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zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 ジパング編

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箇所は完全には完治せずであった。それ程、酷くなっていたのである。
 
「サンキュー、アルっ!」
 
「えへへー、アル、ありがとう!」
 
「……に、してもやっぱこいつ、エライ強いな……、やっぱ、
今までが今までだったからな……、ちょっと舐めてたな……」
 
「死ぬ気で行くしかないみたいだね……!」
 
「……ヒィィーーっ!!」
 
 
……その頃、弥生はアイシャを庇いながらジャミル達が戻って来るのを
モンスターが来ない安全な場所で、只管じっと堪えて待っていた……。
 
「大丈夫、大丈夫よ……、恐くなんかないわ、すぐにジャミルさん達が
来てくれる……」
 
「う、……ううん……」
 
「アイシャちゃん……?」
 
「弥生さん……?こ、此処どこお!?」
 
卑弥呼が掛けた魔術の力が切れたのか、漸くアイシャが目を覚ました……。
 
「アイシャちゃん、良かった……、意識が戻ったのね!?」
 
弥生に抱擁され、アイシャは何が何だか分からず……、弥生に
一体何故自分はこんな所にいるのか尋ねてみる……。
 
「そっか、私達、生贄の為に捕まって此処に連れて来られたの……、
全然記憶がないわ……」
 
「私は昨夜の事は何となく覚えているのだけれど……、何となく
眠れなくて……、そうしたら黒い影が私達の部屋まで迫って来たの、
私、アイシャちゃんを起こそうとしたのだけれど……、其処から先の
記憶が無くて、気が付いたら此処にいて、ジャミルさん達が助けに
来てくれたの……、この場所はモンスターの気配がないから
安全な場所みたいなの……」
 
