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ジュリアン
ジュリアン
novelistID. 70649
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幸運の女神は、不幸を纏ってやってくる

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 それからいくつかの依頼や出会いを重ね、一通りの仕事を終えてずっと出向いていた東のバーンハルト公国から戻ってきたのは数日前の事。しばしの休息と、数か月ぶりの交易都市の安穏とした空気に包まれながら港沿いを歩いていたのがつい先ほどの事だった。 

 港の方をのんびり散歩しながら、マクレディとフェステは開拓局へ向かおうとしていた。暫くアステルリーズでの依頼をうけていなかったが、依頼は毎日否応なく飛び込んでくる。フェステが喜ぶようなお宝探しの依頼はあるかどうかわからないが。
 先ほどの一幕、というか下僕コールの嵐を受けてやや疲れ切った表情で歩いていたマクレディだったが、ふと目に飛び込んだものがあった。
 アステルリーズの港は、係船岸と桟橋がいくつかに分かれており、遠方からの交易船も数隻係留できる大きな港となっている。しかしながら積み荷を保管する倉庫らしきものは見当たらない。船着き場の近くには海鮮専門の市場らしきものが見受けるため、海産物以外はすぐに交易都市の流通に飲まれていくのだろう。
 そんな桟橋へ降りる階段の手前に、掲示板が立ててある。これはアステルリーズ内いたるところに置かれているそれで、催し物や市場のセールの販促等のチラシやポスターが掲示されているのが常であった。
 その掲示板に目を止めたマクレディだったが、遠巻きだったため何が書いてあるかよく見えない。……しかし、何か気になる文字が見えた。……遺跡、……見つけて……
 なんだろう。興味をそそられた彼は足を桟橋の方へと向けた。てっきり後ろをついてきていると思っていたフェステは後方を見やると、マクレディが桟橋の方へ歩いていくため、慌てて走り駆け寄り、
「こりゃ! 自分から離れて歩くな!」
 一言言ってやるものの、彼は掲示板に貼られているものに集中していた。何が書いてあるのか、と彼女も同じものを覗こうとするも、小柄な自分の身長が邪魔をしてうまく見えないらしく、顔をしかめている。
「……下僕、何かお主の気を引くようなものがあったのかの?」
 不機嫌そうに尋ねると、マクレディは一通り読み終わったのか、こくりと頷いて、
「……何かの依頼みたいだ。遺跡に行ってある素材を探してほしい、って書いてある。けどこんなところに依頼が貼られてるってよくあることなのか?」
 フェステに尋ね返すが、彼女はまたしても肩を竦めた。そして、首をわずかに数回横に振る。
「やめた方がよい。開拓局を通してない依頼なんぞ、受けていいもんじゃないぞ、下僕」
 ジト目で掲示板を見ながら、彼女は再び口を開く。
「ワシらの仕事は開拓局を通して依頼が来るのは知ってるじゃろう? 開拓局は冒険者を回す仲介業者のような役割を果たすのと同時に、冒険者の育成、指導も積極的に行っておる。だから下僕はジェイクの紹介もあるが、冒険者の試験を受け、冒険者になることができた。そういう育成、保護、依頼の幇助等を行っているという事は開拓局が以来の精査や冒険者ランクに応じた依頼を冒険者に渡すことで、低ランクの冒険者が高レベルモンスターと鉢合わせなどならないように管理もしているんじゃ。
 その開拓局へ依頼を通さずに依頼を行うという事は、基本的にあまりいいことではない。……全部が全部ではないがの。ましてこんな掲示板みたいな誰でも見れる場所に敢えて依頼を貼り付けるなんて行為、開拓局の依頼の精査もされておらんじゃろうし、最悪、命の危険にかかわる依頼かもしれんのじゃぞ。見なかった事にしておいた方がよかろう」
 言い終わると、腕を組んでうんうんと目をつぶりながら勝手に頷いて見せるフェステ。
 ……見なかった事にする? けど我々がこれを見なかった事にしたとして、他の第三者の冒険者が見ないとは限らない。どのみちここに掲示したままで立ち去るのはよくないにしても……でもこの依頼内容は恐らく……
「なぁ……本当にこのままにしておいた方がいいと思うか? 俺はそうは思わないけどな……それにほら、依頼内容は遺跡で希少価値の高い素材を見つけて来いって事だし、報酬も結構いいと思うんだが?」
 気を引くように言ってみると、フェステの角がぴくり、と僅かながらに動いた。……そのままじっと待っていると、ちら、と片目を開けてマクレディを見ると、
「……報酬は幾らと書いておる?」
「10万ルーノ……って書いてあるな。本当にこの値段払うのか知らんけど」
 さらにぴくっ、と角を震わせるフェステ。口をへの字に曲げて何か心の中で葛藤しているようだった。報酬が高い、遺跡でお宝見つかるかもしれない、けど……といった具合に。
 数分間黙ったのち、「……きっとその10万ルーノを全額冒険者に渡したかったから、こんな掲示板に依頼を貼り付けたんじゃろう、そうじゃ、間違いない」と、一人何か勝手に納得した様子だった。マクレディがぽかんとしていると、フェステは再びあのニタリとした不敵な笑みを浮かべ、
「開拓局はな、何もタダで依頼者から依頼を受けてるんじゃない。彼らは冒険者を仲介する事で報酬を得ているのじゃ。つまり、依頼者が5万の報酬を依頼につけて依頼したとして、そのうちの事務手数料やその他マージンを開拓局が貰い、残りを我々、冒険者が貰うという手引きになっておるのじゃ。その中間マージンを払いたくなくて直接冒険者に10万ルーノを与えたかったからそんなところに依頼を書き込んだに違いない、ワシはそうにらんだぞ」
 ずいぶんとご都合主義なこじつけをしてきたな、とマクレディは内心呆れていた。──が、フェステの金や宝に関しての意識の高さだけは感心していた。どちらにせよ、依頼は受けていいとフェステは言っていると判断したため、マクレディは掲示板に貼られた紙をぴっ、と画鋲から外した。
 依頼には、どこそこの遺跡にある希少な素材を得てほしい、得た場合は自分が貼った掲示板に素材を得た旨を書いた紙を掲示する事、その時報酬を渡す手はずを教える──とだけ書かれてあった。
 マクレディは依頼書を丁寧に折り畳むと腰に括られているポーチに入れて、フェステと共に向かっていた開拓局と逆方向、アステルリーズの街門広場に向かって歩き始めた───……