだ」
  ミリは、うーんと顎に人差し指をあてて、上のほうをみる。昨夜のことを思い出しているのだろう。
 「あ、そうだった。うん。パパ達お仕事に行くって言ってた!」
 たいして騒ぎもしないミリの様子を見て、久太郎が尋ねた。
 「パパ達が仕事でいなくてミリは平気なのか?」
 「うーん。平気じゃないけどぉ。あのね、アンナちゃんが言ってた。パパ達は、ミリ達のご飯や
 お洋服を買ったりできるようにするためにお仕事に行って頑張っているんだから、ミリ達もがんばろうねって」
 「ほぉ」
 「それにね、カズパパもレイパパもお迎えに来るときに、いっつも走ってきてくれて『ミリごめんな
  待ったか?』って言って抱っこしてくれるんだ。だからミリがんばるの」
 「そうか、二人はいいパパなんだな」
 「うん。ミリ、パパ達だぁーい好き」
 


 食事を終えた久太郎とミリは、街へ買い物に出かけた。組織の目を避けて保育園から直接来てしまったので、ミリの着替え等を買いに来たのだ。