「はっ!……そ、そうだわ、ジャミル達は!?」
 
アイシャが訪ねると、弥生は一呼吸置き、ジャミル達の件を話した。
 
「こ、こうしちゃいられないわ!私もジャミル達に加勢しに
行かなくっちゃ!」
 
「……アイシャちゃん、危ないわ!無理しちゃ駄目よ!」
 
「でも、私がやっぱりいかないと!皆、本当に本当に無茶しちゃうのよ、
だからフォローに行かないと……!」
 
「アイシャちゃん……」
 
普段暴走するアンタも何を言っとんじゃい状態であるが。
弥生は静かに溜息をつくともう一度アイシャをハグする。
 
「分ったわ、でも、アイシャちゃん、本当に気を付けてね……」
 
「うん、……弥生さん、暫く一人になっちゃうけど……、絶対に又
すぐにジャミル達と迎えに来るからね!少しの間、我慢しててね……」
 
「ええ、大丈夫よ、……信じて待ってるわ……」
 
アイシャは弥生に送り出され、ジャミル達と合流する為、洞窟の中を
一人、走り出した。

「……くっそ~っ!どうなってんだよ、あいつ、攻撃しても
全然びくともしねえ!」
 
ジャミル達3人はおろちに攻撃を仕掛けるものの、おろちに全く
ダメージを与えられない非常事態に苦戦していた。
 
「もしかしたら、八つの頭の内、どれかが急所である本体なのかも……」
 
「うーん……、難しいな……、不用意に近づけば火炎が来るし……」
 
ジャミルとアルベルトが困って考えていると……。
 
「あー、ジャミルっ!うしろっ!」
 
ダウドがジャミルに向かって思い切り叫んだ。
 
「え……、う、うわあっ!?」
 
おろちの首の一本が突然伸びジャミルを捕えて身体に巻き付き
拘束してしまう。
 
「……何すんだよっ!放せよ!……くうっ!」
 
もがけばもがく程、体がきつく締め付けられ、ジャミルは身動きが取れなくなる。
 
「うわー!ジャミルをはなせえーっ!!」
 
「ダウド、……バカっ!来るなーっ!」
 
「あ、……わああーーっ!!」
 
珍しくダウドが怒りおろちを叩くが一撃で遠くに吹っ飛ばされた。
 
「ジャミル待ってて!今助けるから……!やっぱり僕も多少は
攻撃魔法でサポートしないと駄目だっ!」
 
しかし、おろちは残りの数本の頭で呪文を詠唱しようとした
アルベルトを攻撃する。
 
「……うわっ!」
 
アルベルトも壁に叩き付けられ、呪文の詠唱を妨害されてしまう事態に……。
 
「アルーっ!無茶すんなっ、逃げろーっ!」
 
「……く、くそっ……」
 
「放せっつってんだよ!あ……、あれ?」
 
ジャミルはおろちの首に絞めつけられたまま逆様で宙づりになる。
 
「やめろ~っ!頭に血が上るーっ!!」
 
逆様になったまま喚くジャミル。
 
「コノサイ……、オトコデモカマワヌ……、ワラワノイノチヲ
タモツタメ……」
 
「……何いっ!まさか俺を食う気かーっ!?」
 
「ジャ、ジャミル……、う、くうっ……」
 
アルベルトが何とか立ち上がろうとするがさっき食らった衝撃で
脳震盪を起こしていた。ダウドはダウドで気絶したまま動かない。
……おろちの牙がゆっくりと……、ジャミルに迫る……。
 
(……万事休す……か……、はあっ……)
 
ジャミルが諦め掛けた、雅にその時……。
 
 
「ヒャダルコっ!!」
 
 
「……グギャアアアーーッ!!」
 
「え……、何???あ、あ、あ、……ああ~っ!!」
 
何が起こったのか理解出来ないままジャミルは頭から地面に落下する。
……漸く、おろちの首の拘束から解放されたのではあったが……。
 
「いって~っ!な……、なんなんだ……」
 
「えへへ!ただいま~!」
 
「……アイシャっ!!」
 
ジャミルとアルベルトが同時に叫ぶ。復活したアイシャが漸く
この場に駆けつけ、皆の危機を救いに来てくれたのであった。
 
「ほら、しっかりしなさい!がんばれ男の子!」
 
「アイシャお前……、もががががっ!」
 
アイシャがジャミルの口に……、強引に無理矢理薬草を押し込んだ。
 
「……ぐえ~っ!にっげ~っ!……おめえなあーーっ!!」
 
「我慢するのっ!はい、これ、アルの分の薬草よ!」
 
「あ、ありがとう……」
 
アイシャはアルベルトには普通に薬草を手渡すのであった。
 
「ダウドは何処……?」
 
「あそこでのびてる……、大分頑張ってくれてたんだけど……」
 
アルベルトが苦笑いし、倒れているダウドの姿を見つけたアイシャは
とてとてとダウドに近寄って行く。
 
「もうっ!しょうがないなあ、ほらダウド、起きて!」
 
「んー?あれ???アイシャ?なんでぇー?」
 
目の前にいるアイシャを見て、事の起こりが判らずちんぷん
かんぷんなダウド。
 
「とにかく傷に薬草塗って!はいっ!応急処置程度にしかならないけど……」
 
「あ、ありがとーっ!でも、意識戻ったんだね、無事で良かったよお~……」
 
「ふふ、此方こそ有難う!私、回復魔法が使えないからいつも予備に
持ち歩いてるの」
 
「……まあ、とにかく助かったぜ、……俺には強引だったけど、
ありがとな、アイシャ!」
 
「うふふっ」
 
ジャミルに言われてアイシャが嬉しそうに笑った。
 
「あっ、ねえ……、おろちが……」
 
「えっ!?」
 
アイシャに言われ、見るとおろちが8つの頭を振り回し、苦しそうに
のた打ち回っている……。
 
「……どうなってんだ……」
 
「もしかして、さっきアイシャが攻撃してくれた所が本体の
急所なのかも……」
 
「そうか、あいつの弱点は目なんだな……」