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君に優しい世界を贈ろう

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ルンバー海賊団の一味になると決意したその夜、俺は船長室に呼ばれた。
扉を開けたその先には、俺を勧誘した張本人の船長とノッポのブルックとかいうのと、後知らない人が3人いた。
船長は座っていた椅子をギコギコと前後に揺らし、まぁ入れよ と入室を促した。
黒い髪を束ねた男が大きな椅子を持ってきて、座れと言ってくれたが彼は床に座ったので少し気が引けた。
自分から呼んだくせに誰も口を開こうとしない。
それどころか何処か暗い表情で皆視線を合わせようとしない。

もしかして自分には入団して欲しくないのだろうか そんな不安が頭を過る。
是非ウチに来い と満面の笑顔で誘ってくれた時は船長とブルックだけしかいなかったし、
音楽が好きならいい とは言われたが、流石に楽器も持った事の無い俺を入れることを船長は皆に反対されたのだろうか。


長い沈黙と不安に耐え切れず口を開きかけようとした時、
「あの・・・」
「お前さ」
会ったときとは打って変った重々しい声色で船長が俺を呼んだ。

「お前さ ・・その・コントラバスがいいって言ってたよな?」
管弦楽器がやりたくて一番大きいのはコントラバスだ と聞いていたからそれがいいと言った。
確かにそう言った。
俺みたいな図体のでかい奴がバイオリンは小さすぎて弾けないと思ったから。
「ああ」
「今でもその気持ちに変わりはないか?」



初めて音楽を聴いた時、目の前がキラキラと輝いていて、こんな素晴らしい世界があるのかと目が一気に覚めたような感触だった。
音符も楽譜も何にも知らないけれど、聞いてるだけで心があったかくなる音楽を自分でも弾けるようにしたい。
それで、今度は皆もあったかい気持ちにできたら、なんと素晴らしい事か。
その気持ちに嘘はない。
俺は自信を持って言える “俺は音楽がやりたい”のだと。
「ない!」


キッパリ言い放ったはずなのに皆の表情は芳しくない。

「・・どうします? 船長」
「こうまで言ってるんだから無理にとは 酷過ぎるんじゃないですか?」
「でもよぉ・・」
「ブラッド 本人がやりたいっていってるんだから 無理強いはよくない」
立ったままのブルックが船長を覗きこんで、眼鏡が足を組み直して肩を竦めて、黒髪は困った顔で、その隣の男は表情を変えず斜め下に座る彼をたしなめた。




そんなに俺が入るのは嫌なのか。
そういえば迷惑も顧みずここまで来てしまったから 今皆が困ってしまっているんだ。
何処に行っても受け入れてもらえなかったけれど、ココならと期待した自分が馬鹿だった。
少し夢を見ていただけなんだ きっと。
優しい人に囲まれて、好きな音楽を誰にも邪魔されず そんな甘い夢を。

やっぱり叶わないのかと目頭が熱くなって涙がこぼれそうになった。
出ていけと言われるぐらいなら自分から行くと言ったほうが迷惑にならないだろう と入団の取り消しをお願いしようと、俯いていた俺の頭上でヒソヒソと言葉のキャッチボールが繰り広げられていたのにフと気が付いた。

彼等は小声で喋っていた為、所々しか聞き取れなかった。
「・・・とり・・ず・・聞くだ・・聞いてみ・ら」
「そん・こ・・ってイヤ・って言・・たら・・・」
「その・きは・・ときで・・」
「気まず・・ろ?! しか・こん・・大人数で言っ・・厭々・も承諾させてるみ・・で罪悪感が・・」
「一人じゃ心細・って言・・の船長・しょっ?!」
「ああもう、男なんだからビシッと一発お願いしますよっ!!」
堪忍袋のキレた黒髪の男に背中を押された船長の顔が俺のすぐ目の前にまで近づいた。
その顔は困惑で、視線が泳いでいた。


嗚呼、この船長は優しいから言いづらいんだなと俺から言いだそうとした時、両肩をガシッと掴まれた。
「なぁっ ヴィオラに興味ねーかっ?!!!」
緊張で上擦った船長の声が頭に響いた。


ヴィオラ? 興味も何もヴィオラって一体何だ? 楽器か?


何にも答えない俺に勘違いしたのか そーかやっぱそうだよな と額を抑えている。
「・・いや やっぱ今の忘れてくれ」
悪ぃ玉砕した・・ 船長は申し訳なさそうに後ろに振り返って手を合わせて仲間に謝った。


「当たって砕けただけです 船長が悪いんじゃない」
「船長はやるだけやった 気にしないでください」
「それだけ熱意を向けられるコントラバスは幸せですって ねぇ船長?」
「コントラバスが一人増えるのはいいことだと思う 元々少ないし」
「お前等 すまねぇ頼りにならねぇ船長で・・・(泣」
ドヨ~~~ンとした空気の中反省会が開催されていた 俺だけを取り残して。


居心地悪くて俺はとりあえず尋ねてみた。
「・・あの ヴィオラって一体・・?」
そう言った瞬間全員の視線が一挙に俺に集まり、その顔は希望に満ちたように輝いていた。
いや 獲物を狙った鷹のようだったかも・・・・


「いや~ごめんごめん ヴィオラのこと知らなかったんだねぇ。」
「俺等がしっかりばっちり教えてやるよ 素ん晴らしいーヴィオラの魅力を!!」
「これであなたもヴィオラ雑学マスターかも?!」
ニヤニヤとインチキ臭い商人みたいに手をにぎにぎした男達にあっという間に囲まれてしまった。


「えっとですねーヴィオラとは・・・バイオリンとチェロわかります?」
「・・チェロは知らない。」


「チェロとはですね・・・よっとっ これが貴方の希望しているコントラバスですね。 一番大きくてボディは約1.1mで約10㎏。 最低音楽器と言われて、渋くて深い音がでます。」

「で、これの次に大きいのがチェロな。 コイツはヨハンってやつのチェロで、75~76㎝でだいたい3.4㎏。」

「これが俺の愛器のバイオリン。 一番有名で知られてて小さい楽器。 色々あるけど標準って言われてるのは35.5㎝で0.56㎏ぐらいかな」

「件のヴィオラってのはこのバイオリンとチェロの間に位置する楽器のことです。」
わかりますか という問いに頷く。

「音域はcからa3まであって、四弦の音は下からc、g、d1、a1。 だからバイオリンより5度低い楽器ということになるんです。」
・・・・・・いや わからん(汗


「今あげた4つの楽器はバイオリン属という部類に分類されます。 バイオリンとヴィオラは肩に乗せて、チェロとコントラバスは床に置いて演奏します。」
それには頷いた。

「バイオリンの音階はgからg4、チェロはCからc3、コントラバスは・・」
「おいアルド 初心者にそれはわからんって!!」
まったくチンプンカンプンで助け船を出してくれた黒髪に心の中で感謝した。

「つまりバイオリンがこれだけの幅で・・チェロがこれだけで・・・コントラバスがこう」
こんどは紙に描いて、音域とかいうのの幅を説明してくれた。
うん これならなんとか理解できる。

「で、大事なのはここからなっ。」
「現在のヴィオラってのは小型と大型っていうのがあって、今ほとんどの物が小型だ。」
大きさはだいたいこのくらいな と手で大きさを示してくれた。

「バイオリンとそう変わらねぇだろ?」
確かにほんの少ししか大きくはない。


「音も音量も音色もバイオリンに似てるんだ でも重量感ってのがない。特にC線とG線に。」
作品名:君に優しい世界を贈ろう 作家名:堕椿