黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 29
「ロビン、あなたはデュラハンと戦ったばかりじゃない。いくら灯台と同じエレメンタルの人がいないからって、無理することはないわ」
「無理なんかしてませんよ。デュラハンとの戦いは楽勝でしたし、灯しに行くだけなら問題ありませんよ」
ロビンはニッ、と笑った。
「けど、そうなるともう一緒に行く人がいなくなるわよ? あたしは戦える力が無いし、そもそもエナジーは不得意だし」
ヒナは言った。
「私がお供しましょう」
そう言ったのはイリスであった。
「イリスが? イリスもデュラハンと戦ってすぐじゃない」
「私にも『テレポート』する能力があります。それにデュラハンとの戦いは完勝で力が有り余っているんです。ロビンと共に飛んでいきますよ」
思いもよらず、ロビンは再びイリスと行くことになった。
「なんやぁ、またオレは留守番かいな」
アズールが口を尖らせた。
「アズール殿、主の居るべき場所を守るのも立派な騎士の務めですぞ」
「オレは騎士やのうて水竜……いうてもしゃーないか……」
「灯台が全て灯れば、錬金術が復活し、ガイアフォールは止まる。最後の大仕事だ」
ロビンは言った。
「みんなの留守はあたし達が守るわ。まあ、今さら何かあるとは思えないけど」
ヒナが言った。
「ありがとうございます、ヒナさん」
ロビンが礼を言うと、仲間達を見やった。
「行こう、それぞれの灯台へ!」
仲間達は皆それぞれに応じた。
そして、ロビン達は『テレポート』で四つの灯台に向かっていくのだった。
※※※
話は僅かに遡る。
ロビンらとの戦いにおいて、両腕を失うという重傷を負った大悪魔デュラハンは、二度命を繋いで、ガイアロックから落ち延びていた。
しもべらを全員失い、頼りの綱だった魔龍オロチも再び封印され、デュラハンには最早、復活の道は残されていないように思われた。
残った力で、当て所無く西へと進んでいくデュラハンは最後の復活の道を模索した。その結果が錬金術であった。
永遠の命に、全てを支配する力を得られるという、まさに神になれる錬金術を手に入れる事、これだけがデュラハンが三度命を拾う方法であった。
そこで、デュラハンが目指していたのは、ウェイアードの中央部、霊峰アルファ山の頂上であった。
しかし、錬金術は聖なるものであり、デュラハンのような禍々しい存在にとっては、得ることが難しいもののように思われた。
そんな懸念がありながらも、もうデュラハンに残された復活の道は錬金術しかなかった。
やがてデュラハンは、アルファ山の山頂にたどり着いた。
ーー我を破ったと思い込んだ奴らならば、きっと灯台を灯しに行くはず。錬金術の復活は間も無くだ。そう、ここで張っていれば……ーー
「おやおや、首だけでなく両腕もないデュラハン様ではないですか」
デュラハンの背後から、芝居がかった声がした。
「その声は、まさか……!?」
その声は、デュラハンに聞き覚えのある声であった。
デュラハンが声のした方を向くと同時に、氷の刃がデュラハンの心臓を貫いていた。
「がっ……! あ、アレ……!?」
デュラハンは言いきれない内に事切れた。
「分身の借りは返させてもらいましたよ」
デュラハンを殺害した者は、氷の刃を放り投げた。
「さんざん私の邪魔をしていただいて感謝の念で一杯ですよ」
不意に現れ、デュラハンを殺した者は、男か女かはっきりしない姿をしており、声までもどちらか判断しかねるものをしていた。
そんな、はっきりしない者は、死神に食われ霧散していくデュラハンを見て不敵な笑みを浮かべていた。
「さて、錬金術……」
謎の者は、空を見上げた。
「ロビンらなら必ず錬金術を復活させるはず。邪魔者は消えました。ここで待つとしましょう、いつまでも!」
謎の者は一人笑うのだった。
作品名:黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 29 作家名:綾田宗