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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 29

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第九十六章 大悪魔との決戦


 静かに佇む岩山、ガイアロック。
 岩窟の前に、エナジーの光の粒子が出現し、人型を成していった。
 人型はやがてはっきりしたものになり、それぞれロビン、イリス、シン、ヒナ、そしてイワンが現れた。
「これがガイアロックか……思い出すな、皆の力を合わせてオロチを封印した日を」
 ロビンは懐かしさを感じていた。
「感傷に浸っている場合じゃないぜ、ロビン。岩窟の先から奴の気配を感じるだろ? オレらの当たったデュラハンより更に強くなったデュラハンのな……!」
 シンは言った。
シンは、天眼を通してデュラハンの力を推し測った。シンの天眼をもってすると、融合は成ってしまった後のようだった。
「ふっ、デュラハンめ、オロチというドラゴンと融合するとは、愚かな。オレは竜殺しの力を得たんだ。弱点を増やしただけじゃないか」
 ロビンは、オロチの浅はかさを嘲笑った。
「それがそうでもないぞロビン。相手は魔龍という、神様として崇められる龍だ。奴が決して死なないのは分かっているだろう? その辺りが神性を持っていると言えるだろう? いくらお前がドラゴンスレイヤーになったとは言っても油断は禁物だ」
「そうだな、確かにオロチの再生能力は凄まじいものだったな。おごらずに行こう」
 ロビンは言った。
 シンは、イワンに向いた。
「イワン、ここまで運んでくれてありがとう。後は打ち合わせ通りに行くぜ」
 イワンの役目は、ロビンたちを『テレポート』で運ぶことであった。
 運んだ後は今一度船へと戻り、ハモと力を合わせて、闘霊のエナジーによってここの様子を皆で見られるようにする事だった。
「分かりました。どうか皆さんご武運を!」
 イワンは、『テレポート』を発動し、船へと戻って行った。
「よし、それじゃあ姉貴、ロビンにイリス。オレ達も作戦開始といくぞ!」
 シンの立てた作戦はこうだった。
 ロビンとイリスにデュラハンの動きを封じつつ、オロチをひっぺがすように戦い、その間に太陽の巫女の儀式を行い、その後スサの力によってオロチを再度封印するというものだった。
 作戦の確認をすると、ロビン達はそれぞれ動き出すのだった。
    ※※※
 ロビンとイリスは、暗闇の岩窟を進んでいた。
 イリスの力で周囲を照らしながら、二人は歩みを進めていた。
「……真っ暗だな。洞窟を歩いてるんだから当然だが……」
 ロビンは言った。
「魔龍オロチは光が、いえ、太陽が苦手でしたね。だからデュラハンも洞窟の光を一切遮断しているのでしょう」
「魔龍オロチか……あの時は皆の力を合わせて戦ったのに、まるで通用しなかったな……」
 ロビンは、あの時の戦いを思い出していた。物理的な攻撃も、エナジーによる攻撃も効果が全くなかった。
 ドラゴンスレイヤーとなった今、ドラゴンなんぞ最早恐れるものではなくなった。
 しかし、今やいにしえの大悪魔が融合しており、デュラハンの持つ永遠の命の源、魔脈がオロチにも適応するようになっているはずである。
 デュラハンの再生能力は果てが分からなかった。
「ロビン、あれを」
 ロビンが物思いに耽っていると、いつの間にやら、岩窟の最奥までたどり着いていた。
 岩窟の部屋になっている場所から灯りがもれていた。松明に火が灯されているようだった。
「ようやく着いたか。オロチとデュラハン両方の気配がする」
「行きましょう、ロビン」
