きざし
その後、少し歩いたところで、マサキはタカハルと別れた。
帰り道、歩道橋の上を渡り、歩道橋の上から景色を見ていた、派手な雰囲気の少女の後ろを通り過ぎようとした時だった。
「……あなたがマサキね。」
不意に呼び止められて、マサキは振り返った。
少女はこちらに向き直った。
カールされた薄い青の髪に、ジャケット、濃いピンクのバケットハットと同じ濃いピンクのスカートに紫のタイツ、黒いブーツと強気な雰囲気の少女だ。
「あんたは誰だ…?」
「アタシはエレジー。元ダイマオーの娘よ。」
「ダイマオーの娘…」
「詳しくはセツナやミライに聞いてちょうだい。…マサキがジャシンを倒してから、確かに世界は平和になったわ。…でも、これで終わりじゃないの」
「終わりじゃ、ない…?」
マサキは、ジャシンを倒してから、まだ行っていなかった場所に行ったり、デビダスを埋めるためにデビルの合体やまだ仲魔になっていなかったデビルに交渉しに行ったりといった生活をしていた。しかし、エレジーの言っていることはそれとは違うことのようだ。
「デビルチルドレンのセツナ、ミライ、マサキ、そして、エンゼルチルドレンのナガヒサ、タカハル」
「…俺たちがどうしたんだ?」
マサキは、タカハルの他にもエンゼルチルドレンがいたんだ、とこの時初めて知った。
エレジーは続ける。
「…予感があるの。
…デビチルは、これで全員じゃない…
…近いうちに、何かが起こるわ。」
「新しいデビチルが、現れるってことか…?」
「…ダイマオーの娘としての勘よ。マサキが携わるかはわからないけれど。
…せいぜい気をつけることね。」
そう言うと、エレジーは
「じゃーね」と言いながらマサキの横をすり抜けていった。
(…不思議な雰囲気のやつだったなぁ…)
と、呆然としていた時、
聞こえていたエレジーの靴音が急に聞こえなくなって、マサキはなんとなく振り返った。
(…いない…)
タカジョー・ゼットみたいに急に消えて、やっぱり只者じゃないんだろうな、とマサキは思った。
数日後…
マサキは学校から帰ろうと、外へ出た時だった。
天気予報は晴れなのに、空は黄緑色と灰色を混ぜたような不気味な色になっている。
そして、雪がちらついていた。
「……なんだ、これ!?」
セツナは、自宅の中を移動していた時に、偶然窓から、雪が降っているのに気がついた。
ふと空を見ると色がおかしくなっており、異常気象だと気がつく。
ナガヒサがさらわれた日のことを思い出していた。
偶然近くにあった冷蔵庫に、ダァン!と拳をぶつけた。
「…チクショウ!!」
ミライは、マンションの屋上からこの空の様子を眺めていた。デビチルになった日も、学校の屋上から空の変化に気がついていた。
「…空が……」
タカジョー・ゼットは、人気のいないビルの屋上で、フェンスにもたれながらこの空の様子を眺めていた。
暗さを帯びた赤い瞳が、微妙に光っていた。
「…空が禍々しい色になってきた」
くるっと向きを変え、フェンスに軽く寄りかかる。怪しくニヤリと笑った。
「…楽しみだね、セッちゃん。」
そしてその後、東京に臨時ニュースが流れる事になる—