怨嗟ノ嘆_
#4 異変
数ヶ月前から
落ち込んでいる日が多くなっていた_
1年生の学年末テストで
最悪の成績を取り
注意していても頻繁に忘れもの
美術部でよく練習するデッサンの技術も
最近は上達せず
両親は働き詰めで
顔を合わせる機会がほとんど無い
学校でも
仲良く話せる友達はほとんど居ない
道を歩けば小石につまずいて転ぶ
先生に叱られ
クラスメイトから冷たい視線を浴びせられ…
もう学校に行きたくない
もう誰かに叱られたくない
もう誰かに冷たい目で見られたくない
もう誰かに笑われたくない
…そんな心境でも親には中々言い出せず
感情を押し殺して学校に通い続けた
嫌なことも続けていれば
いつかは報われる
そう信じていた
だけど
運は俺に味方してはくれなかった
後輩の女子に
棘のある言葉で揶揄われた
棘のある言葉で
泣かされた
美術室を
唯一の居場所を
侵略された
あいつのニヤニヤした目つきが
小馬鹿にするような声が
脳裏に焼き付いて寝られない
2日間、ずっと寝ずに過ごすはめになった
朝になっても疲れが取れず
フラフラしていた
そして
この日から
俺の身体に、『ある異変』が
起こり始める
それに気がついたのは
朝
学校への道を歩いていた時
「セーンーパイっ!!」
突然、俺の真後ろから
声が聞こえてきた。
聞き覚えのある、
あの女子の声だった。
もちろん、俺はびっくりして
後ろを振り向く。
しかし、
そこには誰もいない…
おかしい…
あいつの声が聞こえたはずなのに…
まあいいか
そう思って、再び歩き始める。
だが、歩き始めた直後に
「ちーっす センパイ!!」
今度はあの声が前から聞こえた。
同じように辺りを見回す、
やはり誰もいない。
やっぱりおかしい……
こんなこと、今までなかったのに…
まさか…
幻聴…?
2日間一睡もしなかったからなのか
俺の耳がおかしくなっていたんだろう。
この後も
居ないにも関わらずあの女子の声が
四方八方から聞こえ続けたのだった…
幻聴は、学校で授業を受けている間も
治まることはなく…
幻聴に驚いてしまうせいで、
クラスメイトたちからは
また冷たい目で見られてしまっていた。
先生にも運悪く見つかってしまい
小馬鹿にされてしまった。
その場から逃げ出したくなるほどに
教室は居心地が悪かった
授業の内容など、
全く頭に入らなかった
キーンコーンカーンコーン
チャイムと共に、
そんな授業がようやく終わりを告げる_
俺は誰よりも早くに教室を後にした
今日の放課後
本当は部活動がある日なのだが、
早く家に帰って寝たいと思った俺は
部活を休んで家に帰ることにした。
フラフラする体に鞭を打ち
俺は学校の廊下を歩く…
その間にも
聞こえるはずのない、あの女子の声が
幻聴が
ずっと聞こえていた
放課後…
昨日も一昨日も、あの女子とは
この時間帯に出くわしてきた
『2度あることは、3度ある』
今日も出くわすかもしれない…
今日も揶揄からかわれるかもしれない…
身体の異変を目の当たりにした俺は思う
本当に不安だ
もし、次会ってしまったら
俺は
どうなってしまうんだろうか_