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【Buddy Daddies】1.FOR YOUR SMIL

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 服やお絵描き用の道具やおもちゃを買ってもらってご機嫌のミリは、久太郎と手をつないで見慣れない街をキョロキョロと見まわしながら歩いている。
 商店街はどこもクリスマスの派手な飾りつけをされている。
 ふとある店の前で足を止めるミリ。
 「ん?どうしたミリ」
 「ううん」
 「なんか欲しいものでもあるのか?」
 「ううん……久ちゃん、お部屋に帰ってもいい?」
 「結構歩いたから疲れたのか」
 「うん……」
 来た道を引き返してホテルに向かうが、ミリは急いで帰りたいらしく久太郎の手を引っ張るようにして歩いていく。

 ホテルの部屋につくと、ミリは急いでテレビをつけてチャンネルをいじっている。
 (なんだみたいアニメがあったのか)
 ミリの脱ぎ散らかしたコートを片付けながら久太郎がみると、ミリはお笑い番組の画面を端から端まで食い入るように観ていた。
 「ほらミリ、そんなに近くで観たら目を悪くするぞ」
 テレビに張り付いていたミリを引きはがして少し離れたソファーに座らせるが、ミリはそこから降りてソファーの前の床に四つん這いになって乗り出してテレビの画面を観ていた。
 「ん?ミリはお笑い番組が好きなのか」
 「パパを探してるの」
 「パパ?」
 「カズパパはお笑い芸人でしょ?テレビに映ってるかもしれないから探してるの」
 「え?……」
 そういえば、以前預かった時にミリに一騎はお笑い芸人をやっていて、零は石油王なんだと言ったことを思い出した。
 (そういうことか)
 街の電気屋の店頭のテレビでお笑い番組をやっているのを見て、もしかしたら一騎が出演しているじゃないかと思ったのだろう、だから急いで帰りたがったのか。
 こんなに懐かれていれば、あいつらも可愛がるはずだ。
 (早く治って帰ってこい)と病院のベッドで唸っているだろう二人に心の中で声をかけた。



「え?ミリがそんなこと……」電話の向こうで一騎がグッと言葉を詰まらせ、
 「そっか、すごいなミリ」零がしみじと言う。
「無理をしろとは言わないが、お姫様をあんまり待たせると俺がもらうぞ」
  ミリが寝付いてから、久太郎が二人に電話を掛けたのだ。

 それから数日後、二人は無事にホテルに合流した。

 「パパ達おかえりなさ~い」
 ホテルの部屋のドアを開けると、二人に気が付いたミリが駆け出して一騎に飛びついた。
 無理やり退院してきた一騎は痛みをこらえて「イッ」っと声を漏らしてふらつき、
 後から慌てて零がささえた。
 それでも、久しぶりに見るミリの笑顔は、その痛みを吹き飛ばすほどの威力があった。

 「ミリいい子にしてたよ!」
 「そうらしいな」零がぎこちない手つきでミリの頭をなでる。
 「ミリね、一生懸命テレビでカズパパのことも探したんだよ」
 「ミリ、一騎はあんまり売れてないからテレビには映ってないって言っただろ」
 久太郎が笑いをこらえながらいう。
 「そっか~。ミリごめんな、今回はテレビのお仕事じゃなかったんだよ~」
  と一騎がへへへとばつが悪そうに笑った。
 
 これから少しづつでもこんな笑顔が当たり前の日常になるように、守っていかないとと二人は誓った。




 「じゃあお買い物行ってきま~す!」
 「行ってきます」
 街を案内すると言ってきかないミリに、足を撃たれた一騎は(まだ少し足を引きずっているので)、
 久ちゃんと話があるのでお留守番ということで、零が付き合うことになり二人が出かけていった。
 
 
 「それで、どうすることにしたんだ」
 「俺にできることって言ったら料理ぐらいだから、飲食店をやろうと思うんだ。
  手続きとかもいろいろあるだろうし、最初からうまくとは思っていない。
  でもあと1年もしたら、ミリも小学校だろう。店の2階に自宅があれば、ミリとも長い時間一緒にいてやれるし」
 「そっか、そうかもな」
 「久ちゃんにはいろいろ教えてもらわなきゃなんだけど。よろしくお願いします」
 「わかった。で、場所はどうするんだ?」
 「いや、まだそこまでは。これから探そうと思ってる」
 「そっか、じゃあ俺も知り合いに当たってみる」
 「で。あの、組織のほうはその後……」
 「今のところ目立った動きはないようだ。もう少し様子を見てからマンションに帰ることになるかもしれないな」
 「そうだよな。今は年末だから保育園も休みだし、ちょうどいいかもしれない」
 「俺も、年末は店を休みにするつもりだったから、もう少し付き合ってやるよ」
 「悪いな久ちゃん」
 「いまさらだろ」


 

 それから小一時間ほどしてミリは、目をキラキラさせて帰ってきた。

 「あのね、海が見えたんだよ。すごく大きくてキラキラしてた」
 「え?海の方まで降りて行ったのか?」
 「いや、坂の途中で下の方に見えたんだ。ちょうど光が当たってキラキラしてて、あれ何?って聞くから「たぶん海」って」 
 「ミリ、海好きか?」 
 「うん、キラキラしててキレイだった!でも、ミリ行ったことない」 
 「俺もないかも?」と零。「まじか?」と久太郎が唖然とする。
 「え?じゃあ今度行ってみようか?」 
 「ホント?」
 「ああ、ほんとだ」 
 「やった!う~み、う~み、キッラキラ」ミリは勝手な曲をつけて、踊りながらはしゃぎ始める。 
 「なあ、なんかミリ勘違いしてないか?」困惑顔の零に。 
 「いいだろ、行ったことないんだったら今度行けばわかるよ。
  これから俺達も、してもらってないことややって欲しかったたこととかを、ミリと一緒にやっていけばいいんだよ」 
 「そっか、そうだな」
 
 
 
 
 「ミリ、もうすぐ海が見えてくるぞ~」
  海沿いに車を走らせる一騎が声をかける。
 「え、どこどこ?」
 「多分あっち」と零が指をさした方向をミリが見ると、防風林が切れ広い砂浜と海が広がっていた。
 「うわぁ~~。すごいひろーい。海だ~~!」
 後部座席の窓から身を乗り出しそうにして海を見るミリを、零が慌てて引き戻す。

 「ミリ、顔出したら危ない!」 
 昨日までの雨が嘘のような、どこまでも続く青空とその下に広がるブルーグリーンの広々とした海原はミリでなくても心奪われるものがあるな、と車を走らせながら一騎は思った。


 一騎と零の入院騒ぎも落ち着き、組織の動きも確認できないことからマンションに戻った3人は、日常の生活を取り戻していた。
 そして、二人は新しい一歩を踏み出すための準備を始めていた。

 ミリが海が好きだといったことを受けて、一騎は久太郎に海に近い物件を探してくれるように頼み、一方で飲食店を開店するために必要な書類などについて調べたりと忙しくしていた。

 零は、忙しい一騎に代わって、できるだけミリの保育園の送り迎えや家事をやるようにしていた。
 そんなある日、久太郎からよさそうな居ぬきのダイナーの物件があったと連絡があり、3人で見に来ることにしたのだ。

 久太郎の話では、海が目の前にある割に有名な観光地というわけではなく、古くからの住人も多いので治安もいい地域だとのことだった。