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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 29

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 やがて全てが終息すると、ロビンは異変感じた腕を見た。
「これは……」
 ロビンのグローブが僅かに焦げていた。
「フハハ! 驚いているようだな」
「……どうやら、貴様の黒魔術は防げても、オロチの攻撃は無理なようだな」
 デュラハンの策は、自らの黒魔術とオロチの力の合わせ技を行う事であった。
 ロビンの自動的な防御能力の範囲は魔術やエナジーのようであった。
「勝負を急がねばジリ貧だな……よし、イリス!」
「はい!」
「神のエナジーだ! デュラハンに重傷を与えるんだ!」
「承知しました!」
 イリスは、ロビンに何か策があるのだろうと思い、言われた通りにすることにした。
『アルカン・エクス・フレア!』
 イリスは、両手で虹色に輝く炎を放った。
 炎はデュラハンに向かって走った。
 イリスの放った神のエナジーは、聖なる力を持ち、悪の権化であるデュラハンに効果抜群であった。
「ガアアア!」
 デュラハンは声を上げるしかなかった。
「よし、この流れに……!」
 神のエナジーに苦しむデュラハンに、ロビンは追撃に移った。
『スパイア・ストーン!』
 ロビンは、巨大な岩をいくつも作り出し、デュラハンの頭上へ降りかからせた。
 デュラハンは、完全に生き埋めになった。パキパキと石が転がる音のする中、デュラハンに動く気配はなかった。
 不死身となったデュラハンが死ぬはずがなく、このままロビン達が勝ったということはあり得ない。
 考え込むロビンの思考を破るように、デュラハンは、生き埋めとなった岩の隙間からドゴッ、と音を立てて腕を伸ばし、岩から抜け出した。
 岩から再び姿を現したデュラハンの肉体は、多少の土汚れがあったものの、傷は完全に回復していた。
「けっ、下手な芝居しながら回復しやがったか」
 デュラハンは岩の下で回復していた。
「いや、オレが甘かったか。ただのエナジーで貴様を殺せるはずがないか」
 なら、とロビンは構えた。
「今度は回復の隙を与えないぜ?」
 ロビンは詠唱する。
『スパイア・ケイク!』
 ロビンは、大きな岩を出現させた。
「砕くっ!」
 続けざまにロビンは、岩に向かって数え切れない斬撃を放った。
 大きな一枚岩だったものは、小岩ほどの大きさになり、浮遊していた。
「これに耐えきれるか!?」
 ロビンは、エナジーを纏わせたソルブレードを一振に振るった。すると、浮遊していた小岩が弾丸のごとくデュラハンに襲いかかった。
 かわせないと判断したデュラハンは、防御を固めた。
 ドラゴンの鱗があるとはいえ、ロビンの攻撃は非常に速く、そして威力もあり、デュラハンは傷ついてきた。
「この程度……!」
「バカが、回復の隙を与えないって言っただろ!?」
 ロビンは、更なるエナジーを発動した。
『グランド・ガイア!』
 地面が輝いた。そこから大地のエネルギーが噴き上がり、地面の石をエネルギーに巻き込みながらデュラハンに迫った。
「こんなもの……!」
 デュラハンは、両手をクロスして大地のエネルギーを止めた。しかし、そのような防御では防ぎきる事ができるはずがなかった。
 大地のエネルギーに押し負けたデュラハンは、エネルギーに触れた場所から溶かされていった。やがてドラゴンの鱗も溶かされ、デュラハンは全身を溶かされた。
「いい様だな、デュラハン!」
「ぐっ、おお……!」
 デュラハンの再生は始まっていた。しかし、かなりの重傷を負ったせいで、再生の速度はすっかり遅くなっていた。
「イリス! 追撃を頼む!」
 ロビンは、このまま一気呵成に攻め立て、デュラハンを更に弱めようとした。
「お任せを!」
 イリスは、神のエナジーを発動した。
『アルカン・エクス・ソニック!』
 イリスの放ったエナジーは、デュラハンにとって弱点である風のエレメンタルのものであった。
 巨大な真空の刃がデュラハンを切り裂いた。
 デュラハンは、最早声を出すこともできなくなっていた。
 それでも再生は続いていた。
 全身を襲う痛みは不死身となった体にも走り、死にたくても死ねない、地獄よりも辛い責め苦に、デュラハンは喘いでいた。
「ふん……」
 ロビンは、つかつかとデュラハンへと歩み寄った。
「デュラハン、哀れだな。オロチと融合してその程度だとは……」
 ロビンにとって、デュラハンは想定外の弱さであった。このような雑魚に、命を奪われたことが腹立たしくあった。
「デュラハン、楽に消えられると思うなよ? 貴様にはもっともっと苦しみを与えてやらねばな!」
 言うとロビンは、デュラハンを突き刺した。
「はははは!」
 ロビンは、笑い声を上げながら、デュラハンを滅多刺しにした。
「まだまだだ!」
「お止めなさい、ロビン!」
 イリスが止めに入った。
「イリス、何故止める? こいつは一度オレを殺したんだ。これでもまだ足りないくらいだぜ」
「デュラハンを必要以上に傷つけては危険です。窮鼠猫を噛む。追い込まれた者は何をするか分かりません」
 デュラハンに隠し球があるようには思えなかったが、イリスの言葉はいい得て妙であった。
「そう……だな。危うく破壊のオレに戻るところだった」
 ロビンは、落ち着きを取り戻した。
「しかし、どうやったら融合が解けるんだ? 死にはしないし、ただ攻撃してるだけじゃだめだ。一体どうすれば……?」
「私に考えがあります」
 イリスは言った。
「本当か、どうするんだ!?」
「魔龍オロチの唯一の弱点が太陽の光だというのは覚えていますね?」
 オロチの祭壇に光を届ける鏡が、このオロチが封印されていた部屋に設置してあった。
「ああ、あの時はガイアロックの外から頂上を目指したからな。頂上では太陽の巫女のヒナさんが儀式をして、曇ってた空を晴れた空にして太陽の光をここに届けたんだったな」
 ロビンは全て覚えていた。
「恐らく外の組が、太陽の巫女の儀式をしようとしている事でしょう。それまでに融合を解くのです。この私の力で」
「イリスの、力……?」
「私は、ソルに導かれし虹の女神。太陽神ソルの力を最も受けた存在です。太陽の真似事ができるのです」
「それってイリスが太陽になれると言うことなのか!?」
 ロビンは驚き訊ねた。
「本物とは光が段違いで私のほうが弱いでしょうが、太陽を弱点とする者には効果があるでしょう。まあ、百聞は一見に如かず。やってみせましょう……」
 言うとイリスは両手を組み、ぶつぶつと呪文を唱え始めた。
 呪文を唱えたその瞬間、イリスに後光が照り始めた。
 後光は、松明の灯りだけの暗い祭壇の間を、朝日に照らされるように明るくした。
 更に後光は、暖かさも兼ね備え、辺りを暖めていった。
「……ふう、これが私の特別な力です」
 イリスは、呪文を唱え終えると、一息着いた。
「すごい……暖かさすらも感じる。太陽そのものだ!」
「私にできるのは朝日程度の太陽光を発するだけ。オロチにダメージは与えられません」
 与えられませんが、とイリスは続けた。
「太陽を苦手とするオロチが、デュラハンから離れていく事でしょう」
 それは融合を解くことを意味していた。
「後はシン達の出番です。私達はしばし待つことにしましょう」