「そうだな、ここから一歩たりとも逃げ出させない!」
 二人は岩窟の最奥の部屋に駆け込んだ。
「デュラハン! お前の命運もここまで……」
 ロビンは叫んだ。しかし、その後の声が続かなかった。
 ロビンらの前にいたのは、すっかり姿を変えてしまったデュラハンだった。
「よくぞここまでたどり着いた。まずは褒めてやろう」
 今まではどこに口があるのか、分からないところから声を発していたデュラハンであったが、今はオロチの首から発しているのが分かった。
「魔龍オロチと完全に融合を果たしたようですね、デュラハン?」
 イリスは言った。
 融合を果たしたデュラハンは、悪魔というよりも、爪を持ち、大きな翼を背中に生やし、そして牙を覗かせるドラゴンと化していた。
「はっ!」
 ロビンは気持ちを込め、ドラゴンスレイヤーの姿になった。
「マヌケだな、デュラハン?」
「何……?」
「オレは竜殺しの闘霊だ。お前はその殺しの対象のドラゴンになった。殺してくれと言わんばかりだ」
 ロビンは挑発的に言う。
「ふん、貴様がドラゴンスレイヤーであろうと無かろうと、そう上手くいくかな? こちらは既に永遠の命を手に入れた! 死のない相手との戦いがどれほど無意味か、味わうがいい!」
 デュラハンは攻撃に出た。
 デュラハンは龍の爪を振るった。
「馬鹿めが!」
 ロビンは、デュラハンの爪攻撃を素手でいなし、ソルブレードを抜き放って隙だらけの腕を一閃し、弾き飛ばした。
「ガアアア!」
「どうだ、戦いにすらならないだろう?」
 デュラハンは苦痛の咆哮を上げたが、咆哮は笑いに変わった。
「フフフフ……!」
「勝てんと分かって頭がおかしくなったか?」
「待ってください、ロビン。何だか様子がおかしいですよ」
 イリスは忠告した。
 ロビンに斬り飛ばされ、どす黒いデュラハンの血が流れる深手からなんと、腕が生えて再生したのである。
「見たか! これがオロチの再生能力を得た我、デュラハン・オロチの力よ!」
 一瞬、厄介な力を持ってしまったデュラハンだと思ったロビンであったが、すぐに考えを変えた。
「確かに貴様の能力は厄介だ。一見するとな。しかし、その能力はオレの前では無意味だ!」
 ロビンは、再び一瞬でデュラハンの懐に入り、ソルブレードを振るった。
 デュラハンはかわしきることができず、再び腕を飛ばされた。
「愚かな、何度やっても無駄だ!」
 デュラハンは腕を再生した。
「だったら二本いっぺんに飛ばしてやるよ!」
 ロビンはソルブレードを振るい、デュラハンの両腕を弾き飛ばした。
 デュラハンは、歯噛みをしながら両腕を再生した。
 ロビンは確信した。
 オロチ由来の再生能力と言えど、デュラハンにはダメージが蓄積するようだった。
「デュラハン、いくら貴様でも痛みは感じるようだな。ダメージを与え続ければさすがの貴様も動けなくなるだろう?」
 オロチは腕を再生し終え、ロビンに牙を向いた。
「調子に乗るなよ、小僧が! 融合した我の力、見せてくれようぞ!」
 デュラハンは、手を合わせて集中し、最も充実した瞬間、解き放った。
「ジンヘルストーム・ウィズドラゴンブレス!」
 デュラハンは、当たれば相手の力を失わせる波動に、超高熱のオロチのブレスを合わせた一撃を放った。
「懲りないな、デュラハン!」
 ジンヘルストームと言う技を一度受け止めた事のあるロビンは、全く慌てた様子を見せなかった
 ロビンは、迫り来る呪詛と炎を受け止めるべく、エナジーを込めた右手をかざした。
 ロビンの右手とデュラハンの衝撃波がぶつかった。
「…………ん?」
 デュラハンの衝撃波は、ロビンの手を避けるように割れたが、ロビンは異変を感じた。
 ロビンは、衝撃波を防ぐ手を引き、ソルブレードを立てて防御